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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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主人公と語らえ

「言っておくけど……本当に大したこと話せないからね」

「構いませんよ。しかし、いきなり乗り気になって下さいましたね」

「……アンタの語るお話っていうのに、興味が湧いただけ。それをタダで聞くっていうのも気が引けるから。それだけだから」


 ツンデレだ! 天然記念物だ! ……じゃなくて。いやぁ、見事に引っかかってくださった事で。ふふ、恋愛ものと聞いた途端に目の色を変えよってからに。ほんに初心な女子よのぉ……byお代官風作者。


「期待していただいて、感謝しかなく……それで?」

「まぁ、私が話せることと言えば、ちょっとした荒くれた話くらいだけどね。もうちょっと色気のある物だったら良かったんだけれども」

「いえいえ、聞けるだけでもありがたい事ですので」

「そうかい? なら……私と殴り合った男の話でも、ね」


 ――さて、そこから人魚姫が話したのは、彼女から見た王子の姿。それすなわち、俺が誰よりも良く知る、人魚姫の物語そのものだった。


 王子を海で助け、気になった彼を追いかけて陸へと登り、そしてそのままの勢いで城にまで押しかけてしまってしまって、王子と殴り合って……あー、うん。俺が大分順番変えたから()()()()()()()()な。


「――しかし、そんな敵のど真ん中に、良くぞ出向く気に慣れましたね」

「女が一度出向くと決めたんだ、そりゃあどんな理由だって会いに行くのをやめる理由にはならないよ」

「意思が強いのですね」

「特別そうって訳でもないさ。単にそれ以外を知らないっていうのもあるし」


 だが……その変わってしまった流れの中でも、人魚姫は正に健在だ。自分の意思を容易には曲げず、誰かに迎合する事もしない。敵の真っただ中に突っ込む事もいとわない。本当に、気の強い主人公気質。


「そうとまで決めさせるほどに、彼には何か惹かれる部分あったのですか?」

「惹かれる……っていうのとは、違うね。さっきも言った通り、気になった。あの嵐の中で尚、全く輝きの消えない、あの目が。強さが」

「そう言ったモノに人は惹かれると申しますが。しかし貴女自身が惹かれる、という表現がしっくりこないのであれば、そうなのでしょうね……しかし、何故そんな気になった方と殴り合いに突入してしまったのでしょうか」

「……ソイツとはそいう感じで語り合うのが一番しっくりくるから、かな」

「左様ですか。情熱的な愛ですね」

「あっっっっ!? だからっ! 何言ってんだいアンタはぁ!?」


 因みにこんな仕草を話の中でしょっちゅうしております。分かりやすいでしょう? そしてこんな度胸の塊みたいな女性がこの反応……燃えて、来ませんか?


「全く変な事言って……」

「私の語る話にも、十分生かせるような内容かと」

「いや何処をどういう風に生かせるってんだい! 女一人で殴り込みに行っただけの話だったじゃないの!」

「いえいえ、とても興味深い体験を聞かせていただきました。ありがとうございます」

「だから何で!?」


 いやホントこの反応してくれるのカワイイ。恋愛事情に慣れてないって感じがする。幾ら筋肉マシマシの物語って言ったって、やっぱりこういう要素は必要よ。


「これで王子様の城に上がる時の、ネタにも十分……」

「――アンタ、王子の城に通ってんのかい?」

「えぇ。お城の兵士の皆様をお慰めする為に物語を語らせていただきました。また何れと言う話も出ていましたので……」

「ほぉう……? それで王子とは会ったことは?」

「いえ、王子様にはお会いしたことはありません。あくまで、お城の兵士の皆様に招かれただけなので……ですけど」


 ――さて、問題は此処からだ。


「王国の王様には、お会いしたことがございます」

「へー、そっちの方が珍しいけど……王子から紹介でも受けたかい?」

「えぇ。その様な感じです。それで……これから更に国内の警戒を強める、と零しておられましたが……盗賊でも増えたのでしょうか。怖いですねぇ。私の様な語り部にとっては、そんな荒事は全くもって遠い出来事ですし……」


 ……こええええええええっ! 目が一瞬で鋭くなった! 美人のそう言う顔って、物凄い怖いって言うけど、さっきの商人さんの様子の変化とか、児戯のレベルじゃねぇかコレに比べたら!


「他に何か聞いていないかい?」

「他に、でございますか……? そうですねぇ。あぁ、去り際に、王子様を呼びつける様に、何か酷く不機嫌そうな様子でおっしゃっておられたような」

「王子を、か。ふーん……」


 とはいえ、ここまでの反応をしてくれたんだから作戦は上手く行ったと考えて良いだろうか。取り敢えず、怪しまれず、自然な流れで話せた気がする。


「――貴女も、お気を付けて下さい」

「ありがとうねぇ。でもまぁ、腕っぷしには自信はあるから大丈夫だよ……あと、愛の話ってのは、また何れ聞かせて貰うとするよ」

「え? でもお話をお聞きになりたかったのでは?」

「ちょっと事情が変わったのさ。聞きたくない訳ではないから、また今度、ここに来て聞かせてくれりゃあいいから。私は大抵ここに居るからさ」


 これで……ちょっとは結末も変わってくれりゃあいいが。




「警戒させる事は出来ました。後は彼女次第かと」

「そうだなぁ……まぁ、時間稼ぎにはなったし、その間にじっくりと対策を考えるとしようか」


 ――接触する。それは、接触するだけで終わらせるっていう意味じゃない。俺達が対策を打つだけの時間を稼ぐっていう意味合いもあった……と、カッコ良く言えればよかったんだけど。本当は、商人さんにここに連れて来て貰う迄の間に思いついたに過ぎない。


「とはいえ今回は結構うまくやったんじゃないか?」

「なにがですか?」

「俺のアイデアだからなぁ……ふふん。俺達が色々変更して回ってるんだから、時期もズレている……人魚姫捜索が早まっても不思議じゃない。故に」

「時間稼ぎに、情報を流す」


 そうっ!


「今回は頭脳が冴え渡っている気がしないでもない」

「まぁ確かに、冴えているとは思いますけれど」

「そうでしょうそうでしょう!」

「交渉役を私に任せて後ろで大人しくしている、というちょっと情けない姿をさらしながら限界ファンボーイをやっていなければ、完璧だったんですけど」

「ほっとけ」


アンデルセン先生ごめんなさい。


か、可愛げがあればすべて許されるっていうし……

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