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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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足が錆びるという表現の源流が知りたい

 本家人魚姫は。魔法で得た不自由な足を持て余していた訳だが……彼女は違う。寧ろ、慣れぬはずの足という部位を最大限に生かした技で、大暴れするのが彼女で……そして。


「――他愛もない……こんなん相手にしてたら、私の足捌きも逆に錆びるってもんだよ」


 うーん、片足を上げて構えるその姿が余りにも似合ってカッコいい。なんつうか、あの人の周りだけ浮世絵調で渦巻いてる波が見えるのよな。でその巻き起こす大波で敵をズンバッシャランとなぎ倒しているんだろうか。


「んで? アンタ等は一体何してるんだい?」

「ぎくり」

「じゃないですよ。ほら、さっさと出なさい。隠れてないで」


 アンタだって隠れているだろうに。とはいえ、戦闘直後、これだけの迫力を撒き散らす人魚姫を相手に真正面から向き合うって言うのも……


「お久しぶりです。危ない所を助けて頂いて、感謝いたします」

「あん? あぁ、そこの腰抜けども、アンタ達を追いかけてたのかい?」

「はい。ここの満月が綺麗だったのを思い出して、つい見に行きたいなと思って此方に来たら……」


 まぁ一切絡まれちゃいませんが。今は皆気絶してるし、悪い事してたのは間違いないでしょうし、済まないがちょっと利用させてもらうぜ。ったく、俺も随分と悪くなっちまったもんだ。


「成程。私が通りかかったのは幸運だったって訳かい。まぁ知らない顔じゃないし、助けられて良かったよ……でも、こうやって何時でも助けられる訳でもない。夜に出歩くのは程々にしておくんだね」

「はい、ご忠告、痛み入ります……それにしても、盗賊は、王国の兵隊さんが抑えてくださっている、という話では無かったのでしょうか」


 ……あっ、俺を見るって事は、アレか。このままプラン実行って訳か。えっと、今回試すのは……確か。


「――えっと、やっぱり噂は本当だったんじゃないか?」

「王子様が国内で、何者かを追いかけている……という噂ですか?

「最近見回りの兵士が減っていって、それが原因じゃないかってよ」


 これだこれ。王子のあり得そうな行動を漏らす(捏造)する事で、人魚姫の注意を引く作戦。先ずはこれで様子を見る、だったっけか。うーん迂遠なれど、千里の道も一歩からって奴だ。


「へぇ……だからこんな奴がのさばってるって訳かい」

「噂が本当なら、だけど」

「はぁー、盗賊より優先する様な輩が居ると。随分と呑気な話だねぇ……」


 はい。完璧に嘘でございますけれど。王子様は、今も私の嘘情報に踊らされて盗賊狩りに精を出しておられます。しかしこれで盗賊が出てくるって事は……ヨシ! コレは運命だな!


「――滾るじゃないの。探してるんだろう? ははっ、こっちから向かうべきかな?」

「……今、何かおっしゃいましたか?」

「ん? いいや、なんでもないさ。気にしないでおくれ」


 聞こえてない様に見えるでしょう? 聞こえてるんだなぁコレが。なんだったら人魚姫の物凄い、こう、強敵の事を思って浮かべた凄いドスの利いた笑みもよく見えておりますが故。ふふ、都合の良い時に突発性難聴は無理なのよ、俺らには。


「アンタら、今日はもう帰るのかい? 見送りとか居る?」

「いえ大丈夫です。今日はこのまま帰らせていただきます。これ以上ああいった輩に絡まれるのは流石に勘弁願いたいので」

「いやいや、そう遠慮するんじゃない。万が一絡まれたら、アンタらじゃ太刀打ちできないだろうに。ただで送ってやるから。さっき、此奴らをぶちのめした腕は見たろう?」


 おおっと?


「私も、アンタ達の帰る方に用が有ってね……序って奴さ」

「それは……嬉しい申し出なのですが……(チラッ)」


 えっと? それは……あーうん。はいはい。受けちゃって大丈夫だと思う。という心の形よ、この頷きに乗せて、届け!


「――ご迷惑にはなりませんか?」

「全然。寧ろ運動したかった所なんだよ。向かってくる奴らを相手にね」

「あの、何か襲い掛かってくる前提は止して頂けるとありがたいんすけど……姉ちゃんも俺も、別に戦える訳ではないんで」

「安心しな。アンタらに戦わせたりはしない、見つけたら直ぐボコボコにしてやるさ」


 頼もしいお返事だことで。唯の脳筋発言にも聞こえるけど、この人だったら出来るってのが怖い。あまり強い言葉を叩くな、って発言される前に全員殲滅して『強いから言葉まで強くなるのよ、ゴメンね?』っていう人だから。実際そう言うシーンあった気がする。


「それはそれは……頼もしい事で」




「――頼もしかったんですけどね」

「マジで誰も襲ってこなかったな……あの、大丈夫ですか?」

「うん……大丈夫。あんまりにも肩透かし過ぎて、ちょっと、哀しくなってるだけだからさ。ったく、本当に足がさび付いちゃうよ」


 ここで盗賊とかが襲撃してきたら、こう、カッコ良く人魚姫様の活躍を見れたんでしょうけどもね。でも、そうはならなかったんですよ……


「え、えーと。あの、頼もしかったですよ。ホント」

「ああいや、大丈夫。そんな気にしてないから。アタシもこっちに用があるって言ったろう? ソッチが本命だからさ」


 うん。愛しの王子様に殴り込みかけに来たんですね。分かってますよお嬢さん。しかし王子の情報を一つ偽装しただけで、ここまで反応してくれるとは、デカい収穫だよ。情報は武器ですよ兄貴。因みに使いこなし方をしっているのは編集さんです。俺に非ず。


「まぁ、アンタ等も気を付けなよ。この辺、荒れるかもしれないからね」

「――あら、そうなのですか?」

「あぁ。間違いなく大荒れになるよ……それじゃあね」


 荒れるって言うか、貴女と王子がめっちゃ荒らしまわるんですね分かります。あの二人が殴り合うと、マジで周辺嵐が吹き荒れた感じになるからな。


「――見せ場は作れたと思うか?」

「いいえ。全然」

「だろうなぁ……ま、元からそのつもりだから仕方ない、か。まぁ、根気よくやってくしかないって事だ。精々付き合ってくれ」

「元からそのつもりですので、大丈夫ですよ」


 ループをする前提の事はやったけれども、沢山ループするっていうのを当然とする狂気の所業だ、今からやるのは……ま、のんびりやるしかないか?


アンデルセン先生ごめんなさい。


人魚姫が足技を使って相手を殲滅するという矛盾の極みみたいな光景。

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