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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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編集さんのナイス(?)サポート

「――と、言った所で、今回は此処までとなります。この続きは、また次回……」


 そして、わぁああああ、と。割れんばかり、とはいかずとも歓声を頂きましてございます。『白雪姫』は、どうやら兵士の方々でなくてもウケてくれたようで、何より……と言った風に現実逃避しないとやって居られない気がする。


「さっきからオンオン唸ってどうしたい、兄ちゃん」

「どうもこうも無いってんだ。あそこのお方からとんでもない無理難題を押し付けられてんだ……」

「なんだい、姉離れしろってか?」

「オヤジ、いい加減シスコ……姉大好き、みたいに俺を弄るのをやめろ」


 金を稼ぐための場所の筈なのに、其処がアウェーとか苦難上等でしかない。いや来なけりゃあいいっていう話だけど……自分の話が受けてるかどうかも確認しないってのは、作者として責任が取れてないかなって。


「実際姉貴大好きだろうに……で、何だい無理難題って」

「秘密。っていうか、言っても分からんだろう、専門的な事だし」

「本当に何やらされてんだアンタ」


 俺だってわからんわ。自分の嫌な記憶を掘り返して、直す為に改善点を模索する……居や模索してはいないけどさ、まだその段階じゃないけど……


「そもそも……何処を本当に直したいかなんて」

「姉大好きな所とか?」

「そこから離れろスケベオヤジ」


 それは兎も角として。そりゃあ、探そうと思えば、幾らでも出てくんのよ。もっと良い感じに書けたんじゃないかって箇所は。問題はその数が普通に思ってる倍、いやさ五倍近くある事なんよね。どれがループポイントなのか見当もつかん。


「見つけた方が良いって言うのは分かるんだけどなぁ」


 そりゃあ次のピンチへの対策を打てるっていうのはデカいけれどもさ。候補が多すぎだったらそりゃあ意味ないでしょうよ。


「……」

「――お待たせしました。おや、随分なお悩みようで」

「アンタの所為だアンタの……帰んのか」

「はい。次回の後編を、皆さま楽しみにしていらっしゃいましたので、営業などせずとも大丈夫かな、と」


 そりゃあ作者冥利に尽きるこった……と。そいじゃあ……


「帰るか、地獄の仕事場に」

「地獄なのですか?」

「もしかしたら天国だと思ってらっしゃる? だとしたら貴方のメンタルが心配です、本当に。地獄以外の何物も無いと思うんだが」




「――少し方法を変えてみましょうか、今日は」

「どういう方法を取るんだ? まぁ、聞かなくてもマジでロクでもないだろう事は察しがつくけどさ……」

「そうですか?」


 だってやらされてることの内容ががが……作家にとっては致命傷なんだもん。


「大丈夫ですよ。先生に出来るだけ負担をかけないようにと考えた方法なので。そう警戒しないでいただけるとありがたいです」

「寧ろあなたがそう言う発言をする事が不安なんですよ」


 俺の事を気遣っている様に見せかけて、実は……って事がアホの様に多かったからね今まで。最高級の旅館に泊まって傷を癒せとか言われて喜び勇んで突入したら……応援まで呼んで俺を包囲してさ。缶詰に……


「どうしたんですか? 黄昏て」

「いや、人気者は哀しいなって、思っただけ」

「辛いでは無くて? 流石先生、感性の独特さでは他の追随を許しませんね」


 それはオイラの感性ではないし、寧ろそう躾けたのは貴女なんだけども、その認識がもしかしたら間違っているのかもしれないなぁ……?


「まぁ、それはもういい。で? 何をするつもりなの」

「催眠療法……擬きをやってみようかと」

「待ってもう不安なんですけど。せめて疑問符を浮かべさせて、青ざめメイクをさせないでください。お願いします」


 と言うか催眠療法って素人がやっちゃいけないってご存知ない? いや、この人がご存知ない訳ないし……ワンチャン……


「まぁ催眠療法とはいえ、擬きなので大丈夫ですよ」

「何が大丈夫なのか、これが全く分からないんだけども……?」

「要するに、催眠療法、というのはあるトリガーをきっかけに精神的変容を齎す物、と記憶しています。トランス状態などもコレに近かった気がします」

「はぁ、そうなんすね……?」

「つまり先生が書くのに没頭して周りが見えなくなっているのも一種の催眠状態なのではないかと思う訳なんですよ」

「何言ってんだアンタ」


 やべ、思わず本音と辛辣なコメントが……いかんいかん。こういう言い方は人を傷つけてしまう。頭を冷やしてもう一度。


「ちょっと一旦、そのネジの緩んだ頭を締めて貰っていいかな」

「はいはい問答は良いからやりますよ」

「問答は大切! 友達!! 怖 く な い よ!!!! いや、その前に、何をするんだ結局!」

「要するに後悔を生んだ状況と同じにすれば思い出すかな、と」

「何 時 も の 作 品 制 作 で す ね 分 か り ま し た よ !」


 クッソ迂遠な言い方しやがって……


「そんなこざかしい言い方は止して、さっさと書けと言わんか!」

「書けはしないので考えろ、とは言いますけどね」

「違うそうじゃねぇ!」

「あ、大丈夫ですよ。缶詰はしませんから。とはいえ私が何時ものようにしっかりとお尻を叩かせていただきますけれど」

「そう言う問題でもねぇ!」


 くっそ、ちょっとくらい考えて俺をサポートしようとしてくれてるのかな、とか思った俺がバカだったよ! 催眠療法とか、どんなもんなんだろうなぁ……とか思ったのも間抜けの所業だったよ!


「では必死こいて思い出して下さいね。容赦はしませんので」

「チクショウッ! ここから出せ! いっそ殺せ! クソがぁアアアアアっ!」




 ……結局、俺をボロカスにまで追い込んで、思い出せた箇所が余計に増えただけで、特定の箇所を確定させるには至らなかった。

アンデルセン先生ごめんなさい。


実際、場所や状況を再現する、的な精神の治療法もありますが、それらは催眠療法とは関係はありません。誤解を招く前に。

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