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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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チート性の方向

「そ、その話、本当か!?」

「嘘だったらアンタ等に話しかけたりしないよ。それこそ、後が怖すぎる」


 うん。まぁ、バリバリ嘘つくんですけれどもね。コレから。なんだったら嘘を吐く上手なコツ、ちょっと真実を混ぜる、的な事も一切しない真っ赤っかな嘘ですよ。だがここは俺の世界。俺の言葉こそが真実って事で一つ。許して欲しい。


「何処で見かけたんだ!?」

「アンタ、この町で見かけた以外に何があるってんだ」

「あ、いやそうなんだが……ど、何処に行ったとか! あるじゃないか!」

「あぁ? 俺が見かけたのは昨日で……白い服着てたな。で、宿屋に入ってくのを見たんだけど。その後は、なぁ……」


 見たって言うか宿屋に居ます。今、泊ってるんですよ。でもそれは謎の男ではなく目の前の私なんですよ。其処の兵士さん。


「もっと、もっとなんかないのか!」

「いや、もっとって言われても、それくらいでいいならって事で、取り敢えず情報提供しに来たんだし……どうだったかなぁ」

「頼む思い出してくれ! アンタの情報が重要なんだよ!」


 ……さて、大声は出せたけど。頼むぜ編集さん!


「――どうなされました?」

「あ……? って、お話の!?」

「しまった騒ぎ過ぎたか……っ、申し訳ないお嬢さん。えっとですね。何でも無いんです気にしないでください、その、ホント。なんでもないので」

「誰かを、お探しなんですか?」


 って事で俺は黙らせてもらいますね。


「い、いえ、ちょっと男を一人、ですね」

「……そう言えば、私も町で聞きました。恐ろしい犯罪者が、うろついているって」

「あぁ、もうそこまで噂が」

「それで、その方を探している、という事ですか。ご苦労様です」

「いえ全然、これが我々の仕事ですから……それで、宿屋に泊まっている男が、怪しいとの事なのですが」

「ってオイ!? お前何喋ってんだ!?」

「し、仕方ないだろう! 出来るだけ多くの人から話を聞かねばならんのだから……」

「だからって、誰でも聞けばいいってもんじゃ……」

「宿に泊まっている男の方……あっ、もしかして、奥の安宿、ですか?」


 目と目を合わせて。瞬間通じ合う。なんて。はいはい、こっからは俺の役割ですよ。会話の主導権は俺達二人が握る……!


「おお、そうだよ」

「私が泊ってる宿です。其方から、確か……今日の朝方に出て行った男の方が」

「そ、ソイツはどんな格好でした?」

「えぇっと、小柄で……痩せてて……ここら辺じゃ、見ない恰好をしてて」

「おい」

「あぁ。もしかしたら――どこへ行ったか、とかは分かりますか!?」


 良し、喰いついた。フハハハ! スマッシュヒットを叩きだした作者様が直々に書き下ろした騙しのシナリオよ。君達兵隊に見切れないでいただけるととても嬉しいのですが私といたしましてはお願い頼むからバレないで。


「んー、確か……海沿いの町、に向かうとか言ってたような」

「海沿い!?」

「おいマズいぞ、海は人魚姫のテリトリーだ……!」


 ――そうだ。偽装するにも、こうして物語を知って居れば……信憑性のある嘘を考える事も容易い。作品を一から全て知っている、というアドバンテージに、勝てる訳が無いのだよ。諸君。


「逃れられればもう追えないだろうという算段か! 急いで追いかけねば! 情報、ありがとうございます! おい、行くぞ!」

「っしゃあ! 待ってろよ、でっかい男になって、帰って来るかなぁ!」


 どうでも良いけど、こんな安宿に来てまで鎧来てるってのも、正にファンタジーの兵隊さんって感じで好き。そして煩い。走る時は特にガチャガチャ。


「……なぁ、兄ちゃん」

「何」

「お前さんも小柄でやせ型だよな?」

「そうだけど、ソイツとは関係ないから。変に疑うのやめて」

「まぁそうだけどよ。ちょっと気になっちまって……」


 いや、追及止めて? ここに来て酒場のオヤジに疑われてバレるとかやめて? もうちょいしたら出てくから、それまで待って? あの、今はタイミング伺ってるだけだからホント。


「――あの、店主さん」

「ん? あぁ、どうした語り部さん」

「いえ。少し、ご相談がございまして……宜しいでしょうか?」


 っしナイス編集さん。俺は案山子、俺は案山子っと。ふはは、こうして息をひそめてジッとするのには慣れてるぞ俺は。普段から室内に引き込まってるからなぁ……自分で言ってて大分虚しい気がする。


「実はもう少し、此方に通わせていただきたいのです。その、私のお話をもう少しばかりここで……と」

「へぇ!? いや、ソイツは構わねぇけどさ。なんでまた急に」

「旦那様に、昨日ここで話す練習をした後、随分と語りが堂に入った、とお褒めの言葉をいただきまして。此方のお客様にも、大分喜んでいただけたなら、もし、お酒の共代わりにでも聞いて頂ければ……」


 ――さて、そろそろ兵士君達は遠くまで旅だったかな。それじゃあ、オイラはねぐらに帰らせて盛ろうとしよう。




「――で?」

「酒場を盛り上げてくれるんだから、是非に、と」

「ひひ、ソイツはありがたいこって……アイデアを出した甲斐があるってもんだ。まぁあのレベルだったら人魚姫程のインパクトはねぇんだけど」

「この時代の人達が刺激に慣れていないのが幸いしましたね」

「そんなここの人達が初心みたいな言い方は違うんじゃねぇかな」


 刺激に慣れてるって言うのは、ちょっと違う気がするのよ。なんかアブノーマルな香りしないかその言い方だとさ。


「ま、それはいいか。コレで旅費は……稼げるかなぁ……」

「先生のアイデアが枯れるかどうかの勝負ですね」

「あーもう異世界くんだりまで来てやってること一緒!」


 違う事と言えば、最初っから編集にビシバシと変更を受ける位! あれっ!? 楽になってないね! はーこの世ってクソだわ。もういっそ風の精霊になって何も考えず漂いたいまであるよね! ホント!


アンデルセン先生ごめんなさい。


創造主の権能(唯の設定丸暗記によるゴリ押し)

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