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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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トラブルが押し寄せてくる

 『真・人魚姫~王国崩壊の日~』は、俺が執筆した小説作品である。

 『薄幸の姫君の闘争伝説』という良く分からんテーマを掲げ始まった本作だが、内容を詳しく言うとすれば……凡そ人魚姫の物語に相違はない。


「それは違うのでは?」

「いーや違いは無いね! 凡その流れを踏襲しつつ、熱血アレンジしただけだし!」


 ちゃんと王子を海で救う所から始まるからね! 

 最後は風の精霊になって終わる予定だし……原点に忠実だし。人魚姫のおばあさま(嘗て海帝と呼ばれた女)だって、隣国の姫君(暗殺術の使い手)だって、欠かさず出てるし。ほぼ原作だってんだよ。


「……というか! お前が『ここが本当に物語の世界だと思われる以上、その内容を確認するのは必要だ』とかいうから! 話してるのに! どうして速攻で話の腰を折る!」

「問題でも?」

「問題しかないわ!」


 俺だって混乱と感動でグチャグチャになってる頭で、なんとか冷静に状況を整理しようとしてんのに。お前にゃロマンというモノが存在しないのか!


「あらそうですか。それでお話の確認の続きですが」

「人の心ってご存知かアンタ!? それで『あ、わかりました続き話しましょうかねぇ』ってなるかバッカモン!」

「なりませんか」

「閉 店 ガ ラ ガ ラ じ ゃ い!!!」


 もういい無視だ無視! えぇっとさっきのシーンは確か……あぁ、思い出した。あの辺りは書いてて楽しかったから覚えてるわ。


「――姫がここに来たのは、確か自分が何もしていないのに、国を亡ぼす魔王的な何かとして王国の仇敵と認定されていた、その誤解を解く為だったはず」

「私、先生に正気ですかと言った覚えがあります」

「余計な事まで思い出させるな! あん時マジでショックだったんだぞ!」


 あったばかりでボコボコにされて、本当に作家って容赦ってものはされないんだなって嫌と言う程味わって挫折しそうになったわ!


「ったく……あれ待ってそうなると俺その身内判定を受けた事になるんだけど」

「成程。自分の書いた設定に首を絞められるとはなんとも物悲しいですね」

「おい誰を憐れんでやがるコラ。え? 一応先生って呼んである相手をそんな憐れむ目で見る貴方、普通さ。ちょっと、尊敬っていうのをさ……」


 い、いやそんな事気にしてる場合じゃない。そうだよ、凄いカッコいいなぁー感動したーとか言ってる場合じゃない。自分が一番良く分かってる、そんな観光気分でいられるような甘い世界じゃないっていうのは……!


「兎も角、俺の記憶が正しいなら、この後は人魚姫が城の門を蹴破って直談判、からのドッタンバッタン殴り合いだったはず……周りに居たら巻き込まれるかもしれん」

「離れるが吉、ということでしょうか」


 そうそう。で、キッチリ離れてから……話をしようじゃねぇか。主に俺の扱いについてしっっっっっかりとね! ね! ね!


 ――ドッグォォォォォオオオオオオオオン……


「っと、もう始まりやがったか。蹴りの一発でする音じゃないなチクショウ! まぁでも俺が結構拘った音だからその通りの音が聞こえてなんか気持ちいいなぁ!」

「……先生」

「っし、どうするんだ?」

「いえ、そうでは無くて。さっき迄外に居ましたよね私達」

「まぁ、そうだけどもそれが……?」


 ……あれっ?


「良いか! そこで大人しくしていろよ!」

「急いで首を刎ねねば……人魚姫の関係者だ、七度殺しても殺したりないという事は無いだろうよ。その後は火炙りか」

「いや先ずは、此方に向かってくる奴の対処をせねば……」


 ……あれっ? おかしいな、なんか見覚えのある方々、この光景……具体的にはさっき脱出して来た牢屋の様な……あれっ!?


「……外に、出たよね俺ら」

「取り敢えず鍵を開けて出ませんか」

「いやどうしてそんな冷静なの??????? 頭スパコンか何かと取り換えてたりするんですのねぇちょっと??????」


 思わずお嬢様言葉に……ってめっちゃ普通に開けるじゃん……こっちに何の遠慮も無く何の容赦もなく開けるじゃん……怖い……


「えっと、あの、また、鍵、有ったの?」

「えぇ、拾いました」

「あのその時点でおかしいと思わない? ねぇ? 疑問って言葉知ってる?」

「今は無駄になりかねない言葉なので急遽忘れました」

「便利だねぇええええええ君の頭脳って」




 ……さて。


「状況を整理しよう」

「さっき同じように人間が寸分も違わない勢いで吹っ飛んでいきましたね」

「……どうなってるんだマジで。頭が可笑しくなりそうなんだが。どうしてあの感動の場面を繰り返させた。浸らせろ馬鹿野郎」

「なんだかんだ言って楽しんでますね」

「うるせぇ」


 最近の小説ってね、お決まりの流れだから説明省くことあるじゃん。アレ実際はクッソ不親切だってのがこうやって身を持って分かる。そんな小説じゃあるまいし、超速理解なんて無理無理カタツムリ。


「異世界は、まぁ、良かったよ。人魚姫さんとってもカッコ良かったし、さ。なんで繰り返した? 余計だよそれは」

「分かりません。私としても、この展開は属性盛り過ぎだとは思うのですが」

「編集としての感想は要らんのだ理由を聞いているんだよ俺はぁ!」

「分からない事を考えても無駄だと思われますよ先生。現実で起きている以上、理由を考える前に先ずはどう対処するかを考えましょう」


 こっ……この編集……こんな状況でも慌てること一つしない! なんでそんな冷静に居られるんですかね! もうこっちは現実逃避して青い空見つめて寝っ転がってたいってのに!


「経験上、この後はどんな展開になるでしょうか、先生」

「……ループ物ってのは、大抵は突破する鍵が必要なもんだ。放っておいて突破出来るもんじゃないから……何かしないといけない。その何かはさっぱり分かりませんけども! なんでループさせられてんのかその思惑も全く見えてこない不親切設計だけど……!」


 そもそも、あの城から脱出して、ここに来て、話してた時間だって大体十分ちょっとだぞ。何かしなけりゃならんのかなー的なヒントも見つからんよ。


「じゃあもう一回程繰り返しますか?」

「いやそんなさらりと繰り返すとかいうんじゃないよ……繰り返すって決まった訳じゃないだろうに」

「逆に繰り返さないと思います?」

「……」


 非常に不本意だが、もうここまで来たら繰り返す方が自然だと思うよ。この状況に無理矢理に、常識を当てはめて考える方が馬鹿の所業だけども!


「……もう一回、もう一回繰り返してから考えると……」

「あら、もう檻の中ですね。二度目です」

「慣れさせてくれ頼むから! 状況に! 問答無用で! 巻き込むな! もうちょっと冷静に考えさせる時間をください!」


 あぁもう分かったよバーカ! 無理くりにでも順応してやろうじゃあないか! こうなればもう一回牢破りからだ! 何度だってやってやろうじゃないの!


アンデルセン先生ごめんなさい。


主人公がツッコミ役ってやっぱり書きやすい……

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