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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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作者の実体験(大嘘)

「いやぁー、お二人共お待たせしました! 山賊は、此方で何とか処理できました。もう安心してお帰り頂けます!」

「もしよろしければ、疲れた俺達を癒す為にもう一話位……」

「馬鹿野郎! これ以上あんな盛り上がったら疲れ切って死んじまうわ!」

「穏やかな心地になれるようなお話もありますので、そちら――」

「んんんんんん姉ちゃんちょっと時間がアレだから帰った方が良いんじゃないかなぁ」


 と言いながら単にそんな話のネタは無いのである。此奴、もしや『ちょっと待ってください』という短時間の間に書かせてくるつもりか? させねーよ? 本当に申し訳ないですけれど……!


「あら? そうですか。すいません、弟もこう言っているので」

「いえいえ。お気持ちだけで全然ありがたいです」

「そのお気持ちで、また来て頂けると、同じく有り難いと申しますか……イデッ!?」

「欲望を出すな馬鹿野郎! すいません、これ以上此処に居ると此奴が調子に乗りかねないので、失礼いたします」


 というか、今は稼ぐよりも、先ずループ突破が先だろうに……まぁ、この兵士さんが待機部屋に来た時点で、勝ちなのは確定だけれどもね。


「いえいえ。皆様がお聞きになりたいというのであれば……」

「そ、そうですか!? でしたら……た、隊長にお話し、通しておきますので! それでは」

「はい。それでは……」


 ……そして、次への依頼の布石も忘れないっていう。編集としてやっぱり有能だよなこの人。商いに関しては抜け目ないわ。


「――予想以上にアッサリと行きましたね」

「ヌハハハハハハハハハハッ! 漸く、こう、創造主らしいチートが出来た気がする。こういうの! こういうのをやりたかっ……あれっ? コレってチートとは厳密には違う気がしないでも……?」


 もっと、オキラックにさ、状況を妥協できてこそチートだってのに、なんで俺はあんな追い詰められた限界も現界みたいな状況じゃないと全力を発揮できないのか。


「……しかし、分からないのですが」

「何が」

「なんで人魚姫は、最後の攻撃をハートノックから、渾身のベアハッグへと変えたのでしょうか。守りに入っていた王子を、防御諸共抱き締めて封じ手となっているのでバトル的な展開では、間違ってはいないとは思うんですけど」


 ――そう。ハグだ。

 俺が引き出したかった、最後の最後。美しい金髪を靡かせて、人魚姫はその両腕にて王子に抱き着きに行ったわけである。


「まぁ、愛情表現としてハグを人魚姫にさせようと決めて、それが勝負の決め手となるのも先生らしいと言えばそうなのですけど」

「単純な話だ。言ったろう? 俺は人魚姫の物語を元にこの作品を書いたって」

「えぇ。その分原作も粉々にされている、と申しましたけど」

「何度も言いますけどちゃんと原作通りなんですぅ―」


 ――で、原作を踏襲しているなら、人魚姫には必要な要素がある。


「人魚姫は、基本的に()()なのさ。恋愛に関してはな」

「はぁ」

「考えても見ろ、隣国の娘と王子がくっつくのを、彼女は良しとした訳で。王子を奪い去るという発想がない。人魚姫を何度も読み返し、俺は彼女に、恋愛には慣れていないという事を設定した。ハートノックの下りも、それも表している」


 ハートノックで、初めて恋を自覚する人魚姫は、その感情を理解する為に、幾度となく王子と巡り合う。


「そして同時に、恋愛的に奥手って事は、アプローチを知らないって事でもあるって訳だ」

「――なるほど、先生と同レベルという事ですか」

「さてはそれ悪口だなオメー」

「納得がいきました。地上を踏みしめる程力強い脚で、あらゆる敵を薙ぎ払う人魚姫がどうして……あそこまで初心な娘として描けたのか。要するにモデルは」

「おう、それ以上は戦争だぞ。分かってるな? 戦争したいって言うのなら止めはしないが、言っておくが俺は全てのプライドをかけて戦いに行くから覚悟しておけ」


 ……いや、否定はできないけど。

 仕方ないじゃん。初心な主人公書こうと思うと身近にすごい良いモデルがいらっしゃるんだから、それを参考にしない手は無いのよ……


「まぁ、それは置いておいて……そんな女の子だ、相手にどんなアプローチをすればいいかも分からない、しかしやり方を知れば実行に移すだけの度胸はある」

「だからこそ、例を示せば即座に、と?」

「寧ろ戦闘中は彼女にとっては独壇場。其処で花開く事もあろうってな」


 いやー、見事に予想が当たってくれて助かった。


「そして、ループも見事に抜けた。んふふふ」

「何が決め手だったんでしょうか」

「少女が初めてした愛情表現が、将来の宿命のライバルとの一戦での決め手になる……なんともロマンチックじゃあないか。そりゃあもうこれで完璧でしょうよ」

「ロマンチックの意味をもう一度考え直してきてください」


 ちょっとさっきから当たり強すぎやしませんかね……? あの、オイラ結構頑張って人魚姫の性格を読み切ったんですよ? 寧ろ褒めて頂いてもさ……良いくらいなのに……うぅ。所詮俺の扱いなんてこんなもんなのか。


「いじけちゃう……もうたいいくずわりもしちゃう……」

「――しかし、悪くは無かった、と思いますよ?」

「……ん?」

「あの最後の渾身のハグ。ミシミシって信じられない音出してましたけど……でも、彼女の、人魚姫の表情。とても真剣でしたし、私も少し、グッと来てしまいました」


 おっ?


「編集さんに褒められたなら、そりゃあ俺も気にいるってもんだな。アンタの編集としての腕は、マジで折り紙付きだ」

「――そう、ですか。そう言われるのは、悪い気分はしませんが」

「信頼してるぜ、編集さん」

「とはいえ一切手加減はしないので、その辺りはお覚悟を」

「あっそぉぉォォォオオオオオオっ!?」


 心が強い。例え褒められたとしてもその辺りは決して緩めない。いやぁその辺りも編集としてはずば抜けてるよね! お陰でオイラの心をは常にボロボロだよ! ガハハハッ!


アンデルセン先生ごめんなさい。


恋愛なんてやった事ないなら初心なキャラ書けばええんや! → あれっ? 結局恋愛に初心なのって俺もなのでは……? → 哀しみへまっしぐら。

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