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プロローグ 地球破壊

非常ベルじみて耳障りな目覚ましが耳元で鳴る。

手探りで目覚ましを止め、時計を見る。

時計は6時55分を指していた。


目の開けきらない彼は星進(ほしすすむ)

日本の宮城県仙台市在住のうだつの上がらない大学生である。

何年生かは重要でない。ともかくうだつの上がらない大学生なのだ。

彼は特段頭が回るわけではなく、恵まれた身体を持つわけでもない。

毎朝コーヒーを飲み、ニュースを見るしか特徴がない。

うだつの上がらない大学生である。


彼は15分ほどして漸く布団から出た。

椀にミルクとシリアルを盛り、テレビを付けた。

「速報です。エベレストが噴火しました。」ニュースキャスターはにわかに動揺していた。

彼はぼんやりと思った。「エベレストも噴火するのだなぁ」と。

胡乱なコメンテーターが手に顎を乗せて自信げに喋った。「原因はバタフライエフェクトかもしれませんネー。ほら、蝶の羽ばたきで竜巻が起こるあれですよ!あれ!」

進は奇しくも画面の中のニュースキャスターと一緒に苦笑いをした。


朝食を取り終わったあたりで、水を入れたヤカンを火にかけた。

身支度を始めようとした所でインターホン-こちらは非常ベルじみたけたたましさはないが耳障りなのは変わらない-が鳴った。


彼はパジャマのままぼんやりとドアを開けた。

そこには、”普段と違う”友人が立っていた。


この人が良さそうな顔の友人の名は茶碗冬来(ちゃわんふゆき)

どのくらい人が良さそうな顔なのかといえば、詐欺にあっても被害届を出さず、そればかりか詐欺をする境遇に同情すらするほどの人が良さそうな顔である。

”普段と違う”というのは、その人の良さそうな顔に隠しきれぬ深刻さが同居していたということだ。


冬来はすかさず口を開いた。「地球は壊されるんだ。必要な手荷物をまとめて逃げるんだ」

「あー、なんか吸った?」

「マジなんだよ」隠しきれぬ深刻さは声にも搭乗していた。

「なんで地球は壊されなくちゃあなんないんだ?」進は深刻さをぼんやりと感じ取ったが、深刻さの深刻さは分からなかった。

「世界バタフライエフェクトのせいさ」

「ははぁ、エベレスト噴火もそれのせいだな」皮肉をともなう冗談である。

だが冬木は今の言葉で深刻さが爆発したのか、飛び跳ねながらまくし立てた。

「エベレスト噴火だって!?エベレストは火山じゃあないんだぞ!マジなら本当にヤバい!早く荷物をまとめるんだ!」


火にかけていたヤカンが力任せに吹いたリコーダーめいた音を出し、二人の注意をひいた。

だが、彼らがヤカンを気にかけたのは一瞬、すぐにテレビに刮目させられた。


「速報です。世界各地で竜巻、暴風雨、大雪、地震、噴火、電子機器爆発、無差別無秩序オリンピック開催などの大災害が凄まじい勢いで発生しています」怪訝なアナウンサー!

「地球のすべての国家が無政府状態となり、壊滅しております。しかし、日本の宮城県仙台市のみは一切災害が発生しておりません」怪訝な専門家!

「一連のどさくさでごく一部の高所得者以外は人権を剥奪され、ごく一部の高所得者は人権を国家崩壊後も保護するでしょうネー。高所得者から大量に税金を徴収し、低所得者を排除することで国家繁栄につなげようという狙いでしょうネー。これにより、全世界の平均所得が大幅に増加しますネー。これは人類社会変革のチャンスですよ!」胡乱コメンテーター!


進は意図せず声を潜めて言った。「マジ?」「マジだね」

「周りが静かすぎないかい?」「きっと、誰も本当だなんて思っていないんだよ」

「ぼくはきみを信じるべきかな?」「信じるさ」

進は皮膚感覚で「冬来の言っていることは全て本当だし、彼に従ったほうがいい」と確信した。

「手荷物をまとめてくるよ。ところで世界バタフライエフェクトってなんだい?」

「手伝いながら教えるよ」


世界バタフライエフェクト現象の原理は極めて複雑である。

どのくらい複雑かというと、平均的な地球人であれば、1兆年以上の時間が必要である。

また、この所要時間はスムーズに進んだ場合であり、途中で躓いたり発狂したりするともっと時間がかかる。

その複雑さゆえ、原理を理解できた者はごくごくわずかしかいない。

その中で、理解しつづけている者ともなればさらにごくごくごくごくわずかしかいない。

理解した瞬間に、あまねく恐怖と妄執を体験する事となり、大概発狂し、どうにか知識と自我を破壊しようとするためである。


しかし、現象そのものは極めてわかりやすいものである。

まず、国々や星々と同様に世界も多数存在する。

不死蝶と呼ばれる蝶の羽ばたきによって、あまねく世界に影響を及ぼすのである。


「今回のケースは不死蝶の羽ばたきで、地球が壊されるというわけさ」

「ひどい話だな。でも、なんできみはそんなことを知っているんだ?」備蓄していた缶詰や水などをバッグに詰め込み続ける。

「実はぼくはこの地球世界の人間じゃあなくて、田畑世界の人間なんだ。地球世界は異世界と関わりが無い世界だからあの現象は知られていないけど、ぼくらは知っているんだ」

「なるほど。じゃあなんでぼくにそんな話をしたんだ?」両親の写真とスマホもバッグに入れた。

「さっき話したあの現象の原理は複雑過ぎて完全な演算はできないけど近似値は出せるんだ。近似値では、全世界できみだけが不死蝶を捕まえることができるんだ。」

「ぼくが捕まえられなかったら?」バスタオルをバッグに入れようか考えて、やめた。

「すべてが終わる。地球滅亡はその先触れなのさ。だからぼくはきみを異世界転移させて、ぼくと一緒に蝶を探してもらわなければならない。」

「それからバスタオルは絶対に持っていってくれ。絶対に役に立つから」

冬来は思い出したように時計を見て、叫んだ。

「地球完全破壊まであと42秒だ!急いで!」遠くで瓦礫が宙に浮かび上がっている!黙示録的光景!

「食料よし!貴重品よし!バスタオルよし!準備よし!」

「じゃあ転移させるよ!」一瞬のうちに二人は眩い光につつまれた。

DOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!


続く

読んで面白ければ評価を、つまらなければ批判をお願いします。

何が面白くて何がつまらないか自分でもわからない部分があるので、読者の皆さんの意見を参考にして、自分を高めていきたいと思っております。

では、よろしくお願いいたします。

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