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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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自分の思い出を自らクラッシュする

「……無くないか」

「……」


 珍しく、編集さんも黙ってる。まぁ、俺のクソ情けなさを良く知っているからこそ、あの極まった武人同士の争いに、どうやって介入させるのかを考えているんだろうけども。というか、今更ながら、仮説の証明になんでこんな命かけてるんだろう。


「……厳しい、と言わざるを得ませんね。正直な話」

「だろうね」

「手だては無数に思い浮かびますが……先生を犠牲にする、という前提の元成り立つものばかりなので、論外、というしか」

「そうか……いや待って? ばかり? 俺を犠牲にするプランを幾つ思いついたの?」

「えっと、ザッとで宜しければ……五十ほどは」

「えっ、待って予想の倍どころの騒ぎじゃなかった……恐ろしいなぁオイ!?」


 犠牲にするプランは論外って言っておいて俺を犠牲する前提のプランを五十以上普通に思いついちゃう辺りがぶっ飛んでるよね。


「先生を活かす為のやり方を、諦めていけませんからね」

「いやぁ、小説書いてる時にも俺自身を活かして欲しいなぁ」

「活かしてますよ、全力で。活かしてませんか?」

「叩き潰されている気すらするんだけどなぁ俺……」

「先生のアイデアをたたき台に全力でやってますので、そう言う意味であれば叩いていると言われても仕方ないと思いますが……」

「それはね、マジで叩き潰してるんだよ」


 俺のアイデア、ミンチにされた挙句練られて自分の形を若干残して方に嵌められるから情けかけられたみたいで、割と屈辱なのよな。


「それは兎も角、どうしましょうか……」

「そもそもあの嵐に割り込む隙なんて無いだろうよ」

「そうですね。問題は、常にあのスピードで争っている事なんですよね」


 そもそも、俯瞰で見ないとついていけないレベルのバトルに割り込もうとか、それ自体が絶望的におこがましいと思うんだども。


「一瞬でも、一瞬でも隙があれば……」

「ないない。あの二人にはそんなもの存在しないよ」

「……言いきらないでください先生。というか、諦めが早くないですか」

「あの二人を設計したのは俺だぜ? 自慢じゃないが、絶対に割り込めないと確信すら出来る。そう言う格のお二人だ。王子は兎も角、人魚姫は世の中の理不尽だって、個人で押し返す、そんな強い人として初めから設計してたんだよ」


 前も王子相手に言ったが、戦わずして退散させるのが一番良いんだ。


「そりゃあ、無理だろうなぁ。と、誇りすら持って断言できるさ」

「断言しちゃダメでしょ。私たちずっとこの流れの中に居る事になりますよ」

「……そうだけどさ」


 いやぁ、俺だって、この流れの中ずっと、っていうのは流石に嫌だけどさぁ……


「先生は何か思い当たる所とか無いのですか?」

「なんか発見したかって? アンタが見つけられなかったのに俺が発見できる訳ないでしょうに……」

「いえ、そうじゃなくて。先生は、そう言った事を書いて表現していたのですから、そこから何か、私たちが入り込めるような隙など、思い至らないか、と言う話です」


 いやぁ、全くもって至らないなぁ……


「……それこそ、割り込む隙の無い、互角の激アツバトルとして全力で書き上げた。守りながらカウンターを淡々と狙う王子に対し、それを崩そうと蹴りの一撃、渾身のモノを叩き込んで。その大振りを狙われて一発返されて」


 返されて……返されて。いや、その直前、までは……


「……無い事もない気がする」

「あるんですか? 割り込むタイミング」

「確実、とは言えないが。俺が結構拘って描いた場面だから、覚えてるよ。確かハートノックのその直前に……人魚姫は、タメを作るはずだ」


 いや、タメからの大技ってかっこいいやん。だから人魚姫にさせてたんだよ、必殺を大技を、人魚姫に。


「そこまでは長く無いが……そこなら、俺達でもギリギリで何かできるかもしれない」

「――思い出しました。バトルを入れるのであればタメは外せない、とおっしゃっていましたね」


 そうそう。其処だけは、絶対に譲らなかったのを覚えてる。ハートノックになっちゃったから、せめてそのハートノックが自分の理想の展開になる様にって。


「繰り出されると予告された大技にも怯まず、冷静にカウンターを叩き込む王子。その姿と、心臓の衝撃で心を揺さぶられてしまった人魚姫……心躍るじゃあないの」

「先生の趣味全開ですね」

「うっせぇ、小説なんて自分の趣味全開にしてナンボだろう」

「確かにそうですが、今はそうではありません。タイミングとしては其処しかない」


 そうだなぁ、こっから脱出するには、ハートノックを、もっと俺の好みのシーンに変えてやるしかない訳で……いや待って。


「その為に俺ハートノック潰すの?」

「だからそう言っているではないですか。なんですか? 痴呆ですか?」

「ちゃうわ! いや、自分なりに、頑張って書き上げたシーンを結局自分でぶち壊しにするのかと思うと……」


 ……な、なんか急に嫌になって来た。


「ほ、他に何かタイミングは無いか」

「ありますか?」

「ちょっと待って考えてみるから……」

「――ダメそうなのでハートノックのタイミングしかありませんね」

「待ってぇ……! もうちょっと、もうちょっとで良いから、考えさせて!」


 考えたらなんかいいアイデア出るかもしれないじゃないの! そんな、見切りの早さ最速を見せつけないで!


「とりあえず、割り込む為のアイデア出しからですね」

「話を聞いて!」

「先ほどの共通点探しの様に、一気に絞り出しますよ」


 だ、ダメだっ……一度やると決めたこの人の意思を曲げるのは、こんなんどころの騒ぎじゃない!


「い、いや、今回ばかりは負けないぞ。こだわりのシーンなんだ。あそこをぶち壊しにしたくない! 絶対アイデアを出して見せる!」

「……じゃあ分かりました。十回、十回兵士の方の顔を見たら、ゲームオーバーですよ」


 j成程、ループ十回か……ふふ、結構時間あるじゃねぇか。良いぜ、それだけあればきっと一発逆転のアイデアだって……




「……先生、先程の出二十回目です」

「ごみんなさい……もう、もうでましぇん……」


 ごめんよ……ごめんよ……ハートノック……


アンデルセン先生ごめんなさい。


自分で頑張って書いた所を、自分で修正する時のむなしさたるや……

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