品質改善は基本
「城に届ける? どらどら、ちょっくら見せて……」
……良し、困惑した表情でもないし、明らかに驚いてる表情だし、第一関門は突破と考えて良いか。って、前もこんな事考えていた様な。まぁ、ここはやる事は変わらんし。文言は更に洗礼させたけども。
「まさか、いやしかし……コレは誰から?」
「私たちの旦那様、主、とお呼びした方が宜しいでしょうか。要するに、雇い主様でございますはい」
「そう、ですか。であれば分かりました。こちら、お預かりいたします」
というか、二回やる位にはここは必須なんだよ。先ず王子に盗賊討伐っていう大義名分を与える為に。そうじゃないと動いてくれないかもしれないし。仕方ない。良いんだよもうここは何度騙したって話、今更罪悪感抱く方が失礼なレベルだで騙してるんだよ。
「――これで、先ず第一段階は終わりですかね」
「後は時期を待って、王子をあの浜におびき寄せるだけだ。そしてここらへんで喋って怪しまれたら元も子もない。さっさとずらかるとしよう」
「分かりました」
……あの城の中の王子は、ループ内で此方に気付いた素振りを見せなかった。だから今回も大丈夫だとは思うんだけども。
「二度目も通じるかは、正直分からんな……」
「おいっ……追いかけろよっ! そんなに、そんなになってまでっ! お前の事を追いかけて来たってのに……!」
「馬鹿ッ、男の方だってよぉ、病で死にかけで……あの娘っ子の事をアレだけ思ってるんだぞ、それこそ、血反吐吐いて追いかけたいだろうけど……けどなぁ!」
「だからって、こんな、こんな別れしなきゃいけないなんて」
「爺さん婆さんも、ここまでずっと助けてくれたってのに。あんまりだぜ……」
ウーン相も変わらず受けは良し。しかし、だからと言って内容を改良してない訳ではない。ちょこちょこ言い回しを調節したり、強調する部分を変えてはいる。
「――ご清聴、ありがとうございました。『赤い靴』、前編。これにて終了でございますれば……後編は、また次回という事で」
「こりゃあ次回も来る以外はねぇか。あれ? そういや兵士さん達居ねぇなぁ」
「何時もよりめっちゃ早いからなぁ。というか、朝だぞ朝。弟さんが態々呼び込むしてくれなきゃ俺達だって来れてないよ」
そして……もう一つの違いは。少し、この話を早めに始めた事。まぁ、コレは資金稼ぎの為にやらない訳には行かないのだが、用事の為にも、これを後回しにする訳にもいかない。結局、満員御礼を狙える時間からは少し外れた時間になった。
「お待たせしました」
「ん。ファンへの対応お疲れさま」
「皆様、また来てくださるそうです。あの商人さんも」
おっ、優しい商人さんは間に合ったんだ……まぁ、今はあの人に用は無いけども。いや一応このループ突破したら紙を入手するお得意さんとして色々なんとか、してもらうかもしれないし。挨拶くらいはしておいてもバチ当たらんか。
「挨拶するのも俺じゃないけどなぁ……」
「何言ってらっしゃるんです?」
「いや、何でもない。商人さん、見てくれてよかったね、と思っただけ」
「自分の作品を見て貰えるのは、やはり嬉しいですか」
「……まぁね」
実はそんな理想の作者的な事考えてませんけども。めっちゃ俗な考えで発言しましたけども。まぁ、それは別に言う必要もないか。沈黙は金て奴ですよ。
「さて、お膳立ても整ったし――始めようかな」
「そうですね。早めに始めたので、まだ日も高いです。城に向かう程度であれば、何とか行って帰っても問題ないでしょう」
お城に第二の陳情ってな。ま、文章もしっかり練った。これで怪しまれたら最早事故だと思う事にしよう。うんうん。いやホント、脳味噌雑巾みたく使ってあらゆるものを絞り出したからな。
「これで上手くいって、ループ突破で、理想、かねぇ……」
というか、そうじゃないとちょっと辛いとかそう言うレベルじゃないから。頑張って色々と考えた文章も何もかも無駄になったとか、ちょっと、泣くから。本当に心が砕け散りそうになるから。
もうここら辺も歩きなれてしまったけど、ここに二回目、だったかな。訪れた時からずっと気になってる事がある。アレだけデカい門を人魚姫に破壊されて、割と時間かけずに直ってるんだよね。
「どうやって直したんだろう……」
「王子自ら木材を運んで直したのでは」
「あの、俺の憧れの英雄を勝手にガテン系にするのは止して欲しいんだけども。いや、似合わないと言えば……」
嘘になる、けども。あのしっかりとした体で、特大の木材を持って運ぶ。うわ、カッコいいかはともかくとして似合う。似合い過ぎる。畜生、頭がガテン系王子に汚染されていく……!
「と、取り敢えずそれは置いておこう」
「先生から話題を振ったのにですか?」
「ああ悪かったよ俺が悪うございました! これで良いんでしょう! 先ずは目的を果たそうじゃないか!」
ほら。もう目の前に門が見えてるから!
「そうですね……では先生、書状を此方に」
「思うんだけど、これって俺は完全な運搬係にされてないか?」
「いえ、運搬自体は私も出来ますし、寧ろ私としては保護対象に近いですよね。前にも言いましたけれども」
あ、そこから進化してないのか。もう屈辱通り越して無の極致に辿り着きそうになってしまいそうになっちゃうなぁ。って、文句言う前にもう行っちゃったし。しかたないまたぞろ待機かぁ……
「――すみません。こんにちは」
「おっ? アンタは……この前の書状の人じゃないか」
「えぇ、実はもう一通ほど、此方にお渡ししたいものが……」
アンデルセン先生ごめんなさい。
早め早めの行動も最適。




