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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
一章:ポンコツ、自世界に立つ
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弾けるジジイのパッション

『どうした? 若いの』

『こんな老いぼれた畜生四匹、まさか怯えて逃げ出したい……等とは言わんよなぁ?』


――森の中、怯える追いはぎ達の前に立ち塞がるのは、二匹の影。獰猛にして勇猛な狗と、冷徹さの中に狂気を隠した猫。その獰猛な犬歯が肉を引き千切り、手の甲に乗せたまたたびと血の匂いに酔う。そんな彼らが塞いでいるのは……出口です。


『そっちは地獄って奴だ。ほれ、戻ってこい。くちばしが乾く前に』

『なぁに、そっちの二人よかは優しくしてやれるとも』


そして、その反対側、盗賊達が逃げ出そうとしたその先には、鈍く光る蹄鉄と、血の滴る黄の嘴……筋肉隆々の前足の上に、鶏を一匹乗せたモンスタードンキーが盗賊達を見つめていました。老人の温厚な視線……ではありません、獲物を見つめる狩人の眼でした。


『て、テメェらふざけやがって、何処が老いぼれた畜生だってんだ!』

『はっはっはっ、老いぼれだとも……昔だったお主らみたいな蒼瓢箪、一匹でも畑の肥やしに出来たもんだからのぅ』


 この蹄鉄で、と、ごつごつ家の床を叩きながらロバは言います。その口から覗く歯の白い輝きですら、彼らにとっては恐怖でしかありませんでした。


『嗅ぎたいのう、またたびと、お主らの腸の香り』

『最近は小便が近くてなぁ……また来る前に終わらせようか』

『ま、何れにせよ、ワシの鳴き声聞いて、目覚める事はもうないんじゃから、諦めろ』

『かかっ、そんな老いぼれ四匹の道楽に……付き合ってくれんかのう、追いはぎ共』


 そんな四匹に対し……しかし、追いはぎ達も諦めた訳ではありません。此方の数は未だ相手の五倍以上。確かに、留守番の連中を倒してのけたその手際、油断は出来ませんが、勝ち目が無い訳じゃない。彼らはそう判断し、数の有利を武器に四匹に向き合いました。




「――そうして始まった、追いはぎ共と老いた獣共の、命がけの喧嘩。その大暴れの様子はまた次回……という事で」

「「「えっ!? そこで終わり!?」」」

「はい。今日語るつもりだったお話でございますので……」


 ――うーん、上手い。モノローグはあくまで静かに、しかし、セリフには適度に熱を込めて。唯感情を込めるだけじゃなくて、聞きやすく、自然な感じに仕上がってる。


「ありがとうございました。お陰で、良い練習になりました」

「お、おう……いや、その、俺達も、こんな楽しい話、聞かせて貰って……なんというか」


 そのお陰か、いつの間にか彼女の肉体に集中していた男共も……次第に話に引き込まれていって、最後にはあの調子。全く上手いとしか言いようがない。


「……し、しかし。どうなっちまうんだろうな」

「言ったって数は追いはぎ共が上なんだろう?」

「ばーか、長い事生き延びて、良い老い方してるあの四匹が負けるかよ! きっと愉快痛快の大暴れが待ってるってもんだ!」


 ……まぁ、典型的なダークヒーローものに、老人というエッセンスを付け加えて、ブレーメンの音楽隊をやってみた訳だが。予想以上に受けは良い。正直現代で発表してもオチは読めている様な作品なのだが。

 っと、こっからは俺の仕事かな。えっと……コレだコレ。


「――そらっ、お嬢さん」

「……あら?」


 リンゴを一つポイと。現金が一番いい、とか言ってたけど、持ってないし。仕方ない。大事なのは切欠、らしいからな。取り敢えず品は何でもいいのだ。


「そんな面白い話聞かせて貰って、タダってのは申し訳ない。俺からの送りもんだ」

「あ、ありがとうございます……でも、そんな、物を、貰う為にやった訳じゃ……」

「――オイオイそこのひょろいあんちゃん! そんな安っぽい品物じゃダメだろ! こういうのはしっかり、現物を払わないとな!」


 で、それに続く様に店で飲んでたオッサンの一人が投げつけたのは、硬貨。彼女の近くにチャリンと転げ落ちて……


「おぉ! そうだそうだ!」

「予想以上に面白い話して貰えたし、楽しめたよねーちゃん! ほれ、これもってけ!」

「良ければまた続き聞かせてくれよ! 今度は最初から払うからよ!」


 ――そうなったらもう流れる様に投げ銭の嵐だ。現代でも面白い芸には金を景気よく払う。それと同じような現象が、今起きている。彼女の語りも、物語も。まぁ、これくらい受ける位には刺激的で、新鮮だったのだろう。


「……ま、そうじゃねえと話にもならねぇか」

「ん? どうしたあんちゃん」

「いいや、何でもない……酒、やっぱいいや。帰るよ」

「えっ?」

「暇つぶしに来たんだ。丁度いい暇つぶしも出来たし、もう今日は気分が良い。あぁ、金落してないってんなら、ほれリンゴ。金の代わりだ」

「えっ、あの、ちょっ、あんちゃん!」


 まぁ狙った通りになったかは分からん。あそこの女……編集さんがどれだけを試算していたなんて、全く分からんし。




「……お待たせしました」

「おう。結構な反響だったけど……あれくらい盛り上がれば良かったのかな」

「えぇ。大成功かと思いますがというより、現代の洗練された娯楽をぶつけているのですから、これくらい反響が無いと先生の腕が貧弱という事になりますが。慣れないやり方で、良くここまでやったとは思いますよ正直」

「うるせぇ」


 まぁ、要するに俺は書いた、というより頭で考え、口頭で吐き出し……後は編集さんに纏めて貰って、語ってもらう。口頭だけで物語を書くなんて、正直初めてだったしどうやってやればいいのやら、と思って居たが、案外何とかなった。


「しかし、コレで部屋を取れるかねぇ」

「足りなければ宿なしになるだけですね」

「アンタなぁ……」


 身も蓋もねぇ言い方しやがって。そうならない様にああやって大道芸染みた事をやったってのにそれはねぇだろう!?


「……覚悟決めるかぁ。取り敢えずここで良いんだな宿は」

「はい」

「じゃあ噂になっても困るからな、チャチャッとチェックインしようじゃないか」

「それ本来は女性が言うセリフだと思うんですが――ごめんください」


 うるせぇ! 実際噂になったら困るだろうが! アンタは俺の物語を売り込む担当なんだからさ! アイドルって基本的に彼氏はNGなのは常識だろ! だから


「あいよ。何人だ」

「二人です。弟と二人で。此方で足りるでしょうか」


 さぁ、取り敢えず一掴み分の硬貨をカウンターにばら撒いてみたが……どんな反応をするかあーあもうなんか渋い顔をしていらっしゃるな足りないのか!?


「それだと一人部屋になるが、大丈夫かい?」

「ああいえ構いません。安上がりな方が良いので」

「そうかい……おい坊主、精々姉ちゃんに甘えて寝るんだな。羨ましい」


 喧しい甘える余裕なんてねーよこのエロオヤジ! ったく、この時代の人間はそう言う事しか考えんのか。冷静に考えろ、姉弟でそんな事するか普通? アァン!?


「いえ、弟はシャイなので、甘えくれるのも稀でして……すみません、お気遣いいただいて。それでは部屋お借りいたしますね」


 だ、黙ってるからって好き勝手言いやがって。誰が女性にふれる気も無い腰抜けだと申すか! ええい事実だけになにも文句が言えないじゃないかっ! そうだよ俺は童貞だよ何か悪いかバーカ!


アンデルセン先生ごめんなさい。


老人の魅力を出していきたかった(言い訳)

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