ああ、あの文章とか可笑しくなかったかな
「では、ここからくれぐれも出ない様に……行くぞ」
「了解しました!」
……ほーん? ほぉぉぉぉおおおおおおおん? これは、見覚えがあるというか。見覚えしかないというか。そうですか。ここで来るか。この謎ループ現象。またか、またこの城でか。
「――思ったんですけど、何がトリガーなんですかね」
「知らんよ。こっちが知りたい位だよなんなら。やり方」
「やり方を知ってどうなさるお積りで?」
「書くときに気が済むまで書き直すに決まってんじゃん。二十三十四十五十、なんだったら百までは許容範囲だよ」
「それが異常だと貴方、理解していらっしゃいますか?」
作家なんてどいつもこいつもこんなんばっかりだよ。やり直したいと思って全力で後悔してる部分、幾らでもあるさ。俺だって会心で、自分の理想像のヒーローを書き上げた人魚姫にも……
「――いや、今は蛇足だな。兎も角、この前は良く分からんうちに突破しちまった」
「そうですね。今回は、しっかりとこの現象の謎を解き明かすつもりで?」
「今、俺達は此処の客人だ。心の余裕がある。なら、考えなきゃいかんだろう……コレで二度目だぞ、一番ヤバいのは」
「これから先も、同様の現象に巻き込まれかねない、ですか」
二度あることは三度あるとは日本の最も素晴らしい格言だと思う。実際そうなって、毎度毎度どうなれば脱出出来るのかも分からずに『あ、ラッキー抜け出せた』なんてなる訳も無いだろう。
「という事で、今回は何がトリガーなのか、前回と何が共通しているのか、考えてから動きだしたいと思う」
「なるほど。一体どれくらいを目標にします?」
「――二十。ループ数がそれを超える前には、切欠位は掴みたいな」
よーし、まぁ大丈夫だろ。そう簡単には突破できないにせよ、俺達も良い大人だ。三人とはいかずとも、少しは良い意見も出るだろうよ。
「じゃあ、先ずは前回との比較からですね。先ず私が思い出せることは全て思い出しますので先生もお願いします」
「おう、任せろ」
「まぁ、出なくても絞り出すので問題はありませんが」
「そうそう、無理矢理にね……って、えっ?」
……なんか、不吉な単語が聞こえましたけど。アレかな。疲れて幻聴でも聞いたかなさては。うん。そう言う事にしておこう。そう言う事にしておきたい。そう言う事にさせてくれお願いだから凄いしんどいからやめて許してお願い。
「……しんだ……しんだよおいら……」
「ご苦労様です。先生のご尽力で、ある程度は情報が集まってまいりました」
おう。もうずっと『それだけですか?』って繰り返された挙句、行動の一つ一つを一々聞かれて詰められて、今までとは違う意味で、心をシリシリと削られている、より心に来るダメージの与えられ方だよ。
「……で? どんな感じですか」
「まぁ、携帯も何もないので、私の頭の中の情報を整理してお話しますが……前回との共通点は結構多くありました。今と」
へー。
「分かりやすい物から言えば、王子と人魚姫が居る……そして、私たちがお城の中に居る、と言った所でしょうか」
「……そうだな」
「それと、分かりにくい所で言えば。二つとも私達は、王子と人魚姫から離れた位置に居る事、ですかね」
「いや、それは分からん。どういう意味だ?」
俺達は人魚姫と王子のバトルの、そのお隣さんだけど、現状。
「関わり、的な意味ですね。関連した行動をとっていない。関わろうとしていない」
「……成程、心情的な意味で距離置いてるって事か?」
「そうですね。そう言うのが一番分かりやすいかと」
……まぁ、言われてみれば。正直下手な観光気分で関わるのは危ないと、全力で逃げに徹してたわけだけど。前回も、今回も。しかし、よく気が付いたもんだ。
「まぁ、この他、色々共通点は見つかりました。ですが全くと言って良いほど、それのお陰で分かった事、収穫、ありませんね」
「えっ!? ないの!?」
とか思ってたら。なんか凄い法則とか、こうすると間違いなくアウトっていう答えを見つけたとばっかり。
「全くもって。共通点が見つかって、だから? と言う話になりました。困りましたね」
「困りましたね、じゃ済まないんだけど? っだぁあああああ分かった、俺もちょっと考えてみる。三人には足らんが二人分、知恵があれば」
「先生の加勢では効果も目に見えていると思われますが」
「あっ!? それ言っちゃう!? あーそれ言いますかはーキレたキレました。偶には良い所見せてやるから、ちょっと待ってろコラ」
怒髪天を突いております先生。もうね、そんな言い方されちゃったら大爆発ですよお嬢さん。舐めんなしー俺だって大人だし―。『先生では力不足です』的なその意見覆して見せるしー
「……」
色々考えられるぞ可能性は。想像力と発想力だけは、この鬼編集にも劣らぬ物持ってるんだから。えっと……そうだな。例えば。例えば……うーん。
「……ッスゥゥウウウウウ……」
「ダメみたいですね。まぁ、分かっていましたけど」
「い、いやまだだ。まだ始まったばかりだから」
「その調子になった先生が碌なアイデアを出せた試しがないんですよ。先生と何年の付き合いだと思ってるんですか」
「にゃ、にゃにおー?!」
俺の事なんでも分かってますってか!? 舐めやがって!
「大体、どんな調子だってんだよ!」
「深く考え込むと、大抵ダメです。寧ろ、ポっと、適当に言ったアイデアの方が、私としても『これはいいな』と思う事が多かったので」
――……
「……」
「そんなガチで落ち込むのやめてくださいよ。悪い事した気分になるじゃないですか」
「だって……すごい……むねにきてさ……」
つらい。そうだよ。ここに来る前、最後に書いてたのだって、どれだけ頑張って修正案出そうとしても、全然出てこなかったからだよ。俺が最初に抱いたアイデア以上に、状況にしっくり来る案が。
「俺ってそう言う所あるよ……最高、って思ったアイデアも、後から修正したいなって思ったことだって、それこそ……星の、数だし……」
「別に責めている訳でもありませんし、そんな落ち込まないでください。大体、そんなのは作家なら誰だって切実に考えたり……ん?」
……なんだよ、なんかいえよー。それとも、何も言う必要が無いくらい情けないってか俺が。自覚してますー。
「――何拗ねた顔してるんですか。思いつきましたよ」
「何が」
「条件」
……はえ?
アンデルセン先生ごめんなさい。
これ書いてると、自分の身を切り裂くような感覚に陥る事があります。ホント、文章への後悔なんて何百回しても足りない……




