本屋の手伝い
今作品が初めての作品ですので、暖かく見守って頂ければ幸いです。
本屋の日常
魔物が人間を殺し、喰らう世界。
それに対抗するように人間も進化した。異能と呼ばれる、自然の理を曲げる力を手に入れて。そして、人間には必ず異能を持つ事が世界の理となっていった。
「あぁ~あ。誰か、本を買いに来てくれねぇかな~」
閑古鳥が鳴いている本屋で独りで呟く。
俺は王都にある小さな本屋の跡取りとして、働いている。俺は昔、体を鍛えていた為少し筋肉質ではあるが線が細く、身長は160㎝とあまりない。さらに顔は特に特徴も無く、平凡な顔をした男である。
本屋は俺独りで店番をしているが、厳密には独りではない。この建物は1階が本屋、2階
~3階が住居となっているため、今現在2階で父が執筆中で、多分3階で母が俺の部屋の掃除でもやっているところだろう。
そして、ここはラーギスという国の王都にある小さな本屋である。王都にあるにもかかわらず、ここの本屋が繁盛していない理由は主に二つある。
一つは父が作家であり、経営については素人レベルであり、そこまで経営に興味が無いこと。
一つは父は、物語系の本や、植物や動物についての本等、執筆に活かせるあるいは、必要な本しか仕入れようとはしないことだ。
父曰く、「この店は利益を目的として、作った訳じゃない!」との事。正直、意味が分からない。
生活をするために、もっと街の人達に需要がある本を揃えろよ!と意見したら、母に「お父さんに反抗するとは悪い子ね!」と言われ、母に拳骨をもらったので、経営についてはあまり口出しが出来ていない。もう、する気も起きない。
なぜ、正論を言ったのに怒られるのか納得はいかないが、納得せざるを得なかった。理不尽だ。
そして、店には父親が執筆した本が12種類ある。そう、種類だ。本の数は数えたくないが、二つの本棚が埋まるぐらいとだけ言っておこう。正直作り過ぎだ。
本を無駄に製造し過ぎて、金が無くなっているのか?とよく聞かれるが、そうではない。単純に父の経営方針が悪いだけである。
なぜ、父が無駄に製造しているのに経営に響かないのか。それは父が「紙」を生み出す、生産系の異能持ちだからである。1日に生み出す量には限りがあるらしいが、あまり関係がないとの事。あまり興味が無いので、何枚生み出せるのか知らない。1日の執筆に支障が無い程度だろう。
カランカラン。本屋の出入り口に付いている鈴が鳴る。
いけない、いけない。くだらない父の事なんか考えていないで、仕事に集中しなければ。
「いっしゃいませ」
俺は素晴らしい営業スマイルを来客者に向けて、挨拶をする。
「どうも~。営業中に悪いけど、明日の仕事の出勤時間について変更のお願いに来たんだけど。今、大丈夫かな?」
入店早々俺に仕事の話を持ちかけたのは、俺が世話になっている友人のセリアだった。