大胆な発想転換
「そもそも、王と騎士の二人が連絡を取り合う方法は書状だ。それは間違いない」
「確か、最初は密偵に言付け、とか言うカッコつけた感じでしたよね」
「おう的確に刺して来るんじゃないよ……!」
正直カッコつける積りで……いや、なんか密偵が物語の裏をいろいろ飛び交ってるとかカッコいいじゃんか! 邪悪なフィクサーの放つ、悪辣な密偵にかき回される盤面……良い感じじゃないの!?
「好きな人だっているでしょうに!」
「好きな人はいるでしょうけども、小説形式なら書状の方が字数も稼げるし、何より書きやすいでしょう。密偵と言うキャラを活かすのであれば、書状でもイケるでしょうし。しかし言伝っていう……そう言うのどうこう取り除いてもカッコつけてますよね?」
「はい全くおっしゃる通りでございます……!」
許されなかった。適当な理屈をこねて、次の話に流そうと思ったけれど……駄目だったんだ俺は。許されなかった……!
「で! で!! で!!! 書状ですから! 騎士様のね!? 居場所を特定して彼が出す書状を強奪するんだよ!」
「王への書状を……成程。何となく読めて来ましたよ」
「で、そこから、ってあれ? まだ何も言ってないけど」
「だって書状強奪した上で我々が何が出来るかと言えば、書状を偽る位では?」
……それは否定しがたいけども。そんなあっさり……!
「しかし、書状の強奪、と言うのは厳しいのでは?」
「いや、強奪って言っても殴り込みかける訳じゃない。暴力は超人共に敵わないって言ったって俺達よりは圧倒的に格上だからな」
「ではどうするので?」
「そこなんですよ。はい。其処が何も分からない」
そもそもの話、騎士様の場所を特定する方法が多分足とかで稼ぐ、位だからなぁ。そんでもって稼いで探してやった見つけた、とか言った所でよ! その書状を託す人も普通にフィジカルつよつよな人な気がするからね。
「……先生」
「はい。なんでしょう」
「そう言うのを、世間一般で何と言うか知っていますか? ノープランと言うんですよ分かってらっしゃいますか?」
……否定は出来ません。はい。本当に。プランとか言っておいて、漸く突破口の一つを見つけただけだったんです。俺を許して……く、くそう。なんか勢いで良いプランが出てくれたら良かったなぁ、とか思ってたけどダメでした。
「まぁ、しかし方向性だけでも確定させられただけでマシという事にしましょう。それすらどうにもならなかったとか言う話になったら、もう許さないレベルだったので」
「ゆ、許さないとは一体、どの程度のレベルで……?」
「そうですねぇ。とはいえ、許さないと言っても八つ当たりは虚しいだけですし。ここはアイデアが湧いて来ないほど疲れていらっしゃると判断して、私の特別マッサージでお疲れを癒してみようかな、と」
「よう頑張った俺の頭脳……!」
こ、コレが純粋な好意なのか! それとも! 純粋な怒りから放たれる必殺の刃なのかいやどっちにしてもって話だけど! 兎も角、あの地獄の……いや、疲れは取れるから地獄とはそう簡単に言い切れない、っていう……いや待て! NOと言える日本人であれ!
「しかし、騎士の居所を特定し、そこから出る書状を妨害し、王に不信を頂かせる、までは良いんですけど」
「その辺りまで分かってたんだ……」
「騎士から出る書状に目を付けるのであれば、その先は間違いなく王様ですから。その辺りまでヒントが出ているのです。後を想像できるのは容易いです。で、そこまで分かってその方法を思いついたのであれば、先生も分かっているとは思いますが」
「何が」
「これ、実行できるようになったとしても、ある条件が邪魔をしますよ?」
……そう、なんだよな。繰り返すようだが色々問題はある。そもそも実行できる状況に持ち込むのが最大の問題だが、その辺りの諸々の条件をクリアして、さあ実行! ってなると気がかりなってくるのが。
「あの騎士を排除するのを、許容するかって話」
「王の行動を妨害するのがアウトだった時点で、結構厳しい気がしますよね」
「それは言わないで欲しい」
ループ現象縛りだ。より良い物語にしろ、っていう縛りのほかに、物語を崩壊させる行動はするな、って言う縛りもあるからなぁ! でも彼が居る状況で、俺達が小細工弄するのなんて無理なんだよねぇ! 土台!
「私は、先生が、騎士と言うキャラクターが完璧だ、と言うのでそう認識はしています。ただ本当に、完璧なキャラクターなのか、疑問が残るのですが」
「アンタ自分で騎士ってどういう人なんだって聞いておいてそれは無いんじゃないの?」
「私は先生の文章を通して彼のキャラクターを見ていただけで、詳細は知りません。自分が見ただけの主観的な意見を押し通すわけにもいかないので、そのキャラクターを製作された先生の意見は重要な物ですから。色々聞いてみたのです」
「……そうかい。じゃあ改めて言うが……」
「しかし、先生の話を聞いた事で、完璧、とは言い切れないのではないか、という感想が湧いてきたのです」
……えぇ?
「あの人魚姫の足止め役として、何度も何度も活躍して来たキャラクターだぜ? 俺なりに相当カッコ良く、そして隙の無い完璧人間として書いてきたつもりだけど」
「少なくともありますよ明確な弱点」
「えっ?」
「人間関係、です。先生は、それが王が彼の有能さを疎んだが故の外因的な物だと思っている様ですが……完璧、と称される人間なら、普通上司に疎まれるような態度は取らず寧ろ、上手い事迎合しつつ、上司の野心を諫める、位の事はやってのける筈です」
「いやぁ、それは」
だって、それは王様からの感情をどうにかしなけりゃならん訳で。そうするには、取り敢えず一旦でも良いから、王様の命に従いつつ……あれ?
「一旦……」
「そう。一旦でも良いから従えば良い物を……しかし、彼はその有能さを買われたというのにその有能さを疎まれて、と言うのが先生の書いた物語には、確かにありました。もし彼が、少しでも従順な素振りを見せて居れば、そこまでは行かなかったのでは?」
「一度でも、妥協すれば、って事か」
「しかししなかった。否、出来なかったのでは?」
……王との不仲には、彼自身の問題と言うか、失態も有った……? というか、俺がそう言う風に書いていた?
「王との不仲を煽り、排除するのではなく……その人間関係に関する弱点を突いて、我々の付け入るスキを、見つける、と言うのは如何でしょうか?」
アンデルセン先生ごめんなさい。
実際、ガチで完璧な人間って、周りから嫌われてないんですよ。その辺りまでケアできるから。




