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9.創造の行方。

 最深部をレミルが出て1つの映像が映し出される。

 その映像はレミルか肉眼で見ている景色そのものだった。


 広大な広さのダンジョンをすごいスピードで駆け抜けていく。時々、青色の魔方陣に飛び込み違う階層に転移していく。


 もちろん、映像には音声もついているために、レミルの独り言が聞こえてくる。


「おかーさまになでなでされたのですっ! うふふ。 やったのでありまーすっ!」


 最初は上機嫌だったが次第にドレエルの戦闘した場所に近くなり、ダンジョン内の気温が上がっていきブツブツと小言を言い始める。


「うー、熱いでやがるでありますっ。 こんな事なら新しい魔王なんて見に来なきゃよかったのでやがるてありますっ。 でも、おかーさまに撫でて貰えたので結果オーライでやがるであります!」


 やっぱりレミルはご主人様に撫でられるのが好きなようだ。

 そこは獣耳の美少女たち、共通なのかもしれない。


 それにこの手の生物は感情がもろに尻尾に出るようで分かりやすく、そんな姿がまた可愛く思えてしまう。


 そんなレミルが見ている景色は次第に洞窟の側面が赤くなり、最終的にはマグマのように赤く溶けていて地獄絵図の場所に、1人の紳士が白い手袋をはめている様子が映し出され、2人は話をしている。


「あら、レミルのお嬢ちゃん、どうなさいましたのかな?」


 思う存分に力を振るえた事に満足した顔をしながら、12、3才と幼い容姿のレミルと話すために中腰になる。


「むむ、ドレエルのジジイが咆哮なんか吐くからレミルが様子を見に行かなくなっちまったのでやがるでありますっ。 恨むのでやがるであります!」


 きっとレミルはドレエルを睨んでいるだろ。


「新しい魔王様に実力をお見せしようといたのですよ。 でも迷惑を掛けてしまったようですね。 レミルのお嬢ちゃんは良い子だね。」


 ドレエルがそんなレミルを笑顔で頭を優しく撫でてやる。


「えへへっ、いや、ジジイなんかに撫でられてうれしくねーでやがるでありますっ。」


 きっと目を細めた事にもより映像が一瞬狭くなった。

 さらに映像にはもふもふの黄色と黒のしま模様の尻尾を振っているさまが見える。


 きっと満更でない顔をしているのだろう。


 そんな映像の様子を見ていて俺は呟く。


「す、すごいよ‥‥。」


「ああ、ドレエルは私の5本の指に入るぐらいの魔物だからな。 でも、あとで言い聞かせないとね。 まぁ、片づいたから魔王の事も教えないといけないしね。 言い忘れていたが、手に入れたDPの半分は魔神の爺さんの所に献上する事になるけど、それが魔王の存在意義なんだ。」


「ちょっと待って! さっきさらっと言ったけど魔神? えっ!」


「そう、魔神の爺さん。 私たちのオリジナル魔王の作りの親よ。」


「魔王の取り扱い説明書にも書かれてないし、DPを半分も持って行かれるの!?」


「それは、今は神々と喧嘩中で力の源が欲しいんだってよ。 この話はまた今度だ、長くなるからな。」


「なんか、壮大な話だね。」


 レヴィは頷いてついてくるように言ってきた。


 俺はレヴィアタン魔王のルーンのコレクションが置いてある部屋に案内された。宝物庫というとこだろう。


 しかしまたも、うしろには猫耳美少女のレミルが部屋の外からコソコソとこっちを見ているではないか。


「おとーちゃん! あの子がこっちを見てるんだよ!」


 福狸がレミルを指差すと目が合い、焦ってすっと隠れる仕草が可愛らしい。

 俺や我が娘たちの事が気になるらしい。


「レミルこっちおいで! さっきはありがとね。」


「おかーさま。 あっ、ごろごろでやがるでありますっ。」


 レヴィは手招きをしてレミルを呼んで、頭を撫でてやるとゴロゴロと喉をならし、目を細めるながら尻尾を揺らす。


「紹介するね。 私の1番新しい魔物のレミルよ。 この子はサーバルキャットがモチーフの雷鳴猫よ。 主に雷を使うの。 ほら、新しい魔王よ、挨拶は?」


「レミルなのであります。 むむっ! コイツ、レミルをいやらしい目で見てきやがるでありますっ。 こっち見るなでやがるでありますっ!」


 もふもふの尻尾の毛を逆立ててシャーシャーと威嚇する。


 正直イラッとしたが、さっき見ていてたぶん根は良い子だと分かっているので怒る気にはならない。


 すると娘たちが反論する。


「おとーさんはそんな目をしないの。 いつも優しい目をして見守ってくれるの!」


「そうなんだよ!」


「でも、たまーにしっぽをニヤニヤしながら見てる時もあるでやがるですっ!」


「てんろう、それはふぉろーしてない。 でも、そんなおとうさんがだいすき。」


「パパは大きくて優しくて頼もしいですっ!」


 嬉しい事を言ってくれている。天狼を除いて。


「ごめんねー、なんかレミルに嫌われちゃったみたいで、この子、私以外の魔王を見るの初めてなんだ。 それともそうゆう趣味?」


 レヴィも気を遣い謝るが、すぐにからかってくる。俺の反応を見て楽しんでいるようだ。


「違うし! そのうちレミルには後悔させてやる。」


 そして、部屋の中に視線を移す。

 壁全面に引き出しがあり、一つ一つに綺麗に入るだけ並べて入れられてあった。


「魔王の取り扱い説明書を読んで知っていると思うけど、魔王は3ヵ月に1回だけオリジナルルーンを作り出す事が出来る。 それと、魔王を殺した時など魔王の司る性質のルーンが手に入る。 あと、それ以外は魔神の爺さんから報酬として貰うことだな。」


 この3種類の手段が一般的にオリジナルルーンを得る方法だ。


 それに対してこのルーンの数は彼女が沢山の長い年月と多くの魔王を殺したことを意味する。


「魔王を殺す? なんで魔王を殺す必要があるんだ。 同じ目的の仲間なのに?」


「それはね。 魔王は本来自分の司る性質しかルーンを作り出せないんだ。 つまり、1種類の性質しか無いダンジョンなんて攻略が簡単ですぐに敵に殺されてしまう。 だから、他の性質を持った魔王を殺し性質を奪うのさ。」


「なるほど。 分かった。 それじゃ、俺はまだ【変化】しか作り出せないって事だよね。」


 少しガッカリする。

 俺の頭の中にある魔物を作れ出せないからだ。

 でも、もふもふ娘たちには囲まれて幸せだ。


「安心しな、今回は特別に私が膨大なコレクションの中から好きなのを1つ選ばせてあげるからさ。 本来魔王はルーン2個で1体の魔物を創る事が出来る。」


 今回は特別にルーンをくれるらしい。


 だが、本来は親からいくつかルーンを貰うらしいが俺には魔物が5人もいる。

 しかも、もふもふしっぽを持っている獣耳の美少女たちだ!


 引き出しを開けると色とりどりのカラフルなルーンが綺麗に並べられて置かれていた。


「ルーンを触ってごらん。 ルーンの情報が入ってくるだろ。 ルーンにはランクがあって最上位にSランク、A、B、C、そして、一番下にDランクがあるわよ。 ランクや性質によって魔物は大きく異なる。 もちろん、ランクも異なるわ。」


 ルーンを握ってみると、ルーンの性質と効果が頭の中に記憶のように流れ込んでくる。

 レヴィがいっていたようにルーンにはランクがあり、一つ一つに性質や強化効果がある。


 ランクや性質があるなら、もちろん貰うのはSランクのルーンが欲しい。つまり、強い魔物が欲しいからだ。

 しかし、探しでSランクのルーンは見つからない。あってもAランクのルーンだ。



「熱心に選んでいるのは良いけど、私のコレクションから選ぶ前に自分のルーンを創ってみようか。 最初の魔物くらいは自分の性質のルーンを使って魔物創ろう。 分かっているだろうが、ルーンを創り出すときは詠唱が必要だ。《我に財を与えよ》だよ。」


 少し夢中でレヴィのルーンをあさっていたことに恥じながらも詠唱をする。


「《我に財を与えよ》」


 胸の前に周囲から光が集まり小さなルーンが光を放ちながら現れ、俺の掌に収まる。


「これが俺のルーンか。」


 すぐにルーンの情報を確認するために意識を向ける。


【変化】のルーン。

 Aランク。


 効果

 ルーンが変化する。



「ちょっと待って、ざっくりし過ぎて分からない。 これ、本当に大丈夫なの?」


「そんなの私に分かるわけないでしょ。 私だって一万年程生きているけど、こんなの初めて見たもん。 でもなんか強そうじゃん。 変化するのよ。 だから、1個のルーンで生み出せたのかもしれないわね。」


 ちらっと娘たちの様子を見ると、今回は大人しく我慢して三角座りをしながら5人で何やら話している。

 だから、偉いと褒めながらあめちゃんをあげるとしっぽを振って喜んでくれた。でも、俺の見せ場を少しは見てて欲しかったがまぁ、いいわ。


「どういう事?」


「これは仮説だけど、ルーンにはたくさんの種類がある。 例えば獣のルーンもあれば、キツネのルーンもある。 だから、天狐のルーンがあっても不思議じゃないわね。 特にこのルーンなら可能かもしれない。 すっかり忘れていたよ。 ダンジョンブックで確認してみると良いわ。」


「分かった。 確認してみる。」


 ダンジョンブックはダンジョンを開通してなければ魔王の体の中にあるために、何時でも見れる。


 薄い冊子のようなダンジョンブックを開くと使用したルーン一覧には何も書かれていなかった。しかし、自分の魔物として5人の娘たちが記入されていたために所有権は俺にある。


「何も書いてない。」


「やっぱりか。 不思議ねー? まっ、気を取り直してルーンを1個あげるから、正攻法で魔物を創造してみたら!」


「えっ! いいの! ありがとうー、それじゃ。」


 俺は引き出しを開けて一つ一つ確認していく。

 思ったより様々なルーンがあるようで目移りしてしまう。

 そして、目的の気に入ったルーンがあった。


 俺の【変化】のルーンともう一つのルーンを掛け合わせる。


「気に入ったルーンがあったようだからルーンと魔物についでの関係を具体的に説明するわ。 魔物は一般的にルーンのランクや性質にに影響されランクや性質が決まる。 つまり、Aランクの魔物が欲しければAランク同士を組み合わせる。 また、異なるランク同士を組み合わせる場合はそのランクのルーンの中間のランクの期待値が1番大きくなる。 また、二つのルーンを組み合わせる訳だから、期待できる魔物のランクは2分の1になる。」


 例えば、Aランク同士はAランクが確定される。しかし、AランクとCランクのルーンを組み合わせればBランクの魔物が5分の3、Aランクが5分の1、Cランクが5分の1という計算になる。 また、AランクとBランクの掛け合わせをするとAランクが2分の1、Bランクが2分の1となる。


 つまり、俺のオリジナルルーンはAランク、選んだルーンもAランクなのでAランクが確定されるのだが、せっかく生み出してやるので最上位ランクのSランクとして生み出してやりたい。


「この子たちの凄さってものがよく分かったよ。 Sランクの魔物はSランクのルーンでしか生み出せないって事だよね。」


「そうよ。 だけど稀にルーンの組み合わせ良ければSランクの魔物が生まれてくる事もある。 でも、ここからが本題よ。 魔王はただルーンを使って魔物を生み出すというわけではない。 魔王だって馬鹿ではない。 より自分の目的の魔物に近づけるために、魔力を使って生まれてくる魔物に沢山の設定をつけることが出来る。 より具体的に大量の魔力を使って設定をすることで、魔王の魔力を吸って上位のランクの魔物になることもある。 いや、この行為が創造の本質でもあると言えるだろう。」


 その言葉を聞いて俺は1日目に頑張っても出来なかった創造について振り返ってみた。

 俺はただ、創造と言葉を唱えてその様子をぼーっと見ていただけだ。 それが失敗だったのだろう。


 しかし、その失敗がなければ、この獣耳の美少女たちに会うことは出来なかっただろう。


「分かった。 やっぱり、初めは教えてもらった方が確実だったね。 レヴィの教えを存分に試させてもらうよ!」

 

 レヴィから教えてもらった事をより意識して魔物を生み出す言葉を唱える。


「創造!」


 昨日とは事なり、2つのルーンにありったけの魔力を吸われる。

 勝手にヒア汗が出て、胸の中がぐちゃぐちゃになる独特の気持ち悪さが襲う。


 二つのルーンはそれぞれの色の光を空を円を描きながら一つに混ざり合おうとする。


 だが、無情にも2つのルーンは1つに交わろうとするが弾けて地面に転げ落ちる。


「そんな、なんで俺が創造しようとするといっつもこうなるんだ。」


「ヨハン。 これはかなり重大な事よ。 創造出来ないってことは魔物を増やせないのと一緒。 運良く基本五大属性の魔物を持っているから何とかなるけど、それだけじゃ辛いわよ。」


 基本5大属性とは、炎、水、雷、地、風の事をいい、凡庸性があるために主戦力として使われる事が多い基本的な属性である。


「レヴィ、ちょっと待ってくれないか。 頭がクラクラする。」


 空間が回っていると勘違いするほどの激しいめまいに侵される。

 娘たちも気が付いて走り寄ってくる。


 そして、俺は娘たちの気遣う声を聞きながら気絶したのだ。

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