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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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よぞらのおほしさま

「ちょっ!? 触っただけで大の男が二人、いや三人か!? 一人女に踏まれてピクリともしねぇ!」

「触っただけ? 馬鹿、音聞いてなかったのかよ……」

「音ぉ? 何の話だ一体」

「アイツ等にチョンと触ったように見せて、その実は足の先からパァンと派手な音が出てたんだ。よぉく聞いとけ、四人目が向かってくその時を……」

「マジか!? ……あっ、ホントだ! 聞こえた! 結構デカイ!」

「だろう? 本当に手加減する為に、直前に最低限の位置から力を込めてるんだろうからただ触ってるように見えるんだよ」

「ほっほ~ぅ……すげぇなぁ!」


 いやお前の目の前に居る謎の解説役も凄いよ。俺、全然気が付かなかったもんよ。その人が何者なのか、俺は小一時間問い詰めたいレベルだが……まぁ、今は良い。俺が気にするべきは解説された人だ。あの黄金の髪と美貌、更に引き締まった様に見える足の筋肉。


「――人魚姫……!」

「凄いですね。さっきから、乗っている男の上から一歩も動いてません」

「いや、それもそうだけれどもさ、そうじゃなくて」

「冗談ですよ。とうとう時間が来た、という事でしょうか」


 その通りだ。この国に人魚姫が出没するのは、二部が始まってから。王の追撃を振り切ってここまで逃げおおせて、とはいえやはり超人。何もせずに潜伏できる訳も無く……まぁその辺りは、イイか。


「しかし、俺もっと大暴れさせてた気がするんだけども」

「そうですね。私がチェックした原稿も、最初から大分クライマックスだった覚えがあります。ここまで静かな感じでは無かったと思うんですけど……ああいえ、これから騒がしくなるのでしょうか」

「うん。そうっぽいね。なんか見えて来たヨ」


 団体様のお付きだ。四や五じゃ利かない。だからどいつもこいつも町中で人数連れてくるんじゃないよホイホイと。


「――兄貴! 見えましたぜ!」

「ソイツかぁ! おうおうおうおう! そこのねーちゃん! 俺の仲間を可愛がってくれたみたいだなぁオイ!」


 オーオー逞しいお兄さんだこと……俺だったら多分片手でキュッとされて終わるレベルだな。動画サイトでニッコニコで笑顔浮かべてたボディビルダーさん達みたい。あの人たち笑顔でスチール缶捻り潰してたんだよねぇ。


「俺の仲間を可愛がってくれたみたいじゃねぇか? アァン!?」

「――可愛がってた積りは無いけどね。ま、ちょっとは相手してやったけど」

「おうそうかよ……舐めた事言いやがって! 捻り潰してやるってんだ!」


 いや、実際人魚の姫様にとっちゃ可愛がってるのと同等位じゃないのかな。本気出してたらそこの人達がミンチやらネギトロめいたやらそんな冗談にもならないレベルで酷い事になって居たと思われる。


「ジュースかなぁ……?」

「ミキサーにかけられるレベルでねっとりとやられていたかと」

「シャバシャバで真っ赤な何かだと思うからねっとり感は一切ないと思うけども。足でこねて餡か何かにするの?」


 それはそれでグロイ……じゃなくて! おぉぉおおおお身の程知らずのオスオークがグイグイと迫って行く! 物語の種類によっては、まぁ向こうが勝つ流れもあると思うんですけど。コレはねぇ……


「なぁ、一つ聞いて良いかな?」

「あぁなんだ?」

「アンタはどれ位の力で可愛がって欲しいのか。今なら、その加減だけなら聞いてあげるけど? どう?」

「はっ、お前のパンチなんざ、手加減要らずだってんだ! 打ってこい!」


 ――あっ。はい。フラグも立ちました。もうね、この物語はね、あの、少女なのにえげつない筋肉を振りかざし、岩をも一発一握の砂っていうのが基本なんだよ。それを分からないお人って言うのは殲滅されても文句は言えないんだよ。


「ふーん? 手加減要らず?」

「そうだ! 鍛え上げられた俺の肉体を、そんな華奢な腕でどうにか出来ると考えられるな! お前風情に幾ら殴られたところで、僅かに撫でられた程度しか感じんわぁ女ぁああああ!」


 あっ、人魚姫がスタスタと近寄って……容赦なく。圧倒的な存在感がノスノスとオスオークに突っ込んでいくゥ! 凄いパワーを感じます。確実に殲滅するっていう確実な意思を感じています!


「――あっそう。じゃあご希望通り……ちょっとだけね」

「オラァ! 来い! そんな細足じゃ、俺の鋼の肉体に傷も付けられない事を教え――」


 ――ッッッドン……キラーン――


 ファーッ!! 凄い空の彼方へとフライハイ。足が一瞬ブレたと思ったら。本当にすごいなぁーパワフルだなぁー憧れるかと言えばちょっと微妙だなぁー。アレだな、ガチもガチだったら間違いなくアレじゃ済まなかったろうし、手加減されたんだなぁ。


「……へっ?」

「ま、ちょっとは硬かったろうけど。故郷のタコよりは粘り強く無かったね。アレはいっぺん岩場に張り付くと、もう元から岩の一部だったかと錯覚するぐらい、梃子でも動かぬってくらいのもんだし」


 ――で、頭がやられちゃったらもう後は総崩れ、と。凄いな、あれだけの数引き連れて来たのがそっくりそのままもと来た道を引き返したぞ。ジョークみたいな光景で流石にちょっと笑う。


「――ったく、根性の無い奴ばっかり。これだったら、サンゴ礁のお仲間たちの方が未だ捕食者相手に頑張ってたよ」


 そしてサラッと掻き上げられる黄金の美しい髪よ。片足を土台に乗せて、ちょっと上を見上げながらやるその仕草がまるで美しい絵画みたいで、イイねと思いました。足乗っけてる土台がひっくり返ってるマッチョメンなのがシュールだけど。


「――ありがとうねぇ、お嬢ちゃん」

「ん? あぁ良いのよお婆ちゃん。大丈夫だった?」

「大丈夫よ、ちょっとぶつかっただけだから」

「あらそう? ならちょっとやり過ぎたかしらね」


 いやちょっとどころか明らかにやり過ぎだと思うんですけど。一人夜空の星として星座の一部になってると思うんですけど。そんな簡単にね、人を夜空のお星さまとして昇格させちゃいけないんだよ……!


「――あぁ、相も変わらずハチャメチャだ……始まりの音が聞こえてくる……!」


アンデルセン先生ごめんなさい。


会話ににじませる申し訳程度の人魚姫要素

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