表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
17/285

創造主にお覚悟を

 アイデアが枯れる云々逝ってたけど、本当にアイデア枯れる寸前までやるとは思わなかった打ち合わせを。もう、暫く煙も出ねぇ。


「――あぁー、疲れた……深夜までやる事無いだろうが……朝起きても疲れてるってどういう事なんだよ……」

「その分結構いいアイデアが出ていると思うので宜しいのでは?」

「お前、思い切り俺を絞り上げて(物理)おいて、いけしゃあしゃあと」


 俺のさ、プライベート迄えぐって来るのよこの変態編集。ったく、疲れてるから明日にしろって言ってんのに、今日出るものは今日の内に絞り尽くすって。酷い話だよ。俺を荏胡麻か何かと勘違いしてるらしい。


「っはぁ……もう疲れた。朝日を浴びたい……」

「お疲れさまでした。何か食べたい物等ありますか?」

「とりあえず、新鮮な果実が喰いたいです編集さん」

「先日から果物しか食べてませんね先生。そう言えばご存知ですか? 動物園のおサルさんは、良く果物を食事として与えられているとか」


 ……それで何が言いたいか、はあえて聞かない。それを言われてまたぞろ文句言うのも馬鹿らしいし。ただ、何時かこの編集のケツをニホンザルも真っ青になる程真っ赤に腫れ上がらせる事は決めた。


「それが何故かというと、果物は栄養価的にもとても優れているので、それを与えるのが一番長生きする可能性があるだとかなんだとか」

「あ? え? はい」

「長生きできると良いですね、先生」


 とか思ってたらこれだよ。なんなんだろう、雑学を話したかっただけなのかなこの人。普段から俺の事虐めてくるからなぁ……分からん。


「では一緒に行きましょう。先生の買いたい物、予算の範囲であれば買いますので」

「予算が幾らあるって明確に分かるの?」

「明確には分かりませんよ。でも何回か実際に使ってみたので、ざっとは」


 はえー、やっぱり賢いなぁこの人

「……何回か払ってみるだけで分かるもんじゃないってのに普通。こちとら海外の外貨なんて、ドルすらマトモに使えないってのにさ」

「何度も海外に向かってるのに」

「現地で重要なのは金よりもボディランゲージと大使館、若しくはそれに類する何かだ」


 というか、そう言う所にしか送りこんでもらえない鬼のような所業よ。いや、待て本人の了承なく旅行に送り込まれること自体が大問題なんだよ。ここで精神的に負けるな俺。


「っあぁああああ……あ、その前にまず水浴びてこないと」

「やっぱり慣れてると思いますけど。そこで風呂じゃなくて、水浴びが速攻で出てくる辺りは」


 風呂が無い状況にも慣れてしまったのが余りにも哀しいというのは否定できない。マジで。仕方ないじゃない、風呂なんて贅沢なもの、何処にでもある訳じゃないんだから。いや現代だったら風呂は標準装備……それじゃない所に送り込まれてる俺って一体?


「いや、それがプラスに働いたと考えよう……」




「――で結局リンゴな訳だけど」

「先生が選んだんじゃありませんか。私ではありませんよ」

「だって一番喰いやすいし、美味しいんだもの……皮ごと行けるし」


 いや。バナナってあの皮の処理が予想以上に面倒な事に気が付いてしまった。ビニール袋なんて便利な物無いし、生ごみをそのままゴミ箱に……結局ゴミが出たとしても、下手の部分位なリンゴが最高な訳だ。


「芯まで食べるって、中々尋常じゃありませんよね」

「だって、勿体ないし。それこそ、飛んでった先で日本で食べてた時みたいな食事がとれるなんて稀だし」

「ここまで育ってくれて、私も感涙です」

「おう育てられた覚えはないわ。寧ろ俺が自分で育ったまであるわ」


 お陰で、人魚姫の逃走シーンとか、『えっ? これ食べるんですか!?』とか言われるようなモノ食べさせちゃったよ。逞しさの演出として。


「それを食べて『時には泥を啜らねば生きていけない』と零す人魚姫のシーンは、迫力でしたね」

「まぁね……所で、心の読み方って教えて貰えないの?」

「顔に出てるだけですから。そんな特別な事はしてないと思います」


 そんな色々と読めるような内容だったかなぁ。


「……そういや、そのシーンが出てくるのは、門破壊のシーンの後だったっけか? 人魚姫は二度目に城に出向いた時、遂に王子と激突して、互いに一撃を貰って」

「人魚姫の名前を迂闊に出さないでください。兵士が近くに居たらどうするんですか」

「あぎょっ!?」


 い、痛いなぁ……


「居る訳ないだろう! そんな、ポンポン兵士が!」

「――案外そうでもないようですよ?」


 えっ? 何を指さしてるの? ……あの四人組?


「本当にここの町なんだろうな」

「あぁ。凄い語り手が居るって。今まで聞いた事も無い様な話を、酒場で格安で話してるそうだ。その人から、脱獄野郎の話も聞いたんだってよ」

「折角の休暇にこんな、ふっつうの町によぉ」

「アイツの推し方、尋常じゃなかったし、信じて良いんじゃないか?」


 ンンンンン鎧は来てない。けど、流石にあんだけ屈強な男四人、それに話の内容から見るに間違いなく兵士の方々であることは間違いないですなぁああああ!? ちょ、待って隠れさせて! そこ! 路地裏!


「はっ、はっ、はっ……おい、兵士が増えて戻って来たぞ」

「知りませんよ」


 二人減らしたら四人になって帰って来るとかゴキブリか何かかお前ら。いや別人なんだろうけどさ。問題は其処じゃない。


「どうすんだ、休暇とはいえ、バレたらマジで……」

「まぁしょっ引かれるでしょうね」

「なんで流れる様にお代わりが来る! 折角昨日こっから追い出したってのに……!」


 くっそ、俺は創造主なんだぞ。その創造主に対して、お茶出すでもなく、ぶぶ漬けどころかチャカとヤッパ構えてカチコミに来やがった……舐めてやがる。理想の人魚姫像の犠牲に俺への悪意が向けられるとか泣くよマジで。


「同じようにやるか?」

「いえ、手品も同じネタを擦るのは下策ですし……話が目当てなら話を聞かせてやればいいんですよ。別に先生を探しに来た訳でも無いんです。堂々としていましょう、寧ろ」


 ……そんなもんなのかなぁ。そんなもんかぁ。


「ビビったら負けです。押し通りましょう」

「凡そ編集のセリフではないなそのセリフ。武士か何か?」

「異世界にいけば誰だって逞しくなるという事で一つ」


アンデルセン先生ごめんなさい。


人魚姫が何を食べていたかは、ご想像にお任せします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ