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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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理由は後乗せサクサク

 ――やっぱり、昼間よりこう、神秘的な雰囲気を醸し出している気がする。今日が満月って言うのも、それに拍車をかけているのかもしれないけども。満月の魔力ってのは小説家も嫌という程……ああいや、それは今は関係ないか。


「しっかし、この浜にもう一度来ることになるとは……本当にやるのか?」

「どうせ追い詰められているんですから、命かけてやるだけの価値はありますよ先生。覚悟決めて参りましょう?」

「まぁ、それはそうなんだけども」


 王様に直接会うよりも、ひょっとしたら危ないかもしれないんだよ。人魚姫に直接アプローチかけるって、さ。




「人魚姫に恋文を……っ!?」

「そうです。彼女の手で書かせて、彼女の手で届けさせるのです。王子の元へ」

「いや、それは分かったけど理由が分からん! 何故そんな事をさせる!?」


 王様に人魚姫捜索をやめさせようって状況で、そんな超ド級のリスク背負いこむ理由って相当でございますれば。余程のリーズンが無ければバーンアウトよヘンシュサン。なんか似非外国人みたくなった。


「理由ですか……そこは先生に考えて貰おうかな、と」

「いや君は何を言ってらっしゃるのか本気で分からないんだけども」

「この状況、余程の事をしないと見せ場になんてなりません。だったら、小説の流れとかは兎も角として、吹っ飛んだ行動をとるべきかな、と。それで先生に上手い事理由付けして頂けたなら、それこそ正義です」

「理由付けが上手く行かなかったら?」

「別の方法を考えて、また理由付けを……」

「要するに適当言って当たれば上等の一番ダメなパターンじゃねぇか!」


 そ、そんなんでこの難所を見事突破できると思うなよ!? ……しかし、この状況で恋文を出す、か……メリットがあるとすれば。


「王国に追われる身となる寸前の人魚姫、淡い恋心の最初の萌芽は、恋文という名の果たし状になって現れて、一旦この地を離れる前の決戦へと……」

「よし、ちょうどいい理由が出来ましたね。このプランで行きましょう」

「い、いやっ! 待って、確かに理由は出来たけども! だけどなぁ!?」


 話が早すぎる。畜生、小説家としてついつい思考しちまった。しかも一瞬コレは悪くないんじゃないかと思ってしまった……い、いやいやこれで納得してしまっていいのか!?


「難易度が高すぎるだろうよこのプラン!」

「そうですか?」

「そうだよ!」


俺達がやるなら、そこまで難しくない、筈だけども。それを他人にやらせるってのは難易度倍くらい違いますよ編集さん。


「そもそも、人魚姫はまだ恋心を自覚し始める……その、ほんの黎明期だぞ今のタイミングは。それが、急に恋文ってのは! ハードル高すぎやしないか!?」

「何時も女々しい先生と違って、女性というのは一度腹が決まってしまえばとんでもない度胸を発揮する者です。それこそ、男性顔負けの積極性だって見せてきます。先生よりは女心を理解してる私の言葉、信頼できませんか?」

「そ、そうなんだ」

「そうです」


 ウーン編集さんに言われると頭ごなしに否定が出来ない。寧ろ凄い説得力すら出てくるから不思議。あれっ? 調教されてしまってる……? い、いやとはいえ、それが本当だとしても、結局の所他人に文を出させるって言うのがどれだけ大変かっていう話。


「友人とかに相談して、そのアドバイスで、っていうならまだしも……それに、直接干渉するのは良くなかったんじゃないのか」

「あくまでモブの発言で気が付いた、という方向にもっていきますよ」

「モブの発言でネームドを動かすのか……!」


 それこそ無茶じゃないかなぁ。しかも相手は人魚姫だぞ。自らの意思を貫く事にかけちゃこの物語の中でも最強クラスだぞ。そんな人を相手に俺達みたいな風来坊の言葉が何処まで通じるっていう話よ。薩摩節の誇りを見せればワンチャン。それは藩士。


「となると? 人魚姫の心を射抜くような口説き文句をオイラが考えなくちゃいけないとという事か? 童貞の俺に? 無茶では?」

「漢の権化のような王子をお相手に選ぶような人を相手に、先生の言葉では響きもしないと思いますけれど?」

「いや口説くってそっちっていうか、ストレートな意味ちゃうわ」

「冗談ですよ」


 アンタの冗談は冗談に聞こえない定期と……まぁ、いいや。


「今まででも最高難易度だなぁ……俺、文字は書いて来たけど、相手の心を直接動かす様な文句を言葉で伝えるのは専門外なんだよなぁ」

「頑張って女の子の心を弄んでいただいて」

「言い方があんまりじゃない? 俺がゴミ野郎みたいじゃない?」

「違うのですか?」

「えぇ!? 俺って今までゴミ野郎と思われてたの!? 衝撃の告白過ぎない!?」

「小説の腕は見事と思いますけど、生活能力に関しては……ね?」

「それを言われちゃあなんにも言い返せねぇわ。ゴミ野郎ですねオイラハイ」


 もうちょっと生活能力あげれば何とかなったのかなぁ……編集さんにゴミ野郎って呼ばれなくて済んだのかな……美人の凄い真っ直ぐな目でゴミ野郎って言われるの正直辛いのです。心が。後、若干興奮するのもあるのです。まごう事無きゴミ野郎なのです。


「唯のゴミ野郎と呼ばれないようにしっかり文言考えるか……」

「――とは言ったものの、私も今回は厳しいというのは理解しています。全力でサポートはするので頑張りましょう、先生」

「ほう編集さんがそこまで! ありがたいな」


 小説を書く、以外に関してはまぁ強いからなこの人。小説が書けないから編集やってるらしいけども。それだけの才能があるなら、俺みたいなフツーな作家に付かなくても色々働き口あったと思うけれども……まぁ、それはいい。


「女性を口説くのには慣れているので」

「いやアンタが慣れているのはちょっとおかしくないか? アレ? 百合の花にご興味がおありですか?」

「いえ一切ないですけど。というか口説くのは違う意味だと貴方自分でおっしゃっていたというのに何を素っ頓狂な事を言ってるんですか?」

「あっ、はいそうですね」


 しかし、何とか光明は見いだせた、かな。ちょっと無理やりな気がしないでも無いけれども……まぁ、それくらいしないと厳しいのかもしれんな、今回は。

アンデルセン先生ごめんなさい。


理由だって後乗せする時代ですよ。

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[一言] サブタイがダイナミック自演ズで草
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