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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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リスクを負う作戦が正解とは限らぬのだ

 ――さて、時間は稼いだ。しかし、時間を稼いだだけじゃ意味はない。


「根本的な問題は……はくっ、アイデアが思い浮かぶかの勝負ですね」

「そうだなぁ。ところでその芋どこで買ったの?」

「そこら辺の店で。結構おいしいですよ? やっぱり美味しいですね、ジャガイモって」


 そんな時にどうしてこんな風に、落ち着いて飯を食ってるかって? ふっ……そんなの分かり切っているじゃないか、読者諸君。まぁ俺の読者諸君、この人魚姫世界に一人も存在しないけどな。


「先生も、早く朝食を食べて調子を取り戻してください。アイデアが浮かばず、もう丸三日ですよ。稼いだ時間を無駄に浪費するつもりですか」

「いやぁ……本当に厳しいんですよ編集さん……」


 はい。俺の無能ゆえだよ! 仕方ないじゃないの!


「人魚姫に言ったことだって嘘八百だってのに……そもそも無理でごぜぇますよ、王様の目の前に出て行って、人魚姫に関する何かを訴える方法とか……」

「情けない。王に怯える創造主とは」

「神に反逆するのは大抵暴虐の王って相場が決まってるだろうに」


 俺が描いた王様っていうのは、やっぱり王子を従えるだけあって、相当にラスボス臭が凄い人にしたのね。人魚姫と王子が、この物語における俺の理想なら……王様は俺にとっての恐怖そのもの、というか。


「……正直な所、相対したら、多分俺泣いちゃうと思う」

「大の大人なのに?」

「うるせぇ、大の大人だって、泣いたっていいだろうが。そんな大人は泣いちゃダメ、みたいなのは悪しき風習だと思いますぅ!」


 そんな奴に、どうやって会って、どうやって人魚姫を諦めさせるか、干渉しないようにさせるかってのは……


「大魔王を唆そうとして逆に殺される、悪い大臣ムーブなのでは?」

「成程、先生は人魚姫の体を欲していると」

「行動の理由まで悪い大臣ムーブではないからな????????」


 兎も角、下手を打ったら俺の首が物理的に飛んで晒しものよ? 王子にトマトピューレに変えられるのも当然嫌だけど、そっちも全力で拒否したい。


「で、何とか接触しない様に、上手い事邪魔できないか今考えている訳で……」

「それは現実的に無理そうですし、三日考え込んでいる時点で厳しいと思います」

「うぐぐぐぐぐ」


 結局長考して、ロクでもない考えすら出て来なくなるという何時ものパターンに陥っているのは間違いない。でも、実際接触は絶対にしたくないから、長考する価値はきっとある筈なんだ……っ!


「接触縛りは解除しましょうか。手段が限られるので」

「冷静に俺の最後の希望を奪うなお前ぇえええええっ!」


 頑張って!!! 長考!!! したんですよ!!! そうやって!!! 軽率に人の希望を奪うのは良くないよ!!!


「だって接触せず他者を操ろうなんて、それこそ傲慢の極みではないですか。先生には向いていませんよ」

「いやそんなことは無いと思うんですけど……」

「先生は傲慢と言うより、慢心して事故死する方が似合いますし」

「いやそんなことは無いと思うんですけど???????」


 別に、ゲームとかで準備怠って死ぬのが癖になってたりないし……あの、戦略ゲームで完全有利な所から一発逆転喰らってないし……小説書いてる時に、勢いで書いてても全然いけるしとか思ってたらこうやって後悔したりしてないし……


「兎も角、ちゃんと接触するのは前提です。その程度のリスク負わずして誰が世界を救えるというんですか」

「いや世界は救わないけどね? 俺勇者じゃないし」

「成程、創造主だから勇者に倒される側という事ですか」

「うーんそう言う事でも無いんだわ?」


 あの、『自分の作り出した世界だから好き勝手してもいいだろうがぁ!』的な振る舞いで原住民に打ち倒される裏ボスちゃうんだわ


「それで接触前提なら何か浮かびそうですか?」

「……まぁ、それなりには」

「やはり早いですね。先生、頭の回転が悪い訳ではないんですよ。その辺りは流石に作家と言うべきなのか」


 いやそれは違う気がする、なんだったら妄想逞しいだけ迄ある。いや、幾らなんでもその辺りは認めたくは無いけども。作家なんて妄想逞しくてなんぼだし、それは誇るべきなのかもしれないけども。


「しかし、どれも実行可能かって言われると、なぁ……」

「あら、そんな事やって見なければわからないのでは?」

「俺だって大人だ。最低限のリスクがどんなもんかとか、それに見合ったリターンがどんなもんか、とかは考える。その考え箸にも棒にも掛からぬ、ってなると」

「――成程。駄目だと思います」


 うーん、王様に海との貿易を提案して、大きなリターンを説くとか考えたけど、そんなん俺の本職じゃないから下手打って『宦官殺すべし』的なノリになる未来しか見えないのである……っ! 別に宦官じゃねぇけども。


「となれば、また書き出し作業でしょうか。ポンポンと案が出ている時なら、案外するっと出てくるかもしれませんし」

「アイデア出しかよぉぉお……」


 くっ、接触前提の案を出さねばならんとは……っ!


「リスク前提のアイデアって良くないんじゃないのかね」

「緊急事態故にどのようなリスクとてコラテラルなんたらです」

「必要な犠牲なのかなぁ……?」


 しかし、俺達が王様に接触して、何をどうすれば。そもそも、俺達みたいな平民崩れみたいなやつらの言う事、この国の舵取りをする方が信じる訳がない気がする。もっと、信じられる誰かの言葉であれば……?


「――いや、待てよ」

「どうなされました? 何か思いつきましたか?」

「いや、寧ろ……接触しない方がセーフまである、と思ってさ。いやぁ、逆転の発想さ」


 王子に親がいるのなら、人魚姫にも親がいるだろうよ。良いぜ良いぜ、こういう時は、姿()()()()()()こそが、相手を絡め取るのさ。


アンデルセン先生ごめんなさい。


リスクを負わず、メリットを奪い取るのが正解って奴ですよ。

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