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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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弾ける筋肉、汗の滴る浜

「――しかし、なぜ貴方の主はこんなにも盗賊の居場所を特定して下さるのでしょうか」

「特定、というか、徘徊癖があってそれで見つけてしまうのが、面倒というか」

「は、徘徊癖……もしかして、その、旦那様というのは……?」

「まぁ、その、お察し頂けると」


 存在しない貴族の旦那様の設定がどんどん増えていく……まぁ、アレだよね。一度嘘つくと雪だるま式にドンドンと増えていくからね、嘘。まぁ良いんだよ別に。どうせバレっこない嘘なんですからね。


「分かりました。此方も王子に必ずやお渡しいたします」

「ありがとうございます。主も、これで安心して寝られるというモノです……それでは」


 良し、無事に渡ったか……となれば、あとやる事は、張るだけか。あの浜辺で。想定が正しければ、相当な見物が見れるはず。そしてそれが……ループ突破をする、最大のカギになるはずだ。よーし! やるとするか!


「――お待たせしました。さて、参りましょうか?」

「おう。こっからは浜での張り込み開始だ! 行くか! 気分は刑事!」


 あんパンは残念ながらこの世界に存在せず……




「……りんごおいしい」

「先生。思考停止はおやめください。幾ら私だって介護しきれませんから。せめてマトモな思考を取り戻してください」

「だって、張り続けてもうどれくらいの時間が経ったって話よ。疲れたわ」

「情けない。まだ二日目ですよ」

「人間二日間も同じ場所に居続けるって割と苦行よ?」

「ずっとって訳でもないというのに……」


 張り込みしようとなって、知らなかったんだけど……大分、こう、張り込みって暇なのね。会話してたら何とか過ごせると思ったけど、いやぁ、話題のタネが割と早めに尽きましてございますよ?


「とはいえ、もうそろそろだと思うんだけども」

「確か、ループ最終日よりは前ですしね……っと」

「どうした?」

「……耳を澄ませて……来ましたよ」


 ――!


「……斥候が本当にこの辺りで見かけたってよ。ホント、何処の放蕩貴族が見つけてるんだかねぇ。面を拝んでみたいよ」

「でもまぁ、そのお陰で飯のタネが増えたから良いんじゃねえかな」

「馬鹿者、集中しろ。賊風情とは言え、油断すれば此方が痛手を受けるぞ」

「「へーい……」」


 ガチャガチャ音がすると思えば。コレは、団体様のお付きで。多いなオイ、ちょっとしたヤクザのカチコミやんこんなん。いや、全身装甲でカチコむ任侠とかもう悪夢だと思うけども。


「異世界ヤクザ……」

「次の題材それで行きましょうか?」

「いや、案外悪くないとは思うけれども……まぁ、今はそれは良いだろうよ。さぁ、激突するぜ。戦いを見届けてやろうじゃないか」

「――それに、見えました。ひときわ大きな……王子です」


 なにっ。どこだどこだって探すまでも無く最後尾。メッチャ目立つ。暗闇で尚目立つあのシルエットは紛れも無く奴って奴だ。


「王子、いかがいたしましょうか」

「砂浜迄出てから散開。手分けして探し、見つけたら交戦はせず、近くの兵士、及び上官と合流しここまでおびき寄せる。俺が見つければ、その場で殲滅する」

「承知しました」


 自分が見つけた場合の対処が漢らし過ぎてめっちゃシンプル。他が見つけたらの対応が細やかなのに、自分が見つけたらもう殲滅しかない。自分の力量に自信しか持ってないのが余りにも武将。


「というか兵士も止めなさいよ……」

「しかし、声を潜めてるとはいえ、見つからない物ですね。案外」

「ふふふ、この時代、木の上からの奇襲は定番だ。何時だって、上って言うのは死角なんだよ……と思う」


 じゃないかなぁ。そうだと信じたい。という事で、我々は浜近くの木の上から、ちょっとした夜の観測会やっております。お菓子はありません。というかこんな時代、お菓子なんてそうそうあるもんじゃないし。


「……っと、聞こえてきましたよ。このぶっとび音」

「始まったな。人魚姫の殺戮ショー。王子サイドも気づいたか。反応が露骨ですぜ」

「あ、お空に人がまた一人……星になりましたね」


 おぉっと、何という。飛んでいった方にはご冥福をお祈りするとして。っと、そんな事言ってる場合じゃねぇや、ホラもう、音を聞いた途端に王子がとんでもない勢いでダッシュし始めてるぞ。猫まっしぐらやん。


「おっ、王子ッ!? お待ちください! 一人では危のうございます!」

「貴様等は此処に居ろ、これから先にはついてこれん」


 扱いがどこぞの餃子かな? まぁ、着いてこれないどころか、人魚姫様の撃破スコアを稼ぐだけに終わるだろうし。


「――やはり、貴様か」

「――へぇ? 知った顔が居るじゃない。狙いは、この賊共か。まぁでも残念。此奴らはもう私の獲物として、処理させてもらったよ」

「いや、もうそ奴らは気にせん。既に今の目標は貴様だ」


 さぁ、王子が人魚姫に向けて構えを取る! 堂々と、その丸太の様な腕を真っ直ぐに、掌を門にするかの様に! それに対して人魚姫、片足を上げて一本立ち! 両腕はボクシングの如く、独特のファインテングスタイルで答えたぁ!


「逃がさぬぞ……今ここで、決着をつける」

「私も、アンタ等の締め付けが強くなる前にもう一度、アンタと殴り合っておきたかったんだ。やるってんなら、容赦はしない!」


 両者の間の空気が歪む! 陸の王と海の姫、両者の頂点としての覇気が、いよいよここに居たり最高潮に、お互いを威圧している!


「うーん、これは間違いなく見せ場ですねぇ」

「そうだなぁただ心配なのはアレだけ高まっちまっては殴り合ったらここら辺が弾け飛んだりしかねない事なんだよなぁ」


 ちょっと、想像をはるかに超えて盛り上がっちゃったね。逃げた方が良いですか、コレってもしかして。いやぁ……


アンデルセン先生ごめんなさい。


これが現代のラブロマンス。

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