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プロローグ:魔王の誕生。

 俺は長い夢から目が覚めた気分だった。


「何だったんだ? あのキツネは‥‥。 それにここはどこなんだ?」


 俺は大きなキツネの体に抱きついて疾走と広い草原を駆け抜けている夢を見ていた。


 キツネといってもたくさんの種類がある。

 その中でも、寒い地域に住んでいるキタキツネというアカギツネの亜種が好きだった気がする。


 キタキツネは耳の先が餡蜜のようにちょこんと黒く、しっぽの先は雪のように純白だ。

 寒き地域にするでいるからこそのふわふわ、もふもふした柔らかい毛がたまらない。


 なんでこんな知識があるのか自分でも不思議に思うのだが、今はどうでもいい。

 それよりも、俺が乗っていたキツネは少し様子が異なっていた。


 それは尻尾が四尾あったのだ。それも、もふもふでふわふわしている尻尾だ。

 俺はその夢を見たことにより、不覚にも少しもふとふに憧れを抱いてしまったのだ。


 だが、俺は目の前の見知らぬ場所を目の辺りにして一気に現実に引き戻される。

 

 辺りを見回してみたが誰もおらず、石材の冷たい床と迫ってきそうな壁と、明かりを照らす四本の蝋燭という部屋の構成であった。


 俺は初めは監禁でもされたのではないかと思ったのだが、地面に落ちていた一冊の本と5個の透き通る透明なまるでダイヤモンドのような石が考えてを変えたのだ。


 俺は冊子のような本を拾い上げる。



 タイトル:魔王の取扱説明書。



 そのタイトルを読んで、自分の晒されている状況との温度差でパニックになりつつも、中二病をさらに拗らせた一冊の本に対して笑い吹き出してしまった。



「ふっ、 魔王って!? 取扱説明書って取り扱えないから魔王なんでしょ! でも、ここにあるって事は読めってことだよね。 それにしても魔王って拗らせすぎじゃないか。」



 興味本位で開いて見る。



 はじめに。

 この本を手にしたあなたはきっと魔王です。ですから、この本を参考に自分をプロデュースして立派な魔王になりましょう。きっと良い魔王生活が送れるはずです。



「つまり俺が魔王って事? そうだよね。 いやどうなったらそうなるんだよ。 俺はたしか‥‥。 たしか‥‥。 思い出せない。 でも、俺には知識って物がある。」


 深く考えようとすると激しい頭痛が襲う。だが、何かを思い出せそうな感覚がある。


 しかし、激しい頭痛に負けて考える事を止め、疑い半分自分のなりたい魔王像について考えてみる。


「もし、俺が本当に魔王だったらどうしたいんだ? 侵略か? 虐殺か?」


 自分と魔王との像について差がありすぎてビジョンがなかなか見えてこない。

 魔王について少しでも考えていた事を恥て、興味本位で読み進めていく。



 自己プロデュースについての後には魔王の役割について書いてあるので読み進めていく。


 魔王は主に人間を殺し、ダンジョンポイント(DP)を回収してありとあらゆる多種多様な生物を支配する事が目的であるらしい。


 俺のなぜあるのか分からない知識の中ある魔王像とも一致している。まるで、何かのゲームなのでないかと思ってしまうくらいに認識と一致する所が多い。


 その後も読み進んでいく。


 どうやら魔王には魔物と呼ばれる配下を創り出す事が出来るようだ。


 そして、その魔物を生み出すために必要なのはルーンである。

 ルーンは始めはご丁寧に5個支給されるらしい。でも、その最初の5個のルーンにランクなど無く魔王としての本来の素質、能力によって勝手にランクや性質が決まるようだ。


 これで一通り魔物の創造するための知識を読み終たので魔王の取扱説明書を参考に最初にしなくてはならない魔物の創造をする事にした。


 俺の手元には無色透明なダイヤモンドのような六角形の美しいルーンがある。


 創造する魔物のイメージは大きくてもふもふしたキツネの魔物だ。

 俺は大きいもふもふしたキツネにしがみついて、もふもふしながら移動するのがいつの間にか夢だ。目覚めてしまったのだ。


 俺は気合いを入れて全てのルーンを握りしめながら唱える。



「創造!」



 手元にあったルーンは勝手に手から離れて浮遊を始める。

 グルグルと宙を漂いながら五つの色を発し始める。


 その色は、赤、緑、黄、青、白。


 5色の色のルーンがそれぞれ負けず劣らず自己主張をし始め、それぞれの色のラインを空に残像として残す。


 その神秘的な光景に見とれながら魔王になったことを不覚にも自覚してしまった。


「ははは、俺は魔王になったんだ! 凄いよ! せっかく魔王になったんだ、出てこい、俺の魔物よ! そして、俺にそのもふもふをもふらせよ!!」


 螺旋状に空を駆け回るカラフルな五つのルーンが一つに交わろうとする。だが、ボーリングのピンが弾けるように部屋に散らばる。


「えっ、失敗なのか? 俺のもふもふの魔物がぁ‥‥。」


 硬く冷たい石材の床に膝から崩れ落ちる。


 だが俺は諦めなかった。


「もう一回だ! 俺は夢を諦めない。 魔王となった俺はもふもふの王国を作るんだ!!」


 5個のカラフルルーンを拾い集めて再び創造をしようとするが結果は同じ。


 何回やっても同じだ。


「ちくしょー。 どうすればいいんだ? そういえばもう一つ魔王の力があったはずだよな。 俺の能力は変化だ。 変化? んっ? 何を変化させるんだ?」


 再び薄い冊子に目を通すと、どうやらダンジョンブックという物を使って、DPと何かを交換することが出来るらしい。


 魔王の取扱説明書の中に書いてあるようにダンジョンブックを手元に出してみることにする。


「《我の魂、形どれ!》」


 体から黄色い光が一点に集まり、胸の高さで一冊の本になり浮遊をする。


 それにしても薄いな。 表示を除けばこの冊子と変わらない薄さだぞ。


 俺はダンションブックを開いて何か良い物はないか探す。


 ダンジョンブックには自分のステータスが最初に書かれていた。


種族 魔王

 名前 ーー

 ランク  EX

 レベル 1

 MP 1000

 生命強度 100

 攻撃力 G 防御力 G 魔力総量 G 体力 G 俊敏性 G 運 G 特性 EX


特性

 魔物創造:魔物一体につき、ルーン二つを使って創造することが出来る。


 ルーン創出:三ヶ月に一回、自分または得た属性のルーンを作り出せる。


 魔王の瞳:魔物のステータスが可視化できる。


 ダンジョン総権限:ダンジョンの全ての権限を持っている。


 名前命名権:魔物に名前をつけることができる。


 ユニークスキル:【変化】。


 ???:未解放。



 これが俺のステータスだ。

 Gはきっと最下位評価だろう。弱すぎないか?


 それはさておき、配下の魔物の事や自分のダンジョンの設定についてのページがあり、最後の方に購入欄があった。。


 俺の初期のDPは大体1000くらいだ。購入欄の商品と比べると多い訳ではないが少ない訳でもない。


 すると、サトウキビをいう植物が目に入り購入した。


 他にも、米や小麦などがあったが、なんとなくサトウキビにしてみた。


 サトウキビを購入するとダンジョンブックからの溢れ出た光がサトウキビの種が入った小さい布の袋が物理現象を無視して形づくる。


 俺はサトウキビの茎が出てくると思ったが現実は甘くなかった。


 有限なDPでプランターと土を買って種を植える。


 俺は魔王の取扱説明書に魔法があったことを思いだして、水まきがてら水魔法の練習をする。


「ウォーターボール!」


 バケツくらいの水が単純な魔法陣から出てきて空中を浮遊するが気がつくと地面を濡らしていた。

 初級魔法は生活の基盤にもなるために、覚えておいてそんはないが少し難しい。


 俺は魔王の取扱説明書に書いてあるように力を注ぐ。

 魔力を使おうとすると不思議な感覚に陥る。


 そんな感覚を感じながら俺は4回目で成功して、魔方陣から水が発生して浮遊する。


 俺はその水をサトウキビに掛ける。


 ほっと一息ついて辺りを見回すと床がびちょびちょだったために、今度は風魔法で乾かした。


「そよ風の遊び!」


 そして、プランターのサトウキビの種を見ると、発芽してどんどん育っていく。


 まじか! 早すぎないか?


 気がつくと俺の背丈よりも大きく太いサトウキビが出来上がった。


 俺は実験的に魔王のユニークスキルの【変化】で甘い汁と、植物の繊維を分ける。


 植物の繊維は炎魔法で燃やし、甘い汁は固体に変化させた。


 そうして、出来上がったのは飴だ。


 一口舐めてみる。

 ただの砂糖の塊で甘い以外に味は無かった。


 飴は少し残念だったが、自分のユニークスキルの使い勝手は分かった。


 なかなか使い易い能力だ。


 気分転換を終えた俺は再びもふもふの夢を叶えるべく、魔物の創造をする事にした。


「創造!」


ルーンが交わろうとするときに弾けてしまう。


 俺は本当にガッカリした。

 それと、基本的な事も出来ないのかという自分に対しての怒りも感じたためにベッドを購入して、意地焼いてふて寝をしたのだった。


【残りDP:800】


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