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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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ファンタジーとの遭遇

「なんか……普通に出て来れちゃったな」


 普通に城門っぽい所までスムーズに突破出来ちゃった。もっと声かけられると思ってたのに全然、何も。余りにもあっけなかったというか。


「なんで声かけられなかったんだ?」

「私が目立って先生に一切目が向けられなかったのではないでしょうか?」

「お? さては俺の事を地味だと言いたい訳だなアンタは??????」

「目立つのがお嫌いだというのは知っているつもりではあります」


いけしゃあしゃあと……いや、今は怒っても仕方ない。というか、外出て初めて気が付いたんだけど、此処って城だったんだね。全然気が付かなかったよ。


「まぁ、アンタは見かけは良いから得をした、と思っておこう。口を開けば小言マシマシ評価がカラメのド鬼畜外道コメントが飛んで来るけど。糞みたいなハッピーセット。スマイルくらい寄こせ」

「その代わり原稿三枚下さるなら」

「一スマイル毎に約三千文字……だと?」


 ぼったくりにも程ねぇかお前!?


「一スマイル? 何を勘違いされているのですか?」

「え?」

「笑顔一秒ごとに原稿三枚です」

「時価レベルでぼったくりしてくんの!? 善性が全滅してる詐欺師でもやらんぞそんなゴミレート!」


 それが正常だと申すか? 俺が外に出無いからって言ってそこまで常識ないと思われてるもしかして。怒っていい奴?


「――まぁ冗談はここまでにしておいて」

「冗談で済むと思うな、後でキッチリ話しするからねこの件について。後先生の扱いとかも話し合おうな?」

「此方、間違いなく日本ではありませんね」

「ねぇ無視しないで……スゥゥゥウウ……まぁ、そうだな」


 めっちゃ中世ヨーロッパな城してるし後ろ。鎧ガチャガチャ鳴ってたし。一人くらいランスロットって名前の奴居そうだった。しかも地下に牢屋だし。


「それに……私、あの鎧には見覚えがあります。というかあのデザインは、確か先生がこれが一番カッコイイと言っていたではないですか。若年性アルツハイマーですか?」

「えっ、罵倒のレベルが若干高いけど褒めたくない……というか、一番カッコイイ?」

「『真・人魚姫~王国崩壊の日~』のデザイン案ですよ。打ち合わせに参加為されていたではありませんか」


 デザイン案? アレのデザイン案というと……王子とか人魚姫は凡そ自分でイメージ持ってたから、後は鎧とか、城とかの専門家とかに意見を伺って……あ。


「そういや、あの兜の形とか、王子の国の兵士と……」

「貴方の作品内で使われていたデザインのままでしたよ。盾のレリーフが証拠です」

「へー、直ぐ出てくるのはやっぱり流石だなぁ。やっぱりそういう所有能……じゃなくて! なんでそんなコスプレした連中が俺を追いかけ回してんだ……?」


 意味が分からん……いや、待て落ち着け俺。


「それを考えるのは、取り敢えず後。先ずここが何処かの把握からだな、それから近くの大使館の確認!」

「流石先生、手馴れていますね」

「アンタが取材旅行の名目で色々放り込んでくれましたからねあちこちに! 色んな事に慣れざるを得ない……最近は羽ペンだって使えるようになっちゃったよ! まともな文房具があるような場所ばかりじゃないからな!」

「お陰で良い小説のネタになったかと」

「そう言う問題じゃねぇだろうがよ……!」


 この鬼編集ホントに、俺に小説書かせる為なら何でもするからな。ホント、編集のドッキリっていう発想が真っ先に出てくるぐらいには……うぅ。なんか泣けて来た。


「というか、未だここが現実世界だと思っておられるんですか? あんな沢山の鎧、それに城。こんな場所が現代にある、と考える方が非現実的ではないかと……それこそ、異世界にでも来た、と思った方が」

「おーし聞いてないな!」


 というか、異世界だぁ?


「……馬鹿らしい、ファンタジーや御伽噺でもあるまいし」

「そういう系の話を描いている貴方が言いますか、それ」

「あのな。俺の職業は、そういう存在しない世界を想像し、創造し、その中で行われる見た事も無い物語で、人の心を動かす事なんだよ。ノンフィクションじゃ動かせない心を、フィクションで動かすのが仕事!」


 フィクションだからこそ、夢を与えられるんだよ。だからこそ書いている張本人はそういう事に何よりも詳しいし、あり得ない事も誰よりも自覚してんの!


「そんな素っ頓狂な事言ってる暇があったら、ここが何処だかをしっかり調べないと」

「それでしたら向こうにいらっしゃる方々に聞いてみるとか」

「ああん?」


 ……なんだあの人だかり。


「って、アレさっきの城の兵士たちじゃねぇか!?」

「えぇ、丁度いいかと」

「丁度いいじゃねぇバレたら追われるかもしれないんだぞ! 多分冤罪で……兎も角隠れろ急いで! そこの草むらで良い!」


 ……良し、気付かれてないな。セーフセーフ。それにしても、アレ、女を物凄い大人数で囲んでるのか。アレだけの兵士に囲まれるとか、一体何しでかしたんだ、というかどんな女なんだ一体……アレ?


「なんかあの女、見覚えがある、ような」

「……そりゃあ、見覚えもあると思いますけど」


「フゥゥゥゥン……!」

「やらせる前に潰せぇ! 如何に人魚姫とはいえ人間だ! 刃物が突き立てれば確実に仕留められる筈だぁ!」


 ――足が、足の筋肉が凄い。それでいて不自然じゃない、筋トレで出来た様な筋肉じゃない……マッシヴっていうのが、ピッタリな。


「ハァァァアアアアアアッ!」

「「「ああああああああああああああっ!?」」」


 ……えっ?

 えっ、人が、吹っ飛んで……蹴り? そうだ、あの女が蹴ったんだ。うわ、凄い綺麗飛んでるのにスローに見える。凄い肌がぞわってしてる、ゾーンに入ってるって奴? 


「――アンタ達に、用は無いよ!」


 あぁ……このセリフ、覚えがあるぞ。

強い眼差し、自分が負けるなんて欠片も考えてない。どんな理不尽にも負けない、なんてタフネス。俺の考えた最強のヒロイン。スゲェ、カッコいい……ああスゴイ。大違いだ。やっぱり。


「――()()、だ。凄い、本物の……俺が、書いた……人魚姫……ははっ、スゲェ、夢見心地だ、ファンタジーもドファンタジーじゃねぇか……!」

「何を夢見心地になってるんですか」

「バガボンドッッッ!?」


 っ……っ! あ、頭が、割れそうだ……このアマッ……人が、折角、感動してた、ってのに、水差す、どころか、鉄槌ぶち込んで来やがった……!


「アンタねぇ!?」

「さっさと行きますよ。ここに居たら先生の頭も吹っ飛びますから」

「いや人魚姫を見境ないバーバリアンみたく言うのやめてくんない? 誰にでもノータイムで喧嘩売るみたいなバーバリアンにすんのやめて?」


 一応さ、ヒーローとして書いてるのよ。かっこいいヒーローとしてさ。そんなアウトロー染みた事なんてしないから。其処だけ修正させてくれ。頼むから。おい。ちょっと、行くな止まれ、こらっ!


アンデルセン先生ごめんなさい。


常識を理想の景色で打ち破る形になるな。

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