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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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貴方にお手紙届けます

――アイデアはスルっと出た。しかしながら。結局出したアイデアの所為で俺は苦しめられている訳なのである。人はこうして、己の生み出した業に焼かれ、生きねばならぬのであろうか……――とある小説作家。異世界にて。


「結局アイデア出しからは逃れられないのね……」

「どこか遠くを見ていらっしゃいますけど、まあどうでもいい事を考えていらっしゃるようですね。そんな事をしている暇があるなら、分かりますね?」

「分かりましてございますよ。仕事すればいいんでしょうが……」

「私といたしましては、前回よりは気が楽です。ずっと覚えて居なくても良いので、口頭で聞いたもので、使えそうな情報以外は忘れてしまえますし」


 俺は前回と変わらずダメージを受けておりますが故。


「しかし、話の流れをで生まれた後悔を掘り返すのも大変だけど、適当に思いついた泡沫みたいな設定を掘り返すのは、別の意味で辛いものがある」

「前者が首を真綿で絞められながら走るマラソン、後者は見つかるかどうかも分からない宝をピッケルのみで掘り起こす発掘作業、でしょうか」

「言い得て妙かもしれない……」


 マジであったかどうか、今思いついてしまった設定なのか、分からない状態でやってるからね。それを必死に記憶探り、どっちか判断するのにも時間がかかるっていう。さても地獄だなこりゃあ。


「――まぁ、接触しないようにするやり方は思いつきましたが、問題はまだありますから早めにノルマを終えて頂いて、其方も考えませんと」

「どうやってこれを実行するかだよなぁ……」


 というか、実行できれば間違いなく成功するという自信はあるけど、其処に至るまでの過程が面倒すぎる。ワンチャン直接会うよりも難しいまである気がする。


「因みに人魚姫にバレた場合は?」

「大人しく隣国まで逃げる。だって親御さんの名前勝手に使って、王様を恫喝する訳なんだから此方には非しかない」

「もしかしたらの時の逃走手段の確保も必要、と」


 要するに何をするかと言えば……分かりやすく言えば詐欺です。他人の名前を使った。




 王子には王が居て、人魚姫にも女王が居る。で、当然ながら海で生まれた人魚姫が初めから恐れられている訳も無く。恐れられていたのは、嘗て地上で暴れ回った女王の方なのである。


「――その名前を使う」

「その名前で、娘に手を出せばどうなるか、的な書状を送ろうかと」

「成程。他人の名前を借りながら国のトップを恐喝すると。やり方がエゲツナイです。流石創造主、人の心を弄ぶのが実にお上手です」

「俺は凶悪な知能的犯罪者か何かだと思われてる……?」


 あまりの暴言に俺の涙もちょちょぎれよ。というかそんな事が出来るほど賢くは無いのよ俺。精々子供から上手い事お菓子巻き上げる位よ。それはそれでゴミカスやな俺。


「確かに先生、以前駄菓子屋の前で子供達相手に……」

「何も考えるな! 感じるんだ!」


 実際やった事がある事をアピールせんで宜しい。しかも別に、巻き上げた訳じゃなくて違うんですよ……あの、欲しかった駄菓子があったから、別に、そこ迄でもない駄菓子を上手い事勧めて……交換して貰っただけで……


「アレだけの容赦の無さと、口先三寸の上手さを、子供に向けられるだけの素質がありましたし、黒幕適正も当然の様に……」

「あのースイマセンちょっとそろそろ心が砕け散りそうだから許して……」


 そ、それは兎も角!


「これなら接触せずとも、王様をちょっとビビらせられるかな、と」

「いける可能性は十分にありますよ」

「だろう!? にゃははは、我ながら天才染みてるなぁ、と思ってしまった訳よ!」

「――それで、その書状を一体何方から、どうやって王様の所まで届けるというのか。その辺りは思いついておられますか?」

「はっはっはっはっはっはっ……そんなのは当然ながら!」

「思いついている?」

「忘れておりました!」

「だろうと思いました」


 うん。結局その辺りはアイデア出ししなきゃいけないっていうね……はい。承知しております。あーっ! 結局なんで俺はこんなっ! 中途半端なっ!




 そして私達、只今詐欺の計画を立てている訳ですが……まぁ、問題は王様にどうやってお目通り、と言うかお手紙を届けるかよ。文通から始めようじゃないんだよ本当、高校生のお付き合いじゃないんだから。


「お手紙届けられるようなコネ、ないかなぁ……ないよなぁ……」

「ないですよそんな物。ここに来てまだ一か月と立っていないんですし。大体、王様にお手紙を届けて頂けるコネってなんですか。そんな限定的かつ凄まじく入手困難な」


 まぁ、要するに国王様への直訴状を届けて頂けるって話だからなぁ。誰とコネ作ればそんな大それた仕事が出来るような事になるのかって。王様とコネ作ればいける!? それはもうコネとは呼ばんのよ……


「しかしコネなんて今まで欲しがったことは無かったけど、いざ必要となると……」

「先生にはコネを作る才能ありませんからね」

「コネに頼るっていう発想が嫌い、というか、情けない事はしたくないというか」

「古い発想の人ですねぇ。今はどんなモノだって使ってナンボの時代だというのに」


 ふん、古くたっていいわい。俺はそうやって、一人でもしっかりとやっていけるような人間にあこがれてるんだよーだ。


「あー、ホントに王室と関わり合いのある人はいないのか」

「そんな人滅多にいないでしょう。あるとすれば、それこそ王様の近い人と直接やり取りのできる、御用商人……あっ」

「ん? どないした?」

「いえ、コネになるかどうかは分かりませんが、伝手が無い事もないかもしれないと」


 えっ!?


「あるの伝手!?」

「伝手、と申しますか。冷静に考えてみれば、お城に出向くような一般の方と言えば、商人さんぐらいしか居ません。そして、商人さんと言うのは情報に聡いモノだと相場が決まっています」

「ほんほん?」

「それに私達と出会ったあの方。確か隣国まで出向いて仕事をしているようなやり手。()()()()()()()()()にも当然通じている可能性はあるかと」


 あっ、成程。酒場で助けた商人さんか! あの人なら確かになんか知ってそうだなぁ。いやぁ情けは人の為なんたらっていうが……


「次の目的地は決まったな」

「えぇ。また彼が酒場にいらっしゃるのをお待ちしましょう」


アンデルセン先生ごめんなさい。


尚内容は脅迫の模様。

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