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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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頭を沸騰させたみたいなアイデアを

 ――まて、先ず落ち着いて考えろ……先ず、気にするべきは何処を直すかじゃない。ここからケツまでどれくらいだ?  


「……相当短くないか、時間的に」

「凡そ五分内。今までで最短のシンキングタイムですね。絶望の福音が鳴っていらっしゃいますけど、先生。いかにして乗り越えて参りましょうか」

「ほーんとどうしましょうかね……!」


 今回のネックは、時間と縛りを踏まえての介入しにくさにある、というのは余りにも分かりやすいからなぁ。アレだけの人数が大人数で大捕り物してる所に殴り込みをかけたら間違いなくお縄。だからと言って、五分で状況がリセットするんだ。


「先ず大仕掛けは無理。しかし直接介入も無理。そもそもこの状況にどうやって変化を加えてやればいいってんだよ本当に」

「極端な話、この状況って接触するのを阻止するかしないかの二元ですからね」

「そうだよ。でもって本来の流れが彼女が接触に失敗するって言うんだから、それを変える訳にもいかんし……いや本当にどないせいっちゅうねん。人魚姫と王子の時は痛み分けだったからまだ何とかなったんだぞ。曖昧な感じだったから……」


 しかし、今回人魚姫は……っ! 完全に負け筋を引く事になっている! この負けを覆すのは、絶対に展開の粉砕……! 許されない、間違いなくループ確定! こっから更なる見所を持ち込むとは!


「どうやれば不自然にならない展開に出来る……!?」

「前回の様なヒント形式で、自分で行動させる、とか」

「アレは実に単純な……彼女が愛情表現を知らなかったからこそ、愛情表現の一つを見せればそれを即実行に移す、っていう確証が有ったからこそだし。ヒントだって俺達に出せる簡単な物だったからなぁ」


 しかし、今回はどうやって何を彼女にさせればいいか。そもそもそんな単純なヒントを出してどうにかなるものか。そしてそれを見せても彼女が実行に移すか。三重苦だよ。厳しい厳しい。


「もっと別の方策を考えよう。この際、何ループでもする積りで行くぞ」

「了解しました。とはいえ、上限は決めておいた方が良いかと。考えすぎで何処までも行ったら、それこそキリがなくなりそうですし」

「全くもってそれはそう。どんなゲームだって、止まるタイミングを見つけないとマジで止まらなくなるから危ないからなぁ」


 時間泥棒的なゲームは特にそう。お陰で原稿を落とした事は数知れずという悲しみの記憶がドバババババッ、と。因みに何が恐ろしいかって言えば、それで原稿落した時に、編集さんから課される課題が恐ろしすぎるのだ……っ!


「……ツボ……ケトル……果てにはチーター……あががっ……時間がっ、時間がもったいないんだ……! 許してくれ……!」

「それは先生が愚かな行いをしてたのが悪いんですよ」

「なんでわかったの!?」

「口から出てましたよ先生」

「嘘でしょ!? やべぇ、そこまでトラウマだったか俺……!」


 無意識化だった。い、いやそれでも不思議じゃないぞ俺。何が厳しいって、あのゲームをRTAしつつ規定回の周回、しかもそれが修羅に片足突っ込みかけた回数を……もホント、あんな無為な時間過ごすくらいならせめて小説書いてたいと思いました


「全く、ゲームにはまって原稿落しかけるとかジョークにしても寒いんですよ。それだけ熱中できるのであれば、精神修行にでも生かした方が良いでしょうし」

「うーん正論of正論ですなぁ。でも野球の育成系ゲームとか、アレとか何時までもやっちゃうからしょうがないやんけぇ……許してよぉ……」

「許す訳ないでしょうが。と言うか何で投手ばっかり作ってたんですか先生」

「仕方ないじゃん。俺がノウハウ持ってたのって投手育成の奴だけだし。野手の育成って面倒くさいし……」


 後ボールを剛速球で投げてあらゆるバッターを一刀両断するようなそんな正に浪漫の塊と言うか……それこそ小説に書くとすれば野手より投手の方がやりやすいですし。それこそ人魚姫みたいな投手キャラ作ったり……ん?


「……人魚姫……闘魂の一発……ふむ……」

「何か思いつきました?」

「一応、としか言えないけど」


 上手く行けば多分だけど、人魚姫がちゃんと敗北しつつも、しかし見せ場をガッツリ作るといういいとこどりが出来る、的な。


「流石先生、フィクサーの鏡。それで実行可能かどうかは如何でしょうか」

「あ其方を問われますと、えー私個人の見解、では、えーございますが。ひっじょうに困難かと思われますけど」

「ダメじゃないですか。その喋り方の時点で残念な香りしかしませんよ」


 ちょっとダメな政治家風おじさんの喋り方。信用度はダウンする。実際そうなってしまうレベルで荒唐無稽な案ではあるので仕方ない。正直、どうやって人魚姫をそういう心境に持ち込むかって言う話。


「とはいえ、何もないよりはマシだと考えましょう。話してください」

「あー、うん。分かった。えっと、先ずはだな……」




「――と言ったような感じだよ」

「馬鹿ですね。控えめに言って。()()()()()()。ここまで馬鹿なプランは本当に貴方しか出せないと思いますよ。個人的な感想になってしまいますが」

「そ、そこまで言う!? ちょっと俺ショックなんだけど!?」

「事実ですから。ご自分では賢いプランだと?」

「いえその様な事は全くもって」


 だって、思いついちゃったから、言っただけだし。何も深く考えてないし。こうなれば多分物語的に面白いかな、って思っただけだし。


「――ですが、それでいいのかもしれません」

「……なんだよ、おべっかは要らねぇぞ」

「こういう、『コレは流石に馬鹿すぎるだろう……』っていうプランを出せるのは先生の強みですよ。それに、実際これが起これば、間違いなくこのループだって突破できるはずですよ」

「……見所になるって?」

「このプロットを提出されて居たら、私は間違いなく一発オーケーしてました」


 そこまで?! わ、我ながらひっどいもんだなぁ……とは思ってたんだけども。そこまで言われるとは露程も……そんなに刺さりましたか編集さんには。自分でも面白いと思ったからこういう案を出したってのは間違いないけど。


「しかし、どうやってこれをどうやって実現させるかって言う話だ。我ながら正気の沙汰じゃないんだよなぁ」

「正気の沙汰でやっていける程、この浮世は生ぬるくなんてないですよ。乗り切っていくためにも頑張って詰めていきましょう」


アンデルセン先生ごめんなさい。


デカイ振りで自分を追い込んでいくスタイル。

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