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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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こわいおっさんたちに囲まれて

 さーて、店内を見回してみれば、左から、強面さん、チンピラさん、一つ飛ばして破落戸さん……ふーん? ふぅぅううううううん? そうか、今から俺はこの集団にカチコミをかける訳なんだよね。


「良し帰るか……っていやいやいやいやアカンアカン……! ここで逃げてもなんにもならないぞ俺……頑張れ俺……!」


 確かに凄い怖いお顔の人しかいないかもしれないけども! けど話してみたら案外良い人かもしれないじゃないか! ニコニコ笑って優しく此方の質問にも答えてくれるかもしれないじゃないか……!


「よ、よーし……行くぞ俺……ビビるな俺……そんなに怯えてたら負けだぞ俺……そうだ俺なら出来る……俺、俺、俺……!」

「何不審者みたいな事言ってるんだいアンタは」

「ゆ、勇気を振り絞ってるだけだから。見逃してくれ女将」

「いや見逃すもクソも無いよ。ただ怪しく見えてるよってだけで」


 それはそうなんだけど仕方ないじゃないか。男の子だって怖かったら挙動不審になりながら必死こいて覚悟決めようと子ウサギちゃん染みた事になるんだよ! 実は度胸とかは女性の方があるんだよ知らなかったか!?


「あ、あの……女将から見て、誰が一番安全そうですか?」

「あぁ? 何の話だい」

「ちょ、ちょっと、あのテーブルのゴツイ男の方々に話を聞く様に、ちょっと、命令を受けておりまして……それで」

「命令って、誰の配下だってんだアンタは」


 多分編集さんの奴隷じゃないかと思います……それは兎も角、恐らくこの店について一番詳しいのは女将だと思うので、先ずは女将から誰に話を伺うべきかと。なぁなぁ女将さん女将さん。怖くないのは誰でしょね。


「……いやぁ、どいつもドッコイドッコイだよ」

「えっ?」

「あの辺りの……ハゲの座ってるテーブルあるだろう? アレだって、結構腕っぷしで稼いでるような輩さ。悪い奴じゃないけど、アンタが言う怖い、というか、気性の荒さで売ってるような奴らだよ」


 あっ、そうですか。女将の言う通りでしかない。そりゃあ強面で気弱だったらそりゃああんまり頼りにならなそうになっちゃうし、そりゃあ強く出てぶん殴る、くらいの勢いじゃないと使い物にならないだろうよ。


「本当に、えっと、マシな方はいらっしゃいませんか……?」

「いらっしゃいませんよ。それと話を聞きたいなら、機嫌良さそうに飲んでる今しかないと思うけど。アンタみたいな青瓢箪、アイツ等にとっちゃ一番気に入らないタイプだろうから。普通の時に絡んだらぶっ飛ばされるのがオチだよ」


 さ、さようですか……ここで話を聞くのが一番マシ、だと……良し、覚悟は決まった。先ず、何方さんのテーブルから行こうかな。うん。よーし、後が怖くならないようにここは一番強面のお兄さんのテーブル行こうかな!


「あのぉー……すみませんお兄さんたち、ちょぉっとお話聞かせて頂けませんかね、お兄さん方。すみませーん」

「あぁん!?」

「あっ、すみませんんなんでもないです……失礼いたします……」


 こ、怖いっ……! ダメだっ! 勇気を出しては見たけどダメだった! 俺では恐怖を乗り越えられなかったんじゃ……仕方ない、なんとか、イイ感じに話を聞いてくれるレベルで機嫌の良い人達を探しに行こう!




「あぁん!? 気持ちよく飲んでるのにんだぁテメェ!?」

「はい大変申し訳ありません……帰ります……」


 ……む、無理だ。これで、もう門前払い三テーブル目だ。どの席のおっちゃん達も迫力があり過ぎる。なんとか、ギリッギリ話が聞けたところは全部空振り、締めて六テーブル……こ、心が折れそうになって来た。


「というか、なんで今日に限ってこんな、気性の荒い人ばっかりしか居ないんだろ……」

「アンタが情けない声出して声かけるから余計に煽ってるんじゃないのかい? 酒飲んで出直して、気持ちが陽気になれば話も違うかもしれないよ?」


 成程。一理あるかもしれない。はなっから怯えた声かけられたら誰でも良い気分にはならないだろうし……しかしながら、そう言う事なら良し飲むぞ! とはならんのよ。それで突っ込んで、陽気になった挙句、勢いで殴りあいにまで発展したら死、なのよ。


「……と言うか女将、要するに俺から注文捥ぎ取りたいだけでしょ」

「あらバレたかい?」

「いやそりゃあそうだろうよ。この店の中でロクに注文一つもない客だ。そりゃあアンタここに何をしに来たって思ったって仕方ないというか」

「いっちまえば、まぁその通りさ……けどまぁアンタとあの連れ合い……姉弟だっけ?」

「(なるほど、結局姉弟って事にしたのか……)そうだよ。なんか問題あるかい?」

「いや、似てないな、と思っただけさ。顔と言い、性格といい。どっかしら似てても不思議じゃないんだけどねぇ」

「あー、なんだ。姉弟が似てないといけない、なんてのは偏見って奴だぜ女将」


 ま、実際姉弟じゃないしな俺ら。寧ろ似てないのは当然だし、そもそも合理性と冷静さ全鰤みたいなあの人と、感情爆発タイプの俺じゃあ似てる部分なんて欠片も無いだろうしなぁ。


「ま、不出来な弟で申し訳ないというか」

「……」

「……なんやねん。なんで此方をじっと見る」

「いや、出来が良いのは確かに向こうの方なんだろうけどね……私は、どっちかとアンタの方が気に入ってる、というか、向こうはあんまり……悪い子じゃないんだけどね」

「あらそうなの? いやぁ、そう言って貰えると悪い気はしないなぁ」


 誰も彼も俺をダメな男としてか見てないし。まぁそうしないと最悪投獄迄あり得た訳だから仕方ない、とは思ってるけど。それにしても、ひそひそ話やら何やらで噂の的になり続けるのはそう楽なもんじゃない。


「……そうだよねぇ。これが普通だよねぇ」

「普通? そりゃあ俺は普通の一般男性だけども。それがどうかしたの?」

「アンタが一般なもんか。そりゃあ向こうも同じだけど」


 ……なんとも歯切れが悪いというか。


「何、姉さん……が、どうかしたの」

「……なあに。単純な話。美人だし、賢いし。あんな出来た女はそうはいないだろうってはのは分かるんだけど。私にゃ、ちょっとあの子が、宝石のように見えるだけさ」

「宝石? 宝石みたいってのは誉め言葉じゃないかい」

「そうかねぇ。人にする誉め言葉としちゃあ、ちょっと合わないと思うけどねぇ」


 ……んー? って、お。編集さんの方は終わったみたいだな。こっち来た。


「お待たせしました……終わりましたか?」

「いやすまん終わってない。迫力に負けた」

「でしょうね」

「おい」

「とはいえ、何人かは話が聞けたと思います。聞けなかったところにもう一度行きましょう。私が居れば口も軽くなるでしょうし」


アンデルセン先生ごめんなさい。


尚囲まれてはいない模様。

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