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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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耳をぶち壊す心のケア

「――という事で、現状を再把握しましょう」

「えっ、はい」


 宿に戻って来て急に何ですか。現状をどうやって、何を把握すれば勝ちなんですか? 勝ちって言うか、ダメだ。さっきまでのループ突破戦で、頭がバトル方向に酔ってしまっている。


「まず、先程で発覚した事。先生の無念があのループを生んだという事」

「俺の無念って、ちょっと言い方……」


 まるで俺が死人みたいじゃないか。止めろ、俺はまだ死んでない。この世界に来てまで立派にやってるんだよ。いや、までって言うのもおかしいか、言い方として……


「――まあいい。もう二回目が終わったんだ。二度目の正直、もうこんな可笑しなことは起こらないんだ。わざわざ確認しなくても……」

「何をおっしゃっているのですか貴方。二度ある事は三度ある、どころの騒ぎじゃありませんよ恐らく。後五、六回はこの現象が起きる可能性は十分にあります」

「ふむふむ……成程……どういう事ですか??????」


 ちょっと、あの、予想の二倍も三倍も持って来られて大混乱なんですけれど、何かの間違いじゃないですか? そんな全力でハチャメチャが雪崩れ込んできたら我が許容範囲を遥かに超えてくるぞ。


「単純ですよ。先生の後悔がループを引き起こしているのなら、先生が修正したいと思って居る箇所はまだまだあると思われます」

「……」


――いやホント、マジで、これを直さないと死んでも死にきれない、後悔するシーンが三つ四つ……いや五つ位はありますわ! でも編集のお言葉には勝てなかった……――


 あー……過去の俺も言ってたなぁ。あん時は締め切りの限界で、頭がトランスしてたから思い出していたんだろうなぁ。で? 今の俺が覚えているかと言えば。まぁお察しですわ。ハハハ。


「――思い出されましたか?」

「可能性がある事は、十分思い出しました。い、いやだからって……」

「二回はあったのですから、もう次があるのを前提にしましょう。そうした方が対応もしやすいと思うので」


 わースッゴイ対応能力。予測してからの行動が早すぎる。


「そして、そうなった以上は……先生には、新たな小説のアイデア出しだけでは無く、もう一つやって頂く事があります」

「……なんですか」

「当然ながら、その後悔ポイントの洗い出しです」


 あっはぁぁぁぁあああああん……いやー何となくこの流れだし、言い出しかねないとは思っていたけれど! マジで言いやがったこの人!


「作家にさせる作業としては一番の苦行だぞソイツは!」

「あら? そうなのですか?」

「……一度書き上げたモノをリブートするって言うのは、凄い厳しいんだよ。色々、苦しんだ記憶が脳裏によみがえるからさ」


 辛いのよな。本当に。どういう所で、時間だとか、その時のテンションとかの折り合いで妥協したのか、とか色々考えて、どうして俺はあの時もうちょっと諦めず先に進まなかったのか、とか、色々考えちゃって……あっ……


「俺もう哀しみを背負いそうだ……今日は、もうちょっと、マジで……もう、良いです」

「そう言うのどうでもいいですから、しっかり思い出して下さい先生。あのループ現象に対策として打てる可能性が、先生の頭脳にしか眠って居ないんですから」

「ちっとは俺の精神面を気遣えお前ぇぇぇえええええ!」


 編集としては有能なれど、俺にとっては余りにも容赦なくて……言葉に……しようと思いたいけど言葉で反抗したらボコられるので結局出来ないのが作家の定めでございます。


「先生は強い子だと信じておりますから」

「俺は強い子になりたくない。強ければ強いほどサンドバッグにされる可能性がガンガン上がるから……」

「先生はサンドバッグでは無く先生ですけど」


 じゃあ先生らしい扱いをしてください。涙が止まらなくなります。


「……やるの?」

「今からとは申しませんので。先生には頑張って頂かないと。ここは紛いなりにも先生の作り上げた世界ですから。頑張って頂かないと」


 二回言うじゃん。めっちゃ念押しするじゃん……逃げ場ないじゃん俺……はートラウマ掘り返す作業するとか、なんでそんな苦行が追加されるんだろう。


「――本当に厳しい、と言うのであれば出来るだけの心のケアは致しますので」

「……どうやってやるんだよ」

「耳かきとか?」

「上手いの?」

「いえやった事はありませんけど、多分上手く行くのではないかと」

「えっ、やった事無いのに凄い自信じゃん。ホント編集さんそう言う所あるよね」

「まぁ手先はそれなりに器用ではあるので、私も……ただですね」


 なんだよ。言ってみなさいよ。


「そもそも耳かきをする為の道具があるか。恐らく手作りの物を使う事になります。下手を打つと耳自体が悲惨な事になりますけど、それでも宜しいなら」

「慎んでご遠慮願わせていただきます」

「はい。まぁそう上手く行くもんではないないですよね」


 そうね。そういう音声作品みたく上手く行くもんではないよね。女騎士が耳かきする作品とかの台本とか、そもそも耳かきなんて上等なもんがこの時代にあるかと考えながら書いてみたりと……ってそうじゃないだろうが!


「おい、待て、ダメだと悟って居ながら何故言ったし」

「先生が想像を絶する耳かき好きならその悲惨な状況でもリラックスして下さるかと」

「俺をどんな変態だと思ってんの?」


 病気になってでも受けるって、それほぼ依存症みたいなもんよ。


「まぁ、先生の心のケアは私も考えておきますので」

「――まぁ、期待せず待っておくよ」


 そして、ケアを考える以上は、もうやらされる事は確定しているのか。そう言う所本当にちゃっかりしてる。うぅ。


アンデルセン先生ごめんなさい。


耳かき好きかい? 私は大好きでございます。

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