傲慢なる創造主(爆笑)
「――今日もダメでしたね。全く果たし状を書く気配すらありませんでした」
「……」
あぁ、お布団が気持ちいい。布団じゃないけど、ベッドだけども……ふひっ、ひっひっひっひっひっひっひっ……
「もういやぁああああああああああああああ」
「先生、まだまだループは二十週目にも入ってませんけれども」
「もう二十週目だって言ってんだよ! そりゃあ俺だって結構かかるとは思って居たけれど限度ってもんがあるだろうが! 一周の間に幾つか案を試したってのに! 一向に掠る案すらないってんだ!」
正直これしかないと思った総当たり作戦! 正しく最終手段だと思って覚悟決めて挑んだらその最終手段としての効果が全く見えない! これじゃあやってる意味がないじゃあないか! きぇぇぇええええい!
「んごっ、ごごごごっ、みゅぎゅぃぃぃいいいいい!」
「奇声を上げて転げまわるのは止してください。見苦しいです」
「逆にどうして貴女は平気なの! 兵器なの!?」
「誰が心無いマシーンですか。私は別に、こうなる事くらい予想は出来ていたから、覚悟を決めていただけです。肝心の提案者の先生は全く覚悟が出来ていらっしゃらなかった模様ですけれど」
ぐぬぬぬ。
「だって、恋文のお話作戦から始まり、王子の趣味文通説流言飛語作戦、スクロールを落としちゃったお茶目さん作戦、真正面からド直球作戦、悉く! 全部! 駄目だったんだからよぅ!」
「本当に我々色々考えてましたねぇ……」
「呑気に言っとる場合かぁ!」
そろそろアイデアも底を尽くってんだ! いやゴメン嘘ついた。アイデアは幾らでもある。頑張ってひねり出したから! しかしそれが逆に俺の首を絞める! 遠慮せずぐぐぐっと! 酒かな!?
「アイデアが尽きないのが、ここで俺の首を絞める……」
「そんな事言っても仕方ないでしょうに。次のアイデアに行くしかないでしょう。必ずどれかが当たると信じて」
どれも当たらなかったらいよいよピンチだけどな! あークソ、今からでもさらに予備案を組んでおくべきか……もうなんか作家ではないな俺がやってんの。うーんここまで来ると普通に物語を書いていた方がマシなんじゃないかと……
「――いかんいかん、折角小説の中に居るんだぞ。何時もとは違う事をやってこそだろうが俺。この状況を楽しむ積りで行けマジで」
「急にどうなさって?」
「あ、いや。人間案外我が儘なもんだな、と」
いつもとは違う事をやっているというのに、結局、実際は何時もやってる事が一番安心できるし楽しめるって話……じゃないじゃないっ! 違う違う! ダメだ、あんまりにも報われない作業やってる所為で弱気が!
「くっ、結局社会人的な思考……チクショウ! 次だ次!」
「何を焦ってるんですか。気分転換が必要なら、またお話の一つでも書きます?」
「えっ? いいんですか?」
「おや、私から言われたというのに珍しく乗り気ですね。何時もなら怪訝な顔の一つでもしそうな物ですが」
……あっ、いや、これはそのっ
「……いや、やっぱいい。今はループ脱出の最中だし」
「いいえ、其方に集中しましょう。寧ろ、今は完全に手詰まりになってしまっているんですから。別の作業をしていた方がいいでしょう。先生は追い詰めればいいという訳でもありませんし」
う、うぅぅぅぅぅ。なんか、俺が弱ってるのを見抜かれるのが、凄い、恥ずかしいんだけども。
「ちょっとした気晴らしでどうしようもないのであれば、別の作業に手を付けるのも必要です。それこそ、王様を登場させるかで悩んでる時は、こんな感じだったではないですか先生」
「……そうだっけ」
「えぇ。悩みの内容は違いますけど……結局、王様という原作に登場しないけど、居ても全く不思議ではない、そんな扱いの難しいキャラクターを出すかどうか、最後まで相当に悩んでいらっしゃいました」
その王様を止めようと足掻こうとした結果がコレな訳だけどな! ホント、出したの失敗……っとは言えないんだよなぁ正直。彼が居てくれたからこその展開も一杯あるし。そう考えると
「……その先の展開を潰す、って事になるのか?」
「どうなされたんですか? そんな神妙な顔をされて。珍しい」
「そんな珍しいか?」
まぁ、いっつも浮かべてるのは神妙な顔じゃなくて疲れ切った顔か。それはそれでなんか悲しくはあるけども。まぁ、それはいいか。
「いや、そもそも根本的に、王様を妨害するのは果たして正しいのかな、と」
「……先生が言い出した事では?」
「いやそう言われるとぐうの音も出ないんだけども、でも、よく考えてみたら、あの王様の行動も、後の展開に繋がってる訳でさ。それをぶち壊しにするのは……どうなのかなって今更ながら思っちまってさ」
いや、マジでそれ言っちゃうのは提案者として一番良くない事だとは思うんだけども。そもそも俺提案のプランが致命的に間違っていた可能性。
「そこから変更するのであれば、もういままでやって来た総当たりが全て根本から無に還る事になりますけども」
「いや、それはそうなんだけどもさ……自分でも、王様というキャラクターがひとりでに動いて、悪い気分はしてなかったというのに、いざこういう時になってそのムーブを潰そうと動くって言うのは、今更ながら、マジで傲慢な創造主ムーブそのものだよなぁ、と」
そう考えてしまうと……なんだ……
「それは、嫌ですか?」
「いやって言うか、情けなくなったって言うか。いや、このタイミングで大分弱気になったから、そう言う考えも顔を出して来たというか」
「元からそう思って居た部分があったという事ですか?」
「意図的に無視してたのかもしれんよなぁ」
……いや、こんな事言ってても仕方ないな。
「ヨシッ! 弱音終わり! 次だ次、人魚姫に通じるようなアイデアも出さなきゃいけないしな! ループ脱出の為にも、根性据えて行かないと!」
「……」
「ん? どうしたの、黙りこんで」
「いいえ。なんでもありません。ただ、何時でも即断即決とはいかない物だな、と」
いや、何の話か分からんのだけども。
アンデルセン先生ごめんなさい。
ニ十週の様子をダイジェストにしようと思いましたけど、それだけで一話かけそうなのでバッサリカットしました。




