9. 冒険者スタイル
明日からの仕事が憂鬱なので今日中にもう一話上げます(何故)
翌朝、冒険者ギルドを再び訪れた。
早い時間のためか、数人の冒険者が掲示板の前で話している。
「こちらがお名前を入れた冒険者証になります〜」
プラムから渡された冒険者証……銅板には自分の名前と冒険者組合フェアリス支部、それと支部長バーン=ホーテンという名前が刻まれていた。
「他の町の支部でもこれを見せれば冒険者活動ができます。なくさないでくださいね〜」
「ああ、ありがとう」
さて、とりあえず冒険者として依頼を受けてみよう。
掲示板を眺めてみる。昨日はざっと見ただけだからな。
薬草採集……フェアリス北の森に生えているルガン草。5株につき30ゴル。
薬草採集……フェアリス北の森に生えているフラク草。根から引き抜くこと。1株につき50ゴル。
害獣駆除……町外れの廃屋に棲みついた大ネズミの駆除。30ゴル。
害獣駆除……フェアリス平原の泉周辺の魔物の掃討。200ゴル。
鉱石採掘……フェアリス西の坑道での一週間の鉱石採掘、及びその護衛。250ゴル。
探索調査……フェアリス北の森に新たにできた洞窟の調査。200ゴルから。
探索調査……フェアリス平原の大穴、大空洞の未踏領域調査・マッピング。500ゴルから。
魔物討伐……フェアリス平原のグラスビースト討伐。1000ゴル。
魔物討伐……フェアリス平原の地竜討伐。8000ゴル。
興味を惹かれたのはこんなところか。あとは掃除の手伝いとか家屋の修理とかの便利屋のような仕事ばかりだ。
鍵の捜索は俺が達成したからなくなっているな。
あと気になるのは、下三つの依頼は赤い色がつけられていることだ。
「この下の三つ、赤いのはなんか理由があるのか?」
「それは鉄級以上しか受けられない依頼です〜。危険ですので」
やっぱ大空洞は危険なんだな……一度死んでるからな。
「鉄級への昇格条件は?」
「年間で5000ゴル分の依頼達成と、適正に応じた審査試験を受ける必要がありますね〜」
こちらは一朝一夕には行かなそうだな。
大空洞の地図ならエイラが表示できるので書き写せば達成かと思ったが、やめておこう。悪目立ちしそうだ。鉄級になった時でいいか。
他で考えると……フェアリス北の森の洞窟調査か。ついでに薬草採集も受けていけば効率的だな。
『フェアリス北の森には大賢者様の研究施設がありました。何か良いものがあるかもしれません』
エイラからの情報だ。
それは期待できそうだな。探してみよう。
「じゃあこの洞窟の調査と、薬草採集を受けたい」
「結構難易度高そうなやつを受けますね。無理しないで、ダメそうなら言ってくださいね〜。命あっての物種ですから〜」
そう言いながらも、依頼の詳細を教えてくれた。
ルガン草は背が高く、螺旋状の葉がつく独特な形をしているらしい。これは見つけやすそうだ。
フラク草の方は数が少なく、上の方が周囲の草に似た形になるため見つけにくいとのこと。それで高めの報酬か。
俺の【看破】がそのカモフラージュを見破れるなら俺向きの依頼だな。
洞窟調査の方だが、最近になって森中央の岩山に突然開いた洞窟らしい。本格的な調査団の派遣前に構造などを軽く調べてくればいいということだ。
まあ、入ってすぐ行き止まりでした〜じゃ調査団組む意味もないからな……
危険があればすぐ逃げていいらしいが、詳細に調べるほど報酬が上がるらしい。
「頑張ってくださいね〜、コールさん〜」
プラムの気が抜ける声援を受けながら俺はギルドを後にした。
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一度宿に戻り、装備を整える。
革鎧を着け、外套を羽織り、上から背嚢を背負う。
冒険者は当然ながら冒険が本分である。
防具は最低限でできるだけ軽装にすることが多い。
部分的に金属鎧を着けるものはいるが、ゲームで見かけるような全身甲冑はそうそういない。さきほどギルドで見た中にもいなかったな。
ビッケやマノンの話によると、上位冒険者になると戦闘が主体となる討伐依頼などの場合に着るために全身甲冑を持っている者はいるらしい。
最低でも数千ゴルはするらしいのでどうせ手は出ないし、あんなものを着たら強みの速度が殺される。俺は軽装戦士でいこうと思っている。
そう言えば、魔術についても聞いた。
魔術は町の魔術屋でも習えるらしいが、【着火】などの初歩魔術でも最低で1000ゴルくらいするらしい。今はとても習う余裕がないな。
背嚢は重いが、緊急時にはワンタッチですぐに外せるように工夫されている。
邪魔にはならないだろうが、外してしまうと逃げる時に困るな。長丁場の探索なら別だが、ダンジョン探索時には外に置いていった方がいいだろうか。
とりあえずおばちゃんから買った携行食……堅パンと干し肉、それとロープのみ入っている。
行く場所によって必要なものは変わるだろうが、今回はいいだろう。戦利品(採取した薬草)を入れる必要もあるしな。
体に巻くポーチベルトはいろいろなものを携帯できるようになっている。
火打ち石や水筒、ナイフなど、使用頻度が高そうなものを入れておこう。魔法の松明もここに括り付ける。
最後に、鞘に収まった剣をベルトに装着する。
こんなもんかな。
これが冒険者スタイルだ。
やはり完全装備すると重いが、仕方ない。
「ゲーム的なインベントリやらアイテムボックスやらに放り込めればいいんだが」
『亜空間格納魔術は存在します。上位魔術ですが』
……まあ、そのうちだ。
今はこれで出発しよう。