11.娘たちは甘えたい盛りです。
長い夜が明け少し寝不足気味だったがレヴィとの約束があるためにそろそろ起こそうと思う。
まずは天狼からだな。
ほっぺたをツンツンすると、ふにゃーっとニヤけてゆっくりと目を開けて挨拶をする。
「お父様、おはようでやがるですっ。」
天狼はよく眠れたようで、目がぱっちりでシャキッとしていた。当然、もふもふオオカミしっぽも艶があり綺麗に凜としていた。
次は月兔かなぁ。
この子にもほっぺたをツンツンすると、この子は眠そうに目を擦りながら目を覚ます。
月兔は寝起きが余りよくなく、他の娘の長くてもふもふの立派なしっぽを抱いて寝ている。やっぱり長いもふもふしっぽが羨ましいのだろうか。
「パパ、お‥、おはようなのです‥。」
福狸と黄泉猫は複雑に絡まっているから最後にしよう。
天狐をツンツンして起こすと、この子も目を擦りながら起きる。
「おとーさん、おはよー、なんだか体中が痛いの。 なんでー?」
それは福狸とボクシングしていたからだよ。
本当に寝てたの!? 怖いわー。
俺はその事は天狐には伝えなかった。
そして、問題の2人。
いったいどうなっているんだ?
福狸の腕がここにあって? 黄泉猫の足がここにある。 あれっ、福狸の足が3本ある? いや、1本は黄泉猫のだった。
「おきろーー。 朝だぞー!」
俺は2人の頭を激しく撫でると、最初に起きたのは黄泉猫だった。
この子も眠そうな目をしている。
「おとうさん。 よくねむれてよいすいみん。 おめめがぱっちり! げんきはつらつ!」
「そうか? いつも通り細いけど?」
「レディーにしつれい。 これがみーのおめめのさいだいち。」
「それは悪かったな。 福狸を放してやれ。」
「おう。 これはびっくり! たぬきにばかされた。 おとうさんにすーぱーねこあたっくをしたつもりがまさかたぬきだったなんて。」
「俺にそんな事しないでくれ。」
苦笑する。
「おとーちゃん。 おはよーなんだよ。 良い朝なんだよ!」
背筋を伸ばし、もふもふのタヌキしっぽをピンってさせて、体をほぐす福狸の姿があった。
「あはは、おはよう。 これで、みんなは起きたね。 それじゃ、レヴィの所に行こうか。」
「うぅ、おとーちゃん。 あの女の人、怖いんだよ。 だからあまり関わりたくないんだよ。」
タヌキ耳の美少女の言葉に合わせて、娘たちがうんうんと頷く。
娘たちは彼女の強さと厳しさを昨日一日で十分すぎるほど理解したようだ。
「それは困ったな。 でも、魔物の創造を教えてもらわなければ君達の兄弟も出来ないよ。」
兄弟という言葉に反応して、獣耳をぴくって動かす。
娘たち全員共通して新たな兄弟が欲しいらしい。
特にキツネ耳の美少女の天狐はおねーちゃんぶっているので、ひときわしっぽを揺らしていた。
「おとーさん、それは問題なの。 早くレヴィアタン様の所に行って教えてもらうの! しっかりと学ぶよーに!」
「そうだな、それじゃ行くか。 でも、どうやって行くんだ? 君たち、道を知っているかい?」
獣耳の美少女たちが一斉に首を横に振る。
「おとうさん。 みーたちはおんなのひとに、わーぷさせられた。 まるできんみらい。 ひかるぼうがびゅんびゅんいうかも。」
つまり、魔王のダンジョン内特権を使って運んでくれたようだ。
すると女性の声がした。レヴィの声だ。
部屋に黒い渦が出来て中からやってくる。
「やぁ、起きたかい。 昨日はなかなか内容の濃い一日だったよ。 それにしても、なんでこんなに私は子供たちに恐れられているのかい?」
どこかで話を聞いていたようで、なぜか彼女は疑問に思ってたようだ。
答えは二度も子供たちをおしっこが漏れるまでビビらせたからだ。だから彼女たちの間では怖い人っていうイメージがなすりつけられているようだ。
「なんでだろうね。」
「うーん。 不思議ね。」
これは彼女の口癖なのかなぁ? 何回も聞いたような気がする。
「それよりも! 魔物の創造を改めて教えてくれないか?」
「うーん、創造くらいで倒れちゃうんだから、まだ無理って事よね。 選んだルーンが負荷を掛け過ぎるみたいね。 でも、そのルーンを選んだのはお目が高いわよ! さすがはもふもふロリコン魔王様!」
最後の言葉は余計だが、言われて見ればその通りだ。
魔物の創造は基本的な魔法の1つでもあり、魔王が自分の配下を創り出す特権でもある。
その言葉を聞いて娘たちは兄弟が出来るんじゃないかという期待を裏切られ、ペちょんと獣耳を垂らして話を聞いていた。
特に天狐は1番ガッカリしたのだろう、地面を見てしっぽがピクリともに動かない。
「そうか‥‥。 それじゃどうしよう?」
「簡単よ。 経験値とDPを稼いでレベルを上げれば良いのさ。」
魔王はDPによって、魔物は経験値によってレベルが上がる。
そのDPと経験値は倒す魔物の生命強度に依存しているが、生命強度自体、魔物の強さを示しているので敵は上手く選びたい。
「そういえば、レヴィのダンジョンの魔物って倒しても良いんだっけ?」
「好き勝手に倒すのは困るけど、ダンジョンの10階層から50階層の自我のない魔物だったら良いわよ!」
「自我の無い‥‥。 つまり、暴れ回っている魔物って事だよね!?」
「そう。 オリジナルの魔物が死んで、統率が取れなくなった魔物達よ。 まさかオリジナルが死ぬなんて思いもよらないから、琥珀クリスタルを買いすぎてポンポンポポポンって魔物が増え続けるから困ったものでね(笑)」
大きく口を開いて笑い出す。
「笑い事なの? それは結構やばい状況じゃないか?」
「やばいわね、アハハ。 でも、何とかなってるし、それに自我と理性ある魔物達の経験値稼ぎの場にもなってるのよ。」
「でも、オリジナルが死んでも魔王の言うことを聞く訳でしょ? 大事な戦力でしょ?」
「確かに主人の私の言うことは聞くけど、魔王が直々に戦場に行くわけないでしょ! 魔王が死んだら魔物たちだけじゃやっていけないし。」
「そうだよな。 危ないし考えが甘かったよ。 あれっ? またあの子いるよ!」
ウッドハウスの窓から中を黄色と黒のネコ耳の美少女のレミルがこっちを見ていた。
目が合うと窓下に隠れるがピクピク動くネコ耳が隠れ切れてなく微笑んでしまう。
レミルも娘たち同様に主人が大好きであり、つけ回っているようだ。
「あっ!! レミルちゃんがいるの! みんな仲良くするの!」
「ねこみみにわるいやつはいない。」
「おれっちとキャラかぶりでやがるですっ! それに、天狼と雷鳴猫は犬猿の仲でやがるですっ!」
「そんな事言ったら、タヌキとキツネも犬猿の仲なんだよ!」
「うわー! 動物さんがいっぱいですっ!」
すると、娘たちがわちゃわちゃとドアに走って行き、ドアを開けてレミルを部屋の中に招き入れる。
レミルはなんだか恥ずかしそうであり、娘たちの圧倒的なパワーに埋もれそうだ。
そんなレミルのもふもふの尻尾が目に入った。
なんだ、この尻尾は娘たちにも負けないくらいに、もふもふじゃないか! 素晴らしい!
レミルは俺が尻尾を見ていることに気づき、股の間から体の前にだして、大切そうに両手で抱えながら少し引いた顔で睨んでくる。
すると、真っ先に天狼か気づいた。
「お父様! しっぽを見てニヤニヤするなでやがるですっ!」
「パパ、しっぽ好きなのですっ?」
「俺はもふもふが好きなんだ!」
「とうとう、はんにんがじはくした。」
すると、半分怒ったような焼きもちを焼いたような複雑な顔で天狐が俺を呼ぶ。
「おとーさんっ!」
俺のもとにすたすたと駆け寄ってきて、俺の服の袖を引っ張る。
天狐のおとーさんっていう甘い言葉を向けられたら嫌でも撫でてしまう。
すると幼さ全開の天狐は、キツネ耳をピクピクとし、しっぽをさらに振り出すがいつの間にかどこか心配そうな顔をしていた。
あげくの果てには、俺の胸板に激しく抱きつき温もりを感じるように瞳を閉じている。
「天狐たちが好きじゃなくて、天狐たちのもふもふしっぽが好きなの?」
「いや、天狐たちが大好きなんだよ。」
天狐の不安は他の獣耳の美少女たちに伝染していき、涙ぐんで抱きついくる。
言い聞かせるように5人をぎゅーっと抱きしめてやると、ぎゅーっと抱き返してくる。
そんな美少女たちは温かくて、柔らかくて、太陽の匂いがする。
それだけではなく、もふもふの尻尾が腕に触れてくすぐったいが癖になる。
ゆっくりと獣耳美少女たちの頭を撫でてやると、目を細めてもっと撫でてというように頭を手にすりすりとなすりつける。
そんな仕草も最高に可愛らしい。
「それにしても、あながちレミルの言うことも信憑性が出て来たわけだ。」
つまり、俺は獣耳の幼い少女が好きだと言うことを遠回しにいっている。
「それはない俺はこの子達が大好きなんだ!」
その言葉を聞いた娘たちはしっぽを全開にして振る。
レヴィと話している間にも美少女たちはすりすりと甘えてくる。
甘えたい盛りなのだろう。
やっと獣耳の美少女は甘えるだけ甘えてやっと離れてくれた。
しかし、トレードマークの耳と尻尾は揺れていた。