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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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お城に及ばれ(死刑宣告)

「――今日も大入りでしたね」

「まぁ、前回からの続きだからねぇ。聞きたいと思ってりゃあ、客も来るでしょうよ」


 後ろの騒ぎを尻目に、酒場を後に宿へと向かう。

 順調に稼げては居る。取り敢えず袋に入れておいたのが、頂いた資金で一杯になる位には大入りだ。編集さん曰く、小銭が一杯あって、お金をいっぱい持っている様に見えているだけらしいが。


「いやー、しかしこんな感じの大道芸スタイルにも慣れて……いや、初めから慣れてたか編集さんは」

「いえ。初めてだったので緊張してましたよ?」

「そう思えないほど堂々とした感じだったけどなぁ」


 まぁ、だからこそこうして大入りになった訳だけど。ホント、この人だったら小説も書けると思うくらいには有能だよなぁ。何で書かないんだろ。


「……どうしました?」

「ん? いいや、別になんでも」

「そうですか。コンプレックス刺激されたようなお顔をされていましたが」


おーこの野郎マジで可愛げないなぁ!? こういう所が無ければ……いや、この人に沢山助けて貰ってるんだからそういう事は言っちゃいけない。


「別に、コンプレックスなんてないですし……しかし、旅費は稼げてるけど、お隣さん迄どれくらいかかるのかね。旅費って。食料とか、水とかも、準備しなきゃいけないし」

「後、私が旅慣れていないのもありますね。先生は慣れていらっしゃるでしょうが」

「慣れてる、とかじゃなくて。慣れさせられているんだけどな?」


 だって、野宿なんてした日にゃあ、こっちがどういう状況かなんて関係なく手伝え、良いから手伝えお前も、だもんなぁ……やらないっていう選択肢が無いんだよ。使えるものは親も使えって感じで。


「……不本意って事を分かって欲しいんだけどな?」

「ですがその経験が活きましたね。良かったです」

「小説に生かす為の旅行の筈なんだけどなぁ!? こうやって活かすのは違うなぁ!?」


 はぁ。とはいえ、助かってしまっているのが余計に腹立たしく……


「――おお、居た居た!」

「はい?」


 なんだ? さっきの客か? 態々追いかけて来たのか? こんな所まで。随分とご苦労なこった。っと、そうなるとご用は俺じゃなくて編集さんだな。


「いやぁ、追いつけて良かった……ちょっとアンタに話があってな」

「話?」

「城でアンタの話をしたんだよ。そうしたら、皆が話を聞いてみたいって言い出して。それでアンタを連れてくる様に、言われたんだよ」

「え?」

「あぁ、覚えてなかったか? あん時来た、ホラ、四人居た兵士の中の、一人だよ! 覚えてない?」


 ……えっ?




「で? 呼ばれない、って話じゃなかったか?」

「正直想定外ですね」

「おう、言い訳があるなら聞いてやるから盛大にしてみろ」

「するだけ無駄なので、切り抜ける事を最大の目標にがんばります」


 いやー前向きで宜しい! 俺がどんどん惨めになってくる! くそっ、ピンチだと分かってる俺の方が情けないとはどういう事態なのか。こうなったら仕方ないので城のデザインを堪能する事にする。


「……我ながらカッコいい城だよなホント」

「先生と何回も打合せして作り上げましたから」

「まぁ、やっぱり主人公の住む城だからなぁ。拘っちゃうよ。どうしても」


 これを純粋な観光として楽しめたらなぁ……無理よ。だって、お尋ね者ってバレたら速攻で首が飛ぶし。


「こっちだこっち……それにしても、なんでフードなんて被ってるんだそっちのは」

「すみません。人見知りなので、この子」

「全く男らしくない。もうちょっと度胸を持たないといけないぞ、坊主」

「……すいません」


 完全な冤罪だけど、もうそれはどうでもいい。今は、自分の安全を兎に角買いたい所なんだよ。悪いけど。


「それじゃあ、この辺りで待っててくれ。隊長に連絡とって準備してもらうから」

「はい、わかりました……そういえば準備って?」

「そりゃあ、兵士を集めんだよ。慰安目的だからなぁ」


 慰安目的って、言い方しだいではちょっと危ない案件な発言な気がするのである。まぁそんな事になったら編集さん連れて全力で逃げ出す積りでいるけど。流石に知り合いのそんなシーン見たくも無いし。


「――ちょっとエッチなシーン想像しました?」

「ノーコメント。想像したって言っても言わなくても俺の心をボロボロにしていくスタイルだろう? 俺は知ってるんだよ?」


 貴女が私の事を良く知っている様に、私も貴女の事を良く知っているのだよ。舐めるなよ?


「いえ、そんな事はしませんよ。先生も男性ですし、そう言う事もあるかな、位には思います」

「あら以外。こういう弱みは付いて来るものかと」

「私を何だと思って居るんですか。全く。そんな弱みを突くような真似なんてしません」


 そうか。確かにそう言う人ではないな。真っ向から俺の休暇を勝手に使ったり、逆に俺の仕事場に、当然の如く何も言わずに乗りこんで来たりはするけど。その辺りも直してくれればなぁと思います。先生は。


「それはどうでもいいです。今は此処でする話ですよ」

「……ブレーメンで良いんじゃねぇの?」

「いえ。彼らの慰安の為に来ているのです。ここは新作を話して受けを狙います。心証は良いモノにしておきましょう。ただでさえ先生は怪しい恰好をしているのですから」


 だって顔晒せないんだから仕方ないじゃん! 兵士の人に若干『えぇ……?』って顔されたんだよ俺、そりゃあ、こんなぼろ布一枚被った布お化けだからな!


「で、新作って事は……アレか」

「アレです。大丈夫ですよ。ちゃんと詳細は詰めたではありませんか」

「そうなるまで絞り上げられたからねぇ先日!」


アンデルセン先生ごめんなさい。


尚、兵士の慰安に呼ばれる職業には個人差があります。

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