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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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敵の敵を味方に

 考えてみりゃあ、単純な話だった。

 有能さを疎まれて左遷されるくらいには、有能だった……しかし、それだけ有能なら自分が疎まれている事ぐらい分かっていた筈。それでもなお、僅かにも妥協しなかった。


「だからこそ王は、彼を人魚姫の所に送り込んで、自分の手を汚すことなく始末しようと考えたわけで……そこから考えりゃ、他にも何かしらトラブルを抱え込んでいても、なにも不思議じゃねぇってか」

「まぁ、要するに融通が利かない、と言うタイプですね」


 融通が利かない、って言うのは、別に悪い事ばかりじゃない。裏返せば一度公と決めれば曲がらないという事でもあり、約束すれば絶対に守る、信頼のおける人間ではあるがしかしながら、人間関係に難を発生させるのは間違いない。


「成程な。そりゃあ致命的なウィークポイントだ」


 自分が書いたキャラながら、能力ばかりに気を取られてしまっていたのは否めない。しかし、その弱点が見えてしまえば後は容易い。


「ふふ、後は居場所を特定して、ピンポンダッシュならぬドアドンダッシュをしてご近所さんとの関係を悪化させて……!」

「小学生の嫌がらせですか。そういう人間関係の悪化を狙ってるんじゃありません」

「なにおう!? ご近所トラブルってのは案外バカにできないんだぞ!」


 ゴミ出しの日にちを間違えた時のご近所さんのあの冷え切ったあの視線……思い出すだにゾッとする。歴戦のネット煽り厨とて、あの視線に晒されれば煽りどころか自ら腹を差し出して降伏するだろう。


「あ、違うんですよ……ホント……間違えちゃっただけで……」

「……そういえば。前に一度、様子を見に行ったら、部屋の隅で子ウサギの様にガタガタ震えていましたが、もしかして原因はそれですか」

「ホント、第三者の蔑む視線てクるのね」

「散々ぱらあんな作品書いてアンチもそれなりに居るというのに何を今さら」


 アンチは良いんだよ! 別に! 文句の内容が次の作品に行かせたりするから! 寧ろ作者としては『あ、其処を直すのね』っていうのも分かって万々歳だよ!


「それは兎も角。そんなご近所トラブル程度で折れるような情けない精神構造してたらご自分で真っ先に挙げてるでしょうに……」

「うん確かにそれは情けないとは思うけども、いや、繰り返すけども案外ご近所トラブルって怖いんだぞ!? ホント、引っ越しそば一つであんな……違うんですよ、別に流用したって訳じゃなくてですね、あの、えっと……」

「すいません。一々何かを思い出して落ち込むのは止めて頂けませんか」


 ぐっ、ご近所トラブルを舐めんじゃ……と言いたい所だけども、まぁ、冷静に考えてみればご近所トラブルでビビる様な騎士様なんて、それこそ見たくはないなぁ。うん。


「兎も角、焦点がズレてますよ先生。人間関係を突いて相手を弱らせるのではないです私が言いたいのは」

「えっ、違うんですか?」

「そうですよ。人間関係の問題に漬け込んで……彼を出し抜くんです」

「出し抜く、ですか」

「そうです。人格者と言うのであれば、味方も多いでしょう。しかし光あればまた影もあるのが現実。自分の考えをそう簡単に変えられないのであれば、多少不満に思って居る方もいらっしゃる筈です」


 あー成程? そう言う方に協力を要請する、的な……ほうほう。俺達だけじゃダメだから現地の方に協力を仰いで、その上で出し抜くと。


「……いや無理だろ。幾ら不満を持ってたってそう簡単に誰かを陥れようって気にはならないんじゃないかな、流石に。なぁ」


 そりゃあ恨みつらみで行動する輩は、多分そりゃあいるかもしれないけど。そんな誰かも分からない様な相手に唆されて恨みを晴らすような、誰も彼もがそんな事してたらこの世は極悪の巣窟になっちゃうよ。


「いいえ、無理ではないと思いますよ?」

「どういうこった」

「彼が先生の言う通りの人間であれば、恐らく、間違いなく何人か恨みを持っている人は居る……またはこれから出来る、と思います。それも、何度も。だと思いますけど」


 何度もぉ?


「あのなぁ、人格者ってのは、そんな問題を起こす様な人物じゃあ……」

「えぇ。問題を起こすのではなく、問題を解決する側だと思います」

「解決する……」


 何か問題が起きれば、即座に仲裁に入る。そりゃあ、自分の王にすら見過ごせず色々諫めようとしてる辺りを考えりゃあ、そりゃあ町での軽いトラブルにだって色々口出しするだろうし……?


「――あっ」

「それこそ、自分とは正反対の乱暴者や、チンピラの類を見過ごせず、そして妥協せず仲裁している可能性は……キャラを書いている先生が良く分かっていらっしゃると思うのですが。如何ですか」

「それで、あの騎士を疎んじてる奴は、必ず」

「そしてそう言った輩であれば、可能性はあるのではありませんか?」


 悪さをして諫められた人物が、それだけで改心する程、この世の中は甘くない。どこぞのパンとばい菌も、ばい菌が速攻で改心してたらあそこ迄続いちゃいなかった……そう考えるとアイツもアレだけ天の彼方までフッ飛ばされて、それでも尚って頑固だよな。


「流石に襲ったり、という事は頼めずとも、『彼に一泡吹かせたいから、何かしら虚偽の証言をして欲しい』と頼む位であれば……?」

「普通に頼めるかもしれない!」


 す、すげぇ。めっちゃ現実味のあるプランがこんなにアッサリと! 改めて、あの騎士のモデルにこの人を選んだのは間違いないと思う。ちゃんと思考して、現実的に出来そうな範囲を見極めてプランを立てるってのはシンプルに難しい。それを……!


「い、行ける! これならいけるぞ! スゲェ!」

「いえ。別に普通の事だと思いますけれど。方向性を思いついたのであれば、この程度は思いついてください先生」

「あっは……い、いや。人となりを知っただけでそれだけ考えられる貴女が凄いのよ?」


 ここは負けちゃいけないぞ俺。冷静になれ。


「……そうでしょうか」

「そもそも、最初っから編集さんが考えてたほうが……」

「いえ。それは無いと思います。私では、恐らく騎士のキャラクターから……そこまで導き出すのは無理だったと思うので」

「そうかなぁ?」


 ――まぁ、今はそれは良い。方針は決まった。先ず、俺達がある程度自由に動けるようにする為に、地盤を固める所から始めるんだ!


アンデルセン先生ごめんなさい。


一回、部活で注意した相手から、エライ恨まれてた事があります。

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