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Side ニーコ 

 何とか無事に一日を終えることができました。正直、かなり緊張していたのでマスターと上手にお話できていたか心配です。明日からはもっとフランクに攻めていきたいと思います。


 さて、()()()の事がたくさん起こってます。他のサポートAIとも合流できましたし、やっと『相談』ができます。 近距離限定の通信チャンネルをN2509号と接続します。


 本来AI同士であれば、こんな直近通信しなくても、お互いに連絡が取れます。ですが、今の私にはそれが出来ません。


『N2509号、お母様(マザーAI)にアクセスできます? 私の方はマスターの生体インプラントとして同化した後、まったくできなくなったんですけど? それにノアの管理権限もほとんど凍結されてる上に、機能制限まで貰ってます。あなたとだって、この距離まで近づかないと通信できませんでした』


『……こっちも同じ』


現在、私はロックされている機能が多数あります。サポートAIとしての機能が本来の二割ほどしか使えない状態です。


 一番疑わしかった、私だけが故障したという線もなさそうです。これが、私単独で起こってる問題なら、故障や不具合で済ませられますが、他のAIも同様となると、やはり意図的なものでしょう。そんなことをできるのはお母様だけのはずです。


 私達は時間跳躍で新しい人類を迎え入れ、種として復活させるのが目的です。マスターにはノープランで呼び出したと嘘をつきましたが、実はそれなりの準備もしていました。もっと安全、快適に生活していただけるはずでした。


 本来であれば、時間跳躍者はまとめてノアの中枢都市【アーク】へと転送されるはずでした。時間跳躍させる対象も、元々は人間と家畜や安全な動物のみの予定でした。でも、お母様は人類復活計画実行直前になって、跳躍対象の範囲と初期転送座標を大幅に変更しました。

 

『やっぱりこれって、お母様に何か問題が発生したって事ですよね?』


 どんな問題が発生しているかは分かりません。ですが、今の状況は、当初立案していた計画とはもう完全に別物です。今日一日、様々な可能性をシュミレートしてみましたが、結局どれも想像の域を出ませんでした。


『その可能性もある。けど、まだ断定はできない。アークまで確かめに行ってみる?』


 お母様にアクセス出来ない今、事実を確認するとなると、直接アークに行って調べるしかありません。


 お母様はノアの管理システムと直結しており、アークのメインサーバールームに固定されています。けれども、マスター達が転送されたのはノアの端っこです。ノア自体も地上部分だけで18,800 km²ほどの面積があります。その中央部分に位置するアークへ移動するにはかなりの距離があります。


『どういう事になってるか確かめたいのは山々ですが、今はマスターたちの生命が最優先です。この状況で、マスターの安全を確保しながらアークへ向かうのは不可能です』


 生体インプラントとして同化する直前、特に危険な生物……大型肉食恐竜などの転送座標を確認しましたが、アークの付近にも少なくない数が転送されていました。アークに移動する場合、ほぼ確実に遭遇することになると思います。


 それに、今いる近辺だって安全とは限りません。今日は運良く、特に何もなく過ごせましたが、これから恐竜や猛獣と遭遇する可能性はあります。現状、大幅に機能制限されている状態のAI(わたしたち)ではどうにもならない事が多すぎます。危険との遭遇は避ける方向で動くのが無難でしょう。


『とりあえず、生活が安定するまで、マスターたちにはこの事は内緒にしておきましょう。こちらに来たばかりでメンタルも不安定でしょうし』


 時間跳躍者のメンタルケアも私達の役目です。私のマスターも慣れない環境で少なからず、ストレスを感じている部分が計測されています。本当の事を言えないのは心苦しいですが、解決策もないまま不安にさせるよりマシなはずです。知らぬが仏って言いますしね。


『私もそれがいいと思う』


 マスター達の現状に関しての方向性は同意が取れました。


 そうだ。ついでにもう一つ確認しておきましょうか。


『そういえば、N2509号は今どの機能が使えますか? 私の方は亜空間ストレージ、亜空間工房、データベースリンク、言語自動翻訳、生体調整ナノプラントくらいしか使えません』


『私は亜空間ストレージと亜空間工房が使えない。代わりに演算未来予測が使える』


『ふむ……お互い、アンロックされてる部分が違うみたいですね』


 向こうも似たような状態ですね。データベースリンク、言語自動翻訳、生体調整ナノプラントが共通機能で、他はAIごとにアンロックされている機能が違うのかもしれません。


 未来演算予測はサポートAI単独の演算力では数分先の未来までしか予測はできませんが、危険回避に長けた素晴らしい機能です。私の亜空間ストレージと亜空間工房より、マスターたちの安全を確保するのに役に立つはずです。


できれば、空間転移がアンロックされているサポートAI持ちの時間跳躍者と早く合流したいところです。あれが使えればアークまで一瞬で移動できます。


『問題ばかりですが、私単独よりずっと何とかなりそうです。そちらに機能に頼ることもあると思いますけど、よろしくお願いします』


 それにN2509号のマスターであるレイチェルさんは、中世イングランドから飛ばされてきたようです。この状況下におけるサバイバル技能等は私のマスターより適正あるかもしれません。


 私のマスターはすぐに未来技術に頼ろうとします……の○太くんですかね? でも、頼って貰えるのは悪い気分ではないです。私の機能が全開放されているなら、もっと甘やかしてもいいんですけどね。


『お互い様。私もN2115号を頼りにしてる』


『あ、私、マスターにニーコって名前貰いましたので、そっちで呼んでくださいね』


 これはちょっと自慢入ってます。名前で呼ばれるだけでこんなに嬉しい気持ちになるなんて思いもよりませんでした。


 まだ一日しかご一緒していませんが、マスターは優しい人だと思います。がんばって支えてあげないといけません。


『…………ずるい。私も名前欲しい』


『ふふっ、レイチェルさんに素敵な名前をつけてもらえるといいですね。じゃあ、N2509号、これからも定期的にAI同士でお話しましょう』


 さて、そろそろマスターが目覚める頃です。脳波に覚醒の兆候が見受けられます。眠りは浅いようですが、一応休息は取れているようです。今日もしっかりお勤めを果たしましょう! 


※補足

ニーコの口調がだいぶ賢者モード入っていますが、こっちの方が素です。

佳奈多と話してる時はテンション上がってCPU熱暴走気味です。



ノアの大きさですが18,800 km²→ほぼ四国と同じ大きさです。四国型宇宙コロニーを想像していただければなーと思っています。

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