熱血作家人生
「案外あっさりと行きましたね」
「まぁ、紹介もあったし、モノを渡すだけだからなぁ。渡すって言うか、潜ませるって方が正しいけれどもな……これで犯罪三件目だぜ俺ら」
――商人さんに頼んで、会わせて貰って……そして、何とか仕事は終わらせられた。いやぁ、後はちゃんと渡しをつけてくれるとありがたいが。
「とはいえ、王城に運び込まれた品に紛れ込ませるのが、一番王の目に触れる可能性が高いのですから、必要な措置だと思いますよ」
「その措置の責任は俺が負う事になるのかな」
「いえ、私と折半ですね。先生一人に背負わせたりはしませんよ」
「へっ……編集さん……っ!」
くっ、泣かせてくれるじゃあねぇか。アンタと俺、編集と作家は二人三脚だ。一緒に仕事を熟そうじゃ……いやちょっと待て、一瞬感動したけど、二人三脚だったら俺を削り取る様な仕事させるなよ。俺の心を少しは読み取ってくれ。
「どうだった?」
「はい。紙を安く仕入れられるところを無事教えて貰えました。商人さんのお陰です」
「そうか。良かった良かった。いやぁ、紙に関しては私も詳しくないからねぇ。アイツに連絡を取れてよかったよ。しかし、前回に続き、紹介するだけなんて、君達も欲がないねぇ。もっと高い商品が欲しいだとか、言っても良いんだよ?」
「そんな、ご迷惑になるような事は出来ませんよ」
する必要もないしねぇ。
「全く出来た娘さんだこと。もし私の所で買い物がしたくなったら、何時でも言いなさいな。値下げは出来ないけど、取り置きくらいはするよ」
「いえそんな……本当に大丈夫ですよ」
「まぁそう遠慮しないで、君はこれからも稼ぎそうだからね。人格的にも信頼できるし、私にも利のある提案だとも。だから迷惑などではないよ」
いや、アンタにとってはマジで迷惑になると思うから。止めとけ。其処の人、利用しようと思ったら何でもする人だから。変に弱みを見せちゃ……
「――いいえ、稼ぐと言っても不安定な身。私達を助けて頂いた人に、迷惑をかける可能性が少しでもあるのであれば、やはりそう簡単には頷けませんよ」
「お嬢さん……」
「ですがもし私達に情けをかけて頂けるのであれば……私達のお話に、偶に耳を傾けて頂ければ、それだけで幸いでございますので」
ええぇぇぇぇええええええ!? アンタ、アンタ、そんな殊勝な発言出来たの!? 俺に一切の容赦をせず、兵士から金を搾り取る為に全力で講演し、更には城に向けて偽の書状を……い、いや。そのアイデア元は俺だったか。
「そうか。君がそう言うのであれば、それ以上は言うのは無粋かな。分かった。この街に居る時は、出来るだけ君の語りを聞きに来るよ」
「そうしていただけると本当にありがたいです」
「約束するとも。それじゃあまた。あの話の続き、楽しみにしてるから」
あ、はい。それでは、さようなら……うん。良い話だったな~……じゃなくて! アンタ! そこのアンタだよ! なんかいい子ぶった表情で送り出した其処の女性! グラマーウーマン!
「あの、どうしたの。そんな急に」
「何がですか?」
「何がですかじゃないんだよ、アンタ、凄い勢いで猫被ってるやんけ。いや、猫被るのは何時もの事だよ。そう言う事じゃなくて……良いのか?」
「商人さんの提案に乗らなくて、ですか?」
「そうだよ。アンタだったら、普通に乗るかと思ってさ」
「――何言ってるんですか先生。私たちは帰る予定の人間なんですよ?」
……まぁ、確かにそうだけども。
「それとこれと、なんか関係あるのか?」
「帰る予定の私たちが、余計なコネだとか作っても仕方ないでしょうに。あくまで必要最低限、生き残るために必要な物だけを得て行くべきですよ」
「あー、まぁそう……なのか? そういえばそうか?」
確かに、立ち去るのであれば、不必要だけどもさ。
けど、にしたって一回位でも使えそうなら、ゲットしておく、位の勢いが良いんじゃないかって思うんだけども。
「はぁ……先生は理解していないようですが私達は犯罪者な訳です」
「いや言い方よ。間違っちゃいないし、正直バッチリ当たってるけれどもさ」
「誰かと関係して居ればしているだけ、私達はそこから存在を把握されたりしてしまうんですから、寧ろ余計な関係を作るのは悪手までありますよ」
「なるほど」
俺達にとっちゃリスクしかない、って事か。確かにそう考えると、俺が考え無しに見えてくるなぁ。ううむ、ここは素直に反省。
「しかし、そこまでよく考えてる事で」
「先生が考え無し過ぎるんですよ。私だってそこまで深く考えられる訳でもないです。明らかに危ないな、って事くらいは気が付けますけど……」
「いやいや、普通は思いつかないだろうよ。こうして、ここで……」
っと、いかんいかん。またここで生活する前提みたいな。いかんな、慣れて来ちゃってるからか。さっき編集さんに言われてたってのに。この辺りは、特に気を付けないといけないな。
「――これは、しっかり仕事をさせた方が宜しいでしょうかね」
「えっ?」
「向こうでやる仕事を忘れて此方に馴染むお積りなら、全力を賭して思い出させて差し上げるまでです。久しぶりに……三徹カンヅメ、いっときますか? 良いですよ? 先生の根性に喝が淹れられるなら、全力をもって相手をして差し上げます」
「あっ、いえ、その、別に、なんでしょう、そう言う話になんで……」
「大丈夫ですよ先生、とても辛かったですけど、耐え抜きましたよね?」
耐えきったからって、そもそもアンタが耐えさせたんでしょうが! というか逃げられなかったから、必死こいて耐えながら仕事したんだよ! 止めろ! 思い出させんなマジでお願いだから!
「何だったら帰りたくなくなって来たわお前の所為で!」
「そんな言い方はいけませんね。もしや、仕込みがたりなかったのでしょうか……?」
「あの、すいません。一応お聞きしますけど何の仕込みですか?」
「そうですね。根性とか。根性とか。根性とか」
「まさかの根性三原則!? どんな前時代的な思考なの!? 馬鹿なの!?」
鬼だ! こんなに現代人なのに! 鬼が居る!
アンデルセン先生ごめんなさい。
根性って別に悪いWordではないんですけどね




