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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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ケダモノとは呼ばないで

「無茶はするな! 取り敢えず一点に追い込めさえすればいい! 相手は此方から逃げるのを優先する筈……! それを利用しろ!」

「しかし先程は反撃されましたが!?」

「アレは近づき過ぎだ! 着かず離れず、鼻の利く獣を相手取っていると思え!」


 一応美女を相手にしてる筈なんだけども、まさかの鼻の良いケダモノ扱いである。自分的には一応綺麗なお嬢さんとして設計したから、ちゃんと女の子として扱ってあげてください。メスって呼ばないであげて。


「良いか! 王子とこの国の姫が接触している間、其処に接触させさせなければ此方の勝ちだ! 松明の灯を絶やすなよ! 奴は海の住人だ、火には慣れていない!」

「了解しました!」


 ……本当に対処がケダモノに対するそれだなぁ。火で追い立てて着かず離れず包囲しつつ最後には捕獲する……いや捕獲は無理だろうから、なんだろう。何とか、追い出す的ななんか。うん。そんな感じ。っていうか、相当集中してるなぁ。


「見てる俺達に全く気が付いてないって言う」

「最初は気が付きそうだから、遠くから眺めるだけで済まそう……とか言ってたのが、結構こうやって近寄っても、気が付いてませんよね」

「あの兵士さん完全にこっち無視してるっていう。目の前の事に集中しすぎだよね」

「今から彼を捕獲して、もっと近くで見てみますか?」

「そんな事したら向こうの騒ぎに巻き込まれるからやめよう。危ない。まぁ、それに」


 流石に兵士君が哀れだよ。大通りから逃がさないように松明を構えてるんだろうけど、そうとう怖いんだろうね、鎧が体の震えに呼応してガタガタガタガタ若干耳障りな金属のこすれる音とミックスされた微妙に不快なBGMを奏でてるんだよね。


「多分後ろからわっ! とかされただけで気絶するだろうと思うんだよな。そこまで追い込まれた相手をどうにかするのはちょっと、なぁ」

「……私もそれでちょっとアンモニア臭くなった鎧は見たくありませんけど」

「いやそこまでは言ってないのよ俺は」

「液体じゃなくて身の方が出てしまったら更にアレですし」

「おう止まれ、その先は本当に地獄の沙汰だぞ……!」


 他人の尊厳を粉砕していく発言をするのは止めて差し上げろ。頼むから。


「とはいえ、物語通りと言えばそうなんだけど。俺は人魚姫をケダモノとか表記した覚えはないんだけどなぁ。これもバタフライエフェクトか……」

「なんというしょぼくれたバタフライエフェクト」

「それは俺も思った。なんだったらこれをそう呼んでいいのかは分からない」

「そもそもバタフライエフェクトではない可能性」

「俺が勘違い野郎の可能性もあるって事か……」


 なんかちょっと悲しくなってきたぜ……いや待て、それで凹んでる場合じゃないな。今はこの状況をしっかり観察しないといけない。重要、と言えるかどうか分からんが原作イベントの一つだからなコレは。


「騎士と人魚姫の最初の激突と、王子と隣国の姫の邂逅。後者は間違いなく見れないから前者だけでもって事で。ね。いやぁ凄い迫力だけど」


 あっ、今一瞬見えた。って言うかマジで隊列構えて松明構えて追い込んでて草も生えないんだけども。完全に山狩りの雰囲気だな。


「――っち! どいつもこいつもボーボーボーボーと! 鬱陶しい!」

「油壷を投げろ! 動ける場所を制限して動きを止めるのだ! 足元を封じれば自慢の蹴りも満足には使えんだろう!」

「そんな!? ま、街への被害は!?」

「地面に叩き付ける事を意識しろ! 地面だけを狙えば、それだけで大分被害を抑えられるだろう! それと、火が付かない様に最大限気を付けるんだ! 民家に火が付いたら其方の対処を優先!」

「「「了解!!」」」


 ……ふっ。


「出ましたね問題発言。町中油壷放火犯」

「だから違うんだって……コレに関しては編集さんも賛成してるでしょうがよ! 油壷投げるって言った時ノリノリだったじゃねぇかよ!」

「えぇ。クレイジーな方が皆さんも楽しんでいただけると思ったので」

「それで届いたお便りが『町中放火パーティ楽しかったです!』『町中油壷放火犯とかやはり発想が蛮族』とか言われてちょっと凹んだんだよ! 大分さ! ショックどころの騒ぎじゃねぇよ!」


 一部はチャッカマンとか言ってやがったよ!!!!!! 反論の一つでもしようかと思ったけど傍から見ればどう足掻いても放火魔には変わりないと申しますか。確油壷ぶん投げて制圧しろはやりすぎな気がしないでもないと申しますか。


「一応は、人魚姫は火に慣れてないっていう弱点を突いて、彼女を追いこむ為の手段な訳だけど。それにしてもやっぱり油壷ボーン! 火をバーン! はダメだったのかなぁ流石にうーん……」

「小説なんてハジケてナンボですから宜しいのでは?」

「うーん取り敢えず純文学の巨匠の方々に誠意ある謝罪をだね……」

「芥川龍之介、夏目漱石、宮沢賢治等、巨匠の作品は色々弾けていらっしゃいましたど」


 ……某鉄道……ちっちゃな頃から無鉄砲……お婆ちゃんから……うぅぅぅううううううううん……んんんん、あー、成程ね。はいはいはい……


「謝罪をするのは些か早かったかなぁ」

「そうですよ。という事で、私達も自分達の仕事をしましょう」

「ま、仕事なんて大層なもんじゃなくてただ見てるだけなんだけども」

「見てるだけの仕事も存在しますよ。多分ですけど」


 いや、往々にして見ているだけの任務は無いよ。見て、それを報告するだとか他に何かしら付属してるよ。


「これだって、見てる事が本質って訳じゃ……って! 動いたぞ!」



「悪いけど、もう付き合ってられないよ! じゃあね!」

「くっ! 待てっ!」



「えぇ。跳びましたね。彼女」


 で、火で追い立てられて、数も多い。状況をみて、彼女も流石に旗色がちょいと悪くなったと悟って、撤退。彼女は常人相手に初めての敗北を喫する事になる、って感じの流れだったはず。


「で、今決着がついたと?」

「そ。もし何か来るとすれば、この辺りじゃねぇのか、とは思うけれども……」


 しかしここに見所を作れって言うのは、結構無茶な話にならねぇかなぁ。書いた本人が言うのも何だけど、ここの人魚姫を騎士が追い込むこのシーン、実に良く出来てたと思うし、文句の付け所も――


「――無茶はするな! 取り敢えず一点に追い込めさえすればいい! 相手は此方から逃げるのを優先する筈……! それを利用しろ!」

「しかし先程は反撃されましたが!?」

「アレは近づき過ぎだ! 着かず離れず、鼻の利く獣を相手取っていると思え!」


 ……そっかぁそっかぁ。ここに作れってか。更なる見所を。って言うかちょっと待って短くない!? やり直すのこっから!?


アンデルセン先生ごめんなさい。


長いだけでは無く、今度は短くしていくスタイル。

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