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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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迅速な対応、キツイ時もある。

「んー……やっぱこういう所は、ファンタジーだなって思うよ」

「こうした南国の果実がある所でしょうか?」

「まぁそうなんだけど」


 説明する必要がゼロになるな―。うーん賢ぶる事が全然出来ないのよなぁ。まぁ普段からこんなんだからもう慣れたけど。ずっと自分と相手の格の差を見せつけられたらそりゃあそうしないと心の平静を保てないよね。


「めっちゃバナナだよねぇ。ヨーロッパで育つはずがないんだけどねぇ」

「青い訳でも無く黄色いですしね。とても甘いです」

「……因みにお金の方は大丈夫なの?」

「もう半分程は使いましたね。結構数はあったんですが、消費が激しいですね」

「大丈夫じゃねぇなさては」


 なにその浪費具合。初めてハワイにいってはしゃぎ過ぎた子供か何かか? パンケーキに踊らされてしまった感じ?


「ダメですね。私も異世界に来てはしゃいでいる様です。という事で一刻も早くアイデアを出して稼いでいただければ」

「はしゃいでないなぁ、はしゃいでたらそのセリフは出ないなぁ絶対に」


 速攻でアイデアを強請ってくる辺り、完全に理性極まってんな。寧ろこれは態と金を減らしてこっちから余裕を奪ったまであるぞホント。


「いえいえ。私がはしゃぎ過ぎて、そのしくじりが先生にご迷惑をかけて申し訳ないと思って居ますよ。はい」

「そう思って居るなら催促を先ずやめて欲しいんだが……?」


 それが一番先生にダメージが来るのよ。分かる?


「催促なんて、そんなそんな」

「もういいからそういうの。取り敢えず糖分とって、頭をフル回転させてるからちょっと待ってくれ」


 うーん……存在しない果実……あー、なんか降りて来そうな気がしないでも……しかし何と組み合わせればいいのか。


「んー」

「どうやらある程度は方針が決まったようですね。良かったです」

「まだ欠片程度だけどな。方針って言っても……一」


 これをどう落とし込んでいくかが問題だよ。こっから上手い事、組み合わせる要素が大喧嘩して物語が暴走した挙句寒いノリになるとか、それだけは避けないといけないし。いやぁそう言う作品を幾度自信もって出したかなぁ……


「大丈夫ですよ。先生の腕は私が保証しますから」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどなァ」

「保証できないとしても私が保証できるまで仕立て直すので」

「それ実質ダメでもどうでもいいって言ってないか? ちょっとショックに過ぎるかもしれないよ私」


 あの、編集なんだから、その、もうちょっと自分の担当する先生の事を信じてくださっても宜しくありませんかね。そんな雑に……


「冗談ですよ」

「冗談のトーンには聞こえなかったが……まぁ良いよ。俺がちゃんとウケるような作品書けばいいだけだからな。この程度じゃ狼狽えたりしない」

「その意気です先生……?」


 この人を黙らせるためにも、しっかりと作品を書かねばならぬか。うーんなんだろうやる気は出るけど凄い不本意なやる気の出し方がなぁ。って、なんでそっちの方見つめて固まってんだこの人。


「なんか面白い物でも見えた?」

「面白いというか……えぇまぁ、ある意味面白いものが」

「ある意味?」


 向こうにあるのなんて、えっと、シルバーで盾の紋章の入った見た事のあるあれちょっとおかしいな幻覚を見ているのかな?


「――幻覚じゃねぇな! ちょっ、マズいぞ隠れろ編集さん!」

「何をやってるんですか早く隠れてください先生」

「あぁん!? 素早いねぇ!?」


 い、何時の間に露店の傍に身を寄せていたんだ。なんていう自己保身の塊ムーブ。完璧すぎてビビっちまったよ。あ、その隙間に隠れろって? ありがとう。ってちょっと待って個の体勢ってグエッ!?


「あ、アンタ他人の背中に座って……!」

「静かに。箱で頭と脚は隠せるはずです。後は私の脚で誤魔化しますので」

「椅子か何か!? 俺はっ!」


 というか、露店のおっちゃん迷惑そうに……あっ、ポッケに小銭が挟まってる。コレは袖の下握らせたなさては。まったく、何と頼りになる編集さんか。でも袖の下握らせるのが速攻できるのって頼りにして良いのだろうか。何も分からない。


「――ったく、本当にここら辺の町に居るんだろうなぁ?」

「一日しかたっていない上に、あの男、見る限り歩きなれている様な見た目ではなかっただろう。絶対にこの辺りで休んでいる筈なんだ」


 こ、この野郎! 編集さんだけじゃなくてお前らまで貧弱と申すか! 俺を!


「好き勝手言って」

「黙りなさい」

「オゥエッ……」


 か、かかと。かかとが、みぞおちに。まじで、ちょ、食った中身が溢れる。痛すぎる。ヒールじゃないだけまだマシだった!


「静かにしてください。バレてまた牢屋送りになりますよ」

「す、すみません。黙ります」


 そして編集さんの声が完全にブチ切れてる。だめだ。ジョークの通じる状況でないのは分かるが、それ以上に編集さんの声が怖すぎる。冷たいよ……冬の山の雪並に冷たい。反抗する意欲を根こそぎ持っていかれる。


「……」

「……」



「ったく、その割には見当たらないけど」

「この辺りに居る、というだけだ。他の町にも聞き込みの兵は行っている。そっちで見つかる可能性もある。それに、間違いなく隠れてるだろうよ。見つかりたくないんだろうし」

「はー……それをこれからしばらくここらへんで張って探すのか? ……うわっ、良い女」

「何を言ってる。集中して働け。早く帰りたければな」



「……行ったか?」

「良かったですね。バレてませんでしたよ」


 あぁ、肝が冷えた。しかし本当に視線を編集さんが吸ってくれてたのが草でしかない。どいつもこいつも美人と見れば目の色変えやがって。全員性欲の獣かさては? 兵士としてそれはどうなんだよ。雄としては正しいだろうけど。


「所で結構疲れて来たから、ちょっと、下りてくれないかな」

「重いって事ですか? 女性にそんな言い方をするなんて、セクハラですね」

「いや赤ン坊だろうと女性だろうと人が上に乗ってりゃ重いだろうよ」

「先生はそう言う所だと思いますよ」


 どういう所だよ。おい、止めろ蹴るな。何で蹴る。ちょ、ヤメテ。痛いから、あの、部屋に帰る前にグロッキーになるから! ストォップ! あっ、また変な所入った! 中身出るって!

アンデルセン先生ごめんなさい。


体格差二倍にも迫るレベルの相手に座られるという割と苦行。

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