馬を潰す為に王を狙う
「……んー」
『ちょ、ちょっと街に出てきますハイ。あの、えっと。はい。その間に、頑張って頂ければ、と、お、思いますそれでは』
「って言われましてもなぁ……全くもって思いつかないぞう」
繰り返すようだが、暴力以外は完璧なキャラクターとして造形した訳だからなぁ。女癖が悪いだとか、こっそり薬をやってるだとか……そう言うのは考えておらんのよ。まさに理想の騎士って感じにしたから。味方だったら弱点幾らでも作りますけど、敵役だし。
「弱点突かれてあっさり突破とか、戦隊モノの使い捨ての怪人じゃないんだから。いや元からして使い捨ての積りではあったんだけど……まぁそれなりに大きな活躍与えて退場させる予定ではあったんだけどなぁ」
そして弱点無しの完璧騎士とかいう、結構長く使えるキャラを使い捨てるのはもったいないという話になりまして……いやぁ……邪魔役として、本当に使い勝手が良かったんですよ。どんな荒唐無稽な作戦(世界史参照)でもこなしてくれそうでさ。
「お陰で一杯展開作れたのは、本当にありがたいけれどもね。もうなんか詰まったら彼らを投入。で何とか出来ちゃったのは……本当に」
まぁ今は感謝出来ないけども。俺がね、そうやって投入した分これから彼と交流(命の危機)の機会が増えるんだよなぁ。もう何処に投入したかっていえば、もう何処にでもとしか言えないっていう。
「彼に対策打たないと、何週ループしなきゃいけないんだろうという話で……多分、俺達が下手に干渉しようものなら……いや、干渉しても何も盤面変わらないまであるぞ。いやぁ笑えねぇ」
やはり見つけなければならない。あの男。弱点。どうする? どんなものがある? 以前の俺は、どんなキャラとして作った? 王の側近、有能な騎士。それ以外に何か……何か無いだろうか。
「……他に……何か……んんんんんん」
考えてみた。個人的に何かあるのか……結論を申し上げると無いですねぇ! 俺が一番苦手として、そして尊敬したとんでもない超人を参考にしたから、もうどうしようもないレベルで弱点ゼロよ。
「となると他人との人間関係から? 彼奴と相反する人間とか、そんな感じで……いやあの完璧人間に敵って……?」
敵……明確な敵……いや、性格の善し悪しだとか、そっちじゃなくて普通に立ち回り的な意味で絶対に敵を作らないというか。立場的に敵対せざるを得ないっていう奴の可能性を考えた方が……
「あ、いや居たわ普通に。立場的に敵対してそうな人が。なんだったら間違いなく騎士を疎んでそうな奴が、身近に一人」
騎士の身近。要するにソイツを送り込んだ王様自身が一番相性が最悪というか、騎士と敵対してる気がしないでもない。
「騎士はまぁ、どっちかと言えば清廉潔白を良しとする男として設定したからなぁ。能力だけ似せて、性格は全く似せてないで、何方かと言えば優しい、騎士としてまさに理想って感じで作ったからなぁ……」
そもそも、アイツは王の側近として生きてた訳だけど、めっちゃ特別に王とウマが合ってるだとかそう言う訳じゃないんだよなぁ。寧ろ、あの二人は性質としては正反対だったし。まぁだからこそ王は傍に置いたんだろうけど。
「合理的な理由から置いてただけで、王の野心に関してまぁ色々と意見して、それこそクビにされかけたとか言うエピソードもあるっていう位だしなぁ」
王は野心家。翻って側近は清廉潔白な騎士だよ。気が合う訳もないし、王だって有能さが無けりゃ取り立てる可能性は存在しないんだよなぁ。で、取り立てたは良いけど、その有能さが逆に仇となって……あっ。
「そうだ。そうじゃん。王が側近をそこに送り込んだのって、それだけの理由じゃないんじゃんけ……」
騎士が目障りになったんだよ! そうだ! 二人のそりが合わなくて、でもってその騎士を合法的に処理する為に、良くて人魚姫と相打ち、最悪でも人魚姫に処理して貰えりゃ万々歳ってな感じで。
「そもそも、自分の側近を、なんでそんな危険な任務に送り込んだのかっていう話だ。王子なら間違いなく対処できるって分かってるんだから、其方を態々使わないって言うのは理由が必要……とか編集さんにごもっともなご意見を頂いた。そうだそうだ」
もう大分前だし、小説自体には欠かない裏設定だから忘れてたけど……まぁ、そう言う裏があるかなぁ? 位の素振りを見せる位で、物語にちょっとしたスパイスを、位の感覚でやってたから。
「しかしそのスパイスが予想より全然役立っているんだなぁ……とはいえ、付けこむ隙はその王様との軋轢ぐらい、だとしても、そこからどうする?」
ここに来て、お決まりの偽装の手紙作戦? いや、いやいや……バレるでしょう。筆跡鑑定だとか何とか出来る訳でも無いけど、いきなり王様から不自然な命令とか来たりしたら間違いなく……うん。
「うん。それはダメだな」
騎士様に何か偽装を仕掛けるのは全部看破される、位の感覚で行こう。どんな世界でも敵は基本的に強く、されど味方になれば弱体化するというのが基本中の基本である。そして相手は俺が設定した最強クラスの怪物。
「間違いなくバレるし、なんなら手紙の持ち主を特定する勢いになる気がする。そうしたら俺は終わりだなぁ。間違いなくとっ掴まるなぁ」
なーんか、俺を別で、騎士長? だかなんだかが追っかけてるのにもう一人増えるとかシャレにも……しかも、有能な人物の追跡が増えるんだから笑い話にもならないんだよなぁ本当に。
「――しかし、奴の足を引っ張る要素には間違いない。となれば……」
狙いを変えれば宜しいのかもしれない。有能な方を狙うからマズいのだ。となれば狙うは、騎士を疎んじる……
「将を射止めるとするなら先ず馬から……じゃないな。俺が仕留めようとしてるの馬だよなぁ。まぁ無能な将を仕留めれば馬も無効化されるかもしれないし。うんうん」
いや、王様が別に無能って訳じゃないと思うんだけども。とはいえ、自分の有能な将を邪魔になったから、と言う理由で凶悪な災害に側近を放り込む鬼だからなぁ……うん、有能と考えられるかはちょっと。うん。
「まぁ兎も角、狙いは――王だ」
アンデルセン先生ごめんなさい。
出資者とか上層部は有能な将の足を引っ張るという心理。




