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4.キツネとタヌキと時々、ゴーレム。

 俺は獣耳の美少女たちにヨハンと名ずけてもらった。

 その名前の由来は伝説の主人公らしい。


「これで名前も決まったわね。 それじゃ、この子達の自己紹介の前に一つ便利な魔王の力を教えてあげようじゃないかい。」


「魔王の力ってユニークスキルの事? なら自分の力の事は理解しているつもりだけど。 あっ、その他にもあったような気がする‥‥。」


「そう、まだあるわよ。 確かにユニークスキルは魔王の代表的な力の一つでもある。 だけどそれだけじゃないのよ。 魔王には、配下の魔物のステータスを見ることが出来る特別な瞳を持っているの。 ほら、自己紹介してもらった時についでに見ときなさい。」


「うん。 分かった。 試してみるよ。 それじゃ、最初に自己紹介してくれる人は誰かな?」


「「はーい! はーい!」」


 子供たちは俺を囲んで元気よくぴょんぴょんと跳ねながら手をあげる。


「おねーちゃんが最初におとーさんに自己紹介するの! いもーとたちはおねーちゃんの言うことを聞くの!」


 キツネ耳の美少女がおねーちゃんぶりながら他の美少女たちに言い聞かせる。


「ちょっと早く生まれただけなんだよ。 おねーちゃんなんて程の差なんてないんだよ。」


「そんなの知らないでやがるですっ!」


「はやくうまれたのはじじつ。 だが、としはおなじ。 まなとかな。 おすぎとぴーこ。」


「お、おねーちゃん。 私はそ、そんちょうしますっ! お、おねーちゃん!」


 だが、そんな事をお構いなしに美少女たちは自己主張をするので、涙目になって拳を握り締め大声で叫ぶ。


「うぅぅ。 天狐はおねーちゃんなの! みんな、おねーちゃんの言うことを聞くのっ!! おとーさんの次にえらいのっ!!」


 キツネ耳の美少女の迫力に圧倒されてその場が静まりかえる。


 キツネ耳の美少女は確かにみんなを代表したり、まとめる事を自分からする。名前を考えてくれた時もまとめようとしていた。

 しかし、見ていると少し天然な所もあるが、そこまでおねーちゃんって事に執着してるなんて思いもしなかった。


「え、えらくはないけどおねーちゃんなのはじじつ。 ここはたてるべき。」


「お、おねーちゃん落ち着くですっ!」


「しょーがないからキツネからでいいでやがるですっ!」


「キツネに先越されるのは嫌だけど譲るんだよ‥‥。」


 キツネ耳の美少女は涙を拭いながら俺の前に立って、可愛いい咳払いをした後で上目で自己紹介をしてくれた。


「こほんっ。 天狐は天狐なの! キツネの神様でえらいの。 炎属性の魔法が得意で好きな食べ物は油揚げとベネッタなの!」


 んっ!? べ、ベネッタ? なにそれ!?


 俺は聞き慣れない食べ物の名前を聞いて首を傾げる。


「「わたしもー」」


 美少女たちは自分も好きって首を縦に振りながら同意する。


 えっ! やっぱり知らないの俺だけ?

 いや、もう1人知らなさそうな人がいる。 それはレヴィだ。 彼女の方を見ると、うんうんって頷いている。


 知ってるのかーい!


 子供たちはベネッタの話に夢中になっていたためにレヴィに聞いてみた。


「レヴィ、ベネッタってなに?」


「ベネッタはね。 秘密よ! ひ・み・つ。」


 人指し指で俺の唇を優しくしーっとするように触る。


 正直その行動に少し照れてしまったのだが、それよりも‥‥。


 教えてくれないのかーい。 まぁ、いいや。


 レヴィは教えてくれなかったから、俺は子供たちの会話に耳を傾けてみた。


「ベネッタは黒に限るんだよ!」


「いーや、みーはみどり。」


「肌色に限りやがるですっ!」


「私は、白がいいのですっ!」


「白だとベネッタじゃないの!」


「そ、そんな事を言わないでほしーのですっ。」


「天狐は何色がいいでやがるですっ?」


「天狐は赤がいいの!」


「赤なんて無いんだよ!」


 そんな会話が聞こえてくる。


 サッパリ分からん。


 俺はあまりにも気になるので子供たちに聞いてみた。


「ベネッタってなに?」


 すると、全員が引いた目でそんな事も知らないのって感じに俺を見る。


 そして、声を合わせて一言。


「「ひみつー。」」


 いや、教えてくれないのかーい。

 まぁ、いいや。 そのうち分かるだろう。


 結構遠回りしたが本題に戻ろう。

 俺は天狐にステータスを見ても良いか許可を取る。


 天狐は首をこくりと縦にふる。どこか自分の能力に自信がある穏やかな笑顔を見せてくれる。



 俺は瞳に意識を持っていく。


 天狐の後に吹き出しが見えてくる。自分の魔物ということで鮮明に詳細に情報が流れ込んでくる。


 種族 天狐

 名前 ーー

 ランク S

 レベル 1

 生命強度 1020

 攻撃力 S 防御力 B 魔力総量 S 体力 A 俊敏性 S 運 C 特性 EX


 特性

 炎を担う者:全炎属性魔法無効・炎属性付与(超)・炎属性強化(超)


 変化:姿を変化させた時、対象の身体能力に変化。その時、相手のステータスの全能力を1ランク下がった状態で引き継ぐ。しかし、狐に変化をするときレベルに応じて能力が向上する。


 狐神の特権:発動時、全ての能力2ランク上昇・下位種族の全ての能力1ランク上昇。


 熱量操作:触れた対象のありとあらゆる熱量を操作することが可能。


 幻術:相手を惑わし、混乱させる能力。レベル差が大きいほど効果があり、現実の身体にも影響を与えるようになる。


 尻尾の逆立て:全ての能力が一段階上がるが、使用時に魔法を使うと1.5倍、消費する。


 炎帝:炎属性最高の特性。絶炎の使用が可能。なお、炎を担う者の能力を大幅アップ。だが、自我を失う。現時点では使用不可能。


 未解放



 初めて魔物のステータスを見たがこれはぶっ壊れているくらいに強い。強すぎる。

 すると、横で魔王の瞳を使ったレヴィが吹き出す。


「えっ!! なに!? この子! 見た目とは裏腹にとんでもない魔物だよ! Sランクはともかく、炎帝なんて炎属性の頂点に近い魔物だよ!」


「やっぱり強いよね! 俺にも分かるよ!」


「いや、君が思っているよりもっと強いよ。 まずSランクってだけで魔物の数は一気に絞られる。 そこに炎帝って言って炎属性の頂点に君臨する素質を持っている訳だ。 私の魔物にも帝王は1人しかいないのに。」


「そ、そうなのか。」


 天狐を見ると誇らしげに胸を張ってえっへんしていた。

 だが、美少女たちはそんなの当たり前でしょって感じで、三角座りをしながら天狐に軽い拍手を送る。

 天狐はその拍手を気持ち良さそうに浴びてしっぽを振りだした。天狐は少しお調子者でもあった。


「天狐よろしくな! 天狐は炎属性のエースだ。 みんなをまとめる役割も期待しているぞ。」


 天狐の頭を撫でてやるとしっぽの動きが加速した。


「天狐におまかせなの!」


 親指を立ててグッドとする。



「次の子は誰かな?」


 また、わちゃわちゃと自己主張をし始める。

 すると天狐がおねーちゃんぶりながら場を治めようとする。


「おねーちゃんの次にえらい次のおねーちゃんが自己紹介をするの。」


 次女の事を言っているのだろう。

 その言葉にネコ耳の美少女とオオカミ耳の美少女は不満そうな顔をする。


「うぅ、早くするでやがりですっ! 夜になっちゃうでやがるです。」


「みーも、おおかみにどうかん。」


 するとタヌキ耳の美少女が俺の前にすこすこと歩いてきて上目使いで自己紹介をしてくれた。


「それじゃ、僕の番なんだよ! 僕は福狸なんだよ。 願いを運ぶ使者。 間違ってもサンタクロースと違うんだよ。 得意な魔法は土属性で好きな食べ物はお団子とベネッタなんだよ。」


 だからベネッタってなんだよ。それにこの子は僕っ娘だ。


「そうか。それじゃステータスを見るよ。」


 天狐同様にこくりと縦に首をふる。


 種族 福狸

 名前 ーー

 ランク S

 レベル 1

 生命強度 990

 攻撃力 B 防御力 EX 魔力総量 A 体力 S 俊敏性 B 運 C 特性 EX


 特性

 土を担う者:全土属性魔法無効・土属性付与(超)・土属性強化(超)


 変化:姿を変化させた時、対象の身体能力に変化。その時、相手のステータスの全能力を1ランク下がった状態で引き継ぐ。


 ゴーレム召喚:一日一体、Cランクのレベル1固定のゴーレムを作ることが出来る。素材によってゴーレムの得る能力は変わる。


 地流操作:土を自由に操れる。


 絶対防御:使用時防御が極状態になる。しかし、行動が不可能になる。


 腹太鼓:相手の素早さを一段階下げ、下位種族の素早さを一段階上げる。


 土帝:土属性最高の特性。絶土の使用が可能。なお、土を担う者の能力を大幅アップ。だが、自我を失う。現時点では使用不可能。


 未解放


「この子には土帝がある。 天狐と同格って感じだね。」


「そ、そうね‥‥。 信じられないわ。 それにゴーレム召喚って何よ、この能力は‥‥。 まるで魔王だわ。」


「確かに一日一体、福狸がゴーレムを作ってくれたら戦力は格段に上がる。 どういう感じなんだ、見せてくれないか?」


「ここは見せ場なんだよ! 《大地の精よ、新たな命を我の元に!》」


 福狸が短い言葉を詠唱し石材の床に手を置くと青い魔法陣が発生する。

 その魔法陣は俺が使用した第1階級魔法陣よりも遙かに複雑であり、その能力の高度であることが伺える。


 そして、石材の地面をごっそりとへこましながら、俺の背丈の三倍近い石のゴーレムがゆっくりと立ち上がる。


 福狸は自分が作り出したゴーレムの肩に乗りどや顔をする。

 他の美少女たちは仰け反って目を輝かせながらゴーレムを見上げていた。


「ふーちゃん凄いの! 天狐も乗りたいの!」

「みーも!」

「おれっちもでやがるです!」

「大きくてこわいのですっ! こっち来ないで下さいですっ!」


 天狐、黄泉猫、天狼が近づくと石のゴーレムは地面に座り込んで娘たちを肩に乗せて歩き出す。

 月兔だけはいつの間にか俺の後に隠れて様子を伺っていたが、安全だと分かりいつの間にか一緒にゴーレムに抱きかかえられていた。


 ゴーレムはまるっきり美少女たちの遊び道具になっていた。


 少しゴーレムを哀れに思いながらも俺はゴーレムのステータスを確認する。



「凄いよ。 ゴーレムか! ステータスを確認させてもらうよ。」


 一応確認したがゴーレムは無反応で美少女たちに玩具にされていただけだった。


種族 ストーンゴーレム

 名前 ーー

 ランク C

 レベル 1(固定)

 生命強度 540

 攻撃力 C 防御力 A 魔力総量 C 体力 B 俊敏性 F 運 E 特性 D


 石材共鳴:石と共鳴することで体力の回復、破損部修復する。


 石材の硬化:防御力が一段階上がる。


 

 福狸に比べると特性も少なく、ステータスもかなり低い。だが、石材の硬化を使えばSランクほどの防御力を得るために馬鹿には出来ない水準だ。


 それだけ、福狸や天狐が強いということなのだろう。


「おとーちゃん! このゴーレムは生きているんだよ! だから、簡単な命令なら理解して従うんだよ!」


「つまり、俺の魔物でもあるわけだな! 凄いな! でも、最深部では使わないでくれ。 地面がへっこんでいるから。」


「はーいなんだよ。」


 福狸は素直に手を上げて返事をする。素直はいいことだ!


「便利ね。 それと、ゴーレムはレベル1以上に成長しないわけだが、ゴーレムが倒した経験値はどうなるのかい?」


 レヴィが質問してきたことに凄さ緊張しながらも答える。


「ここを開けると経験値がストックされているんだよ! ストックされるのは経験値を得てから一日なんだよ!」


 頭の後には円柱の黒い石が刺さっていた。


「便利過ぎだろ。 ダンジョンの主戦力に考えてもいいくらいだな。」


「任せるんだよ!」


 福狸は胸を叩いて鼻息を荒くしたのだった。



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