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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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自世界ロードマップ

「……で? 俺を童貞呼ばわりした事に付いて弁明はあるかこのヤロー」

「そんな些細な事より、落ち着ける場所に来たのです。漸く状況の分析が出来るのですから、建設的な話をしませんか?」

「おおそうだな姉上様よぉ! 弟は姉には敵わねえもんなァ!」


 話を聞く気がないくらいで、俺は別に落ち込んだりしないしー、全然平気だし―、想像できる事でそんな落ち込んだりしてたら心が持たないからね! 辛くないもんね!


「――っはぁ……なんで異世界一日目がこんな夢も希望も無い様な安宿からのスタート」

「異世界召喚即生贄、の勢いの主人公さんもいらっしゃいますし、恵まれている方ですよ」

「ああそうかい! はー……とはいえこうして憎まれ口叩けるのも、アンタがしっかり稼いでくれたからか」


 その辺りは、流石に感謝しておかないと恩知らずみたいな感じになるからなぁ。


「いえいえ。皆様が夢中になって居たのは、先生のハジケたアイデアがあってこそです。流石は先生かと」

「さっき迄人の小説の腕を貧弱、とか言ってた奴の言葉とは思えんな」

「嘘も方便ですので」

「それ上手い事嘘を利用した時に使う言葉であって、嘘を正当化する言葉じゃねぇぞ」


 分かってやってると思うけどこの人の場合。まぁ、それは良い。気にしても俺の意図か五臓六腑にダメージが行くだけだ。


「で」

「えぇ、一度落ち着いた所で、ここで何を最優先にするかを話し合うべきかと。ここは私達の知っている常識の通じない世界なのですから。せめて方針程度は」

「……まぁ、ねぇ」


 正直、俺としてはこの世界を観光! とか呑気していたい気もしないでも無い。だって折角小説の世界に入れたんだから、色々見て回りたい所もあるよ。


「とか思ってそうなので、私が引き締めないといけませんし」

「なんか俺の心を読む秘訣とかあんの? 教えて? 対策するから」

「先生には無理だと思うのでやめておきます」


 はーこの編集はホントはーっ! というか、そんな秒速で否定しないで、ちょっとくらい夢を見させてくれたっていいじゃないか。折角の異世界……じゃねぇけど自分の書いた小説の世界だけど。その中に迷い込めたんだから。


「とはいえ、単純明快ですけど、方針なんて」

「そうですか。で? その方針とは?」

「書いてください。兎も角書いてください。銭を稼ぐにはそれしかないんですから」

「まぁそうでしょうな。うん。知ってた」


 なんか、この世界の事を良く知ってるからこその知識チートとかをする訳ではなくあくまで俺は小説を書けと。異世界に来てまで俺には休みを一切与えないつもりとほうほうなるほどね?


「とはいえ、ここでずっと生活する訳にもいきませんし……一応先生が此方に永住したいというのであればお止めはしませんが」

「いや、流石にそれはちょっと……まぁ、テーマパークみたいに楽しむのもありではと思わないでもないが。それにしても現地でサバイバルは」


 現代っ子には、ちょっとあまりにも、きついというか。いや、自分の理想のヒーローが活躍している場面を目の前で見られるのは正直、感動したし、楽しいけれども。


「でしょう? 先生もそうですが、私も……この世界で生活するなら、まぁフカフカのベッドの上で友人や仕事仲間に看取られながら大往生するのが精々です」

「いや随分図太く生きてるなぁその想定!?」


 さては『私はまぁ……有能ですけど先生は、ね?』的な煽りだなそれは。現状確認も兼ねて煽りに行くとか自覚してやってますねこれは。此奴、出来るじゃねぇか……


「という事で、方針としてはお金を稼ぎつつ、各地を旅しつつ、情報を集めるのが良いかと」

「旅なぁ……まぁ、慣れてるっちゃ慣れてはいるけど」

「あらそうですか? インドア派の先生が珍しい」

「アンタが言う? 未開の土地に何度も送り込んでおいて??????」


 何度俺が『今回ばかりは俺の命運も尽きたか……』と思ったか。というか初回からしてインドの空港に説明ZERO放置とかいう鬼畜具合だからな。


「取材旅行ですし、折角ですし思い切った所が良いかな、と」

「おうその思い切りの所為で俺は何度も現地人と恥を捨てたボディランゲージをして、現地の謎の友人ジョージを作って彼と今でも連絡を取ってるんだよ。それを自覚しろ?」

「ジョージさん今何してるんですかね」


 分からん。エジプトでマジで詰みかけた時に応援に来て貰った以来あってないけど、確かラインには『リアル人魚姫を探して来るぜ!』という謎のメッセージだけが……はっ、もしか今回の原因はジョージ!?


「まぁ、冗談は兎も角として。旅をして、こっから出る当てが見つかるのかね」

「見つからなければここで永住が確定するので、その辺りは考えなくて宜しいかと」

「そのオールオアナッシング精神止めない?」

「予備案なんて考えるだけ無駄です。こんな常識の通用しない状況で。全部アクセルベタ踏みじゃないとおいて行かれますよ」


 ええい正論で殴りかかってきやがって、正論ってすっごい痛いんだぞ。しかしその割にアンタには一切の正論が通じないというか、正論ぶつけても割とサラッと流されて終わりっていう。


「それで先生、この世界の物語の事、どれだけ覚えていますか?」

「舐めるなよ、原作者だぞ……と言いたい所ではあるが、アンタと喧々囂々やりながら書いてたから、自分の頭に残ってる奴がちゃんと設定として合ってるかは分からん」

「それでよろしいので、確認させてください。この世界は、確か王子の居る王国、そして人魚姫の居る海の陣営、そして王国の隣国の三つの陣営が居たと思うのですが」

「そうだよ。大分シンプルになったけどな」


 本当は陣営8つくらい分かれて楽しい事になる筈だったのが『関係図が面倒くさくなるのでシンプルにいきましょう』の鶴の一声で終わったからね。そう、初めは群像劇の予定もあったんだよ。第一次アンデルセン大戦みたいな……


「そうですね……となれば先ずは隣国に向かうべきでしょうか」

「なんでさ」

「お忘れですか? ここは、あの城から近い町ですよ」


 そうだな。というか、そんな遠くの町まで歩いてに行けるような体力してないな俺は。


「のんびりしているとあの兵隊さん方、この街まで足を延ばしてきますよ?」

「……はっ?」


 えっと、それは、一体どういう……ことなんでしょうか? お嬢さん。


「ちょっと考えれば分かりますよ。兵隊さんも人間です」

「はい」

「人間ならば娯楽の一つも欲するでしょう。それで彼らが来るのは近場の酒場がある場所。すなわちこういう町ですよ」

「……ほ、ほーん? 成程ね?」

「そもそも貴方が逃げ出した事を城の皆さまご存知でしょうし……追いかけてくる可能性も、それはまぁ十分に」

「よっしゃ隣国バンザイ! 隣国サイコー!」


 そ、そうだった……自覚は無かったけど、俺って未だお尋ね者だったんだ……! こんな宿にのんびり泊まっている様な状況じゃなかったの!


「という事で、先ずは先生の安全を確保しないと」

「あぁぁあああなんてこった……心の安全も確保しなきゃ……」

「えっ?」

「必要ですか? って顔するんじゃねぇよ!」


アンデルセン先生ごめんなさい


そりゃあ牢屋から逃げ出せばお尋ね者ですよ

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