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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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姫と王子のランデブー

「兎も角、此方の部屋で大人しくしていただければ。後は、我々がお守りしますので」

「大丈夫ですよ。山賊位、軽―く片付けて来てやりますから! はっはっはっ!」

「そう、ですか。頼もしいです」


 足震えてますよ兵士の皆さん。まぁ、本当に山賊だったらそんな怖くないんでしょうけども。相手があの人魚姫だろう? そりゃあ怖いとも。俺だって、自分で彼女の前に立つって想像するだけで震えてくる。


「では、ここからくれぐれも出ない様に……行くぞ」

「了解しました!」


 それでもそうやって行くって選択肢が出来るだけで、本当にすごいと思うよ。まぁ、それを称えて何か送るってのが出来る立場ではないけど。創造主だけど。


「……ここに居る方が危険な気がするのですけど」

「まぁ、お二人の戦いに巻き込めれたら、城一つなんて飴細工みたいなもんだからなぁ」

「逃げ出します?」

「それこそ心証最悪になると思うから。まぁ、シナリオ通りなら、王子が城の外で迎撃する筈だから大丈夫だと思うよ」


 やー、なにせこの戦いは、人魚姫と王子の初めてのガチバトル。人魚姫の方針、というか世の中への姿勢も示される凄い重要なバトル…………の筈なんだけど。さっき気になる話をしてたんだよなぁ。


「王子とやり合ったって……この前の、だよな」

「えぇ。先生が考え無しに王子を煽ったアレですよね」

「考え無しって言うか、考えるまでも無くああやって切り抜ける以外、死しか見えなかっただけなんだけども」


 それは兎も角。俺が煽って、王子が降りて……その後、バトったって事なのかな。逃げるのに必死で、全然気が付かなかったけど。


「流れが変わってんなぁ」

「早速創造主としての知識が役に立たなくなってくる可能性が?」

「アホか。だったらこの状況で人魚姫がここに来るなんて分かんなかったろうよ」


 まだまだ創造主としての圧倒的なアドバンテージは死んじゃいない。ガンガン押し付けていく所存だ。まぁ、その押し付けたアドバンテージが何処まで通じるかってなると分からない訳ですけど。


「しっかし、人魚姫と王子の殴り合いか。正直な話、見てみたくはあるが」

「巻き込まれたら愉快なトマトピューレですが?」

「はい、止めておきます」


 そうですよね。まぁそうなりますよね。っはぁ……ったく、俺の創造した最強の人魚姫と王子、流石、周りに与える被害も甚大。


「――王子と人魚姫が殴り合って、その後どうなるのでしたっけ」

「ん? あぁ。王子と人魚姫は、先の戦いで一目、互いに強敵だと理解して、二戦目はその実力を確かめる、そんな流れで。互いに激しく打ち合い、そしていよいよ最後に互いの渾身の一撃で吹き飛んで……人魚姫は、その一撃を心臓に貰い、それで」

「あぁ、ズキュゥゥウウンと」


 正に一撃で恋に落ちたって感じだよ。視線だとか、その類ではなくて、王子の渾身の一撃が心臓にショックを与えた感じなんだけど。というか、そのレベルの一撃じゃないと恋にも落ちないっていう……


「そもそもそれで死なない辺りが、色々不思議に過ぎるというか」

「まぁ、ファンタジーだし。唯のハートノックだから、そんな暴力とかじゃないし」

「いや暴力でしょう?」

「しょうがないでしょうよ。拳の一撃でしっかりと、ハートを打ち抜いたっていう描写をしなきゃいけないんだからさ」


 で、その後の、あの名シーンですよ。


「『時には泥を啜らねば生きていけない……この胸の疼きの正体を、私はまだ、理解していない』という、人魚姫の心の爆発へ」

「――所で、それは勝負が第一戦だから起こった事ですよね」

「まぁ、そうだけど?」

「第一戦は、聞く限り、私たちが一度逃げ出した時に起こっている様ですけれど」


 そうだな……あん? 第一戦が俺達が逃げ切ってる後に起きたんだから……


「ちょっと待って? もしかして、ですけど」

「――ですから、その後の展開は、どうなるのですか、とお聞きしたのです。今現状では先生の知識は当てにならない、と思ったので」


 ――ッダァアアアアアアアアアッ!? しまった……! そうかっ、今が、地続きの現実な異常は、俺がああやって王子を焚きつけて、人魚姫様とバトルになって、そうなったらそのイベントは……!


「そうだ、当然だろう俺……! 俺の行動一つで、色々変わってるんだ、どうして俺の思う通りに事が進むと、思い込んでいた!?」

「残念でしたね」

「くっ、しかし、編集さんに感謝……っ、驕りきった心は正さねばならない!」


 つまり俺は、この外で起きる出来事を、想像すらできない状況でこの部屋に居なけりゃいけない訳なのか。成程ね。


「あれっ、急に不安になってきたんだけど?」

「創造主(笑)」

「おいやめてくれ。その一言は俺に効く。マジで」


 チクショウ、事前チートが無けりゃこんなもんだって? 好き勝手言ってくれるじゃあないの! はい、そんなもんです。私も別に……


「……い、いや。多分、人魚姫と王子の激突とはいえ、そこまで致命的な戦いにはならない筈だ」

「根拠でも?」

「創造主としての情報からだよ」


 人魚姫は、勝気な娘ではあるし、欲しい物に向けて直進するタイプではあるけどそもそも無駄な破壊をするような性格じゃない。そして、王子は戦いのタイプ的に、防御からのカウンターを得意としている。


「無駄な戦いが起きるような二人じゃないんだよ」

「成程、流石に創造主。キャラクターも把握してらっしゃる」


 当然。人魚姫も、王子も、俺が拘って作り上げたキャラクターだ。その子達の、生き方とか色々考えて書いてるんだよ? その程度も分からずに、創造主は名乗ってられないってんだ。名乗っちゃいないけど。


「……まぁ、音で何が起きているか、位は凡そ分かりますかね」

「あのー怪獣の殴り合いじゃねーんだわ。なんでそんな音で判断しなきゃいけないの?」

「情報は必要ですし……」


 ――さて、その後も。


「おおよそ人の立てる音ではないですね」


 だの。


「破城槌が大暴れしているような音がしてますけど」


 だの。まぁ、反論したいのは山々だが、しかし事実なため、ぐぬぬ、的な事は続いていって……実際工事現場の音がするんだよな、ここ。いやぁ、社会に負けない強い方って言うのはこういうね、争いの規模も違うって事で。


「――収まってきましたね」

「結局、何がどうなってんのとかは分からなかったけど、まぁ、城が崩壊とかしなくて良かったというか」

「えぇ、そろそろ兵士の方も……そちらの扉から」


 ――ん? アレ? 俺達って、何時の間に扉の前に立って……


「兎も角、此方の部屋で大人しくしていただければ。後は、我々がお守りしますので」

「大丈夫ですよ。山賊位、軽―く片付けて来てやりますから! はっはっはっ!」

「「えっ?」」


 ――えっ?


アンデルセン先生ごめんなさい。


第二ゲーム、開始。

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