4. スキル作成
『あと、スキルについてご説明します。ステータスの見方は分かりますか? とりあえず石版に表示しますね』
そうだ、それを聞くのを忘れていたな。
ゲームなら見れば大体分かるが、今回はちゃんと聞いておいた方がいい。
石版には自分のステータスが表示されている。
自分自身でも見られるが、見やすいので石版を見よう。
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コール
レベル 2 LP 1 SP 3 / 10
HP 95 / 100 MP 100 / 100
力 11 体 10 技 13 速 14 魔 10
スキル:
看破Lv1 気配察知Lv1 暗視Lv1
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……いつのまにかスキルが増えているな。
『スキルは、自分の能力を強化し行動をサポートしてくれます。習得するには、行動を強く意識して理解・実行してください。SPは最大値分まで取得でき、最大値は5の倍数レベルで上昇します』
暗闇の中で神経を集中して敵を警戒しながら歩いてきたからスキルを習得できた、ということか。
だが、スキルポイントが10しかない。スキルは厳選すべきだろう。
『SPはレベルの他にも技石を使うと増やせます』
アイテムで増やせるのか。それなら問題ないか。
……こういうアイテムは大抵レアなんだよなあ。
「俺が最初にもらった【看破】はスキルなのか?」
『はい、あなた個人の魂に刻まれた固有スキルです。【探査】や【視力】の効果を内包している上位スキルのようですね。この世界に存在しなかったものですが、召喚時にこちらで解析して組み込んであります』
もらったんじゃなくて元から持ってたのか。バグを見つけるのが仕事のデバッガーだからかな。
思い返せば、暗闇でコウモリに襲われた際になんとか撃退できたのもこのスキルのお陰かもしれない。普通は視認するのも難しいだろう。
『コールさん自身の才能によるものですので、熟練度に応じて効果を特化させた派生スキルを作ることができます』
ほう、スキルを作れるのか。これは面白い。
『現在【看破】の熟練度は1なので、一つだけスキルを作れます。【看破】の派生、重視したい効果を強くイメージしてください』
【看破】に合ったスキル……
隠し扉とか宝箱、自分で見つけられる自信はあるが、幻術的なやつで隠されてたら困るな。
隠蔽や隠形を見破るスキル、なんてどうだろうか。
考えていると、手の触れているところに徐々に新しい表示が浮かび上がってくる。
【真眼】、これが俺のスキルか。
『これで完成です。スキルを使うほど熟練度が上がりますので、どんどん使ってください。熟練度が上がればまた新しいスキルを作成できます』
もっと作れるのか。どんなのを作るか考えておこう。
「他にどんなスキルがあるか教えてもらってもいいか?」
『では、基本的な戦闘系スキルを出してみます』
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【剣術】
【短剣術】
【槍術】
【斧術】
【弓術】
【盾術】
【格闘】
【投擲】
【探査】
【隠密】
【運動】
【詠唱魔術】
【精霊魔術】
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『そのあたりは、基礎的なスキルですね。スキルの存在を意識して行動すれば、すぐに習得できるはずです。他のものは個人の才能によるところが大きいため、取りたくても取れない場合もあるかもしれません』
おお、魔術があるな。是非とも使いたいところだが……
「詠唱魔術ってのは、取得すればすぐ使えるのか?」
『そもそも呪文を覚えないと習得すらできませんね。他の魔術師に支持して伝授されるか、呪文の記載された魔術書や巻物が必要となります。精霊魔術は精霊契約が必要になります』
なるほど、今は無理か。後のお楽しみにしておこう。
他は武器系が多いな。今は剣を持っているので、【剣術】スキルを意識して使えばいいか。
「そういやさっきの大賢者の贈り物の中に剣はなかったな」
『二振りほどあったのですが、最初の頃に召喚された方が持っていかれました。剣は人気ありますね』
「……他の贈り物貰えないよな?」
『ルールに違反する行為はダメです』
だよな。エイラは仲間になったとはいえ、大賢者の定めたルールを破ることはできないか。ルールに反しない範囲でズルしよう。
「ちなみに、必殺技みたいなスキルはあるのか?」
『武器スキルの派生でそれに近いものはありますね。自分の目指す戦闘スタイルを意識して使ってください』
「例えば?」
『【剣術】であれば、力で大剣を振るえば【剛剣】、速さで翻弄するような戦い方であれば【疾風剣】を習得できるようです。なんにしろ使い手の理解とイメージ次第ですね』
【剛剣】か【疾風剣】かであればやはり、ステータス的にも【疾風剣】のほうが向いているのだろうな。
だが、イメージが大事なのであればあまり先入観は持たない方がいいのか。だからエイラもあまり例を挙げて説明しないのだろう。
スキル周りはこれでいいか。もう一度確認しておこう。
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コール
レベル 2 LP 1 SP 4 / 10
HP 98 / 100 MP 100 / 100
力 11 体 10 技 13 速 14 魔 10
スキル:
看破Lv1 気配察知Lv1 暗視Lv1 真眼Lv1
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まずは【剣術】を覚えたいところだな。
「よし、行くか。まず寝床と食料をなんとかしないとな」
『お供します、コールさん。この辺りの地形は把握しています』
なかなか頼もしいな。
俺はエイラの宿る金属板をポケットに入れ、来た道を引き返すことにした。
狭い通路をズリズリと進んでいく。無駄に長くて暇なのでエイラに尋ねておこう。
「君を作った大賢者ってのはどんなヤツだ? そいつも転移……転生者なのか? あれ、そもそも俺はどっちだ?」
手の平を見ると、手相は元の俺と同じだ。手は顔よりも普段から見るものだからな。見間違うはずもない。
『あなたの体は元の世界で死んだはずです。世界の壁を越えられるのは魂だけですから。召喚陣により新しい肉体を与えられてますので、転生ということになります』
「え、じゃあ俺人間じゃないの?」
『肉体は魔法創造生物の類ですね。人間の機能は全て備えていますし、魂は人間なので、ほぼ人間だと思いますが』
ガーン、ちょっとショック。
『最初の質問にお答えしますと、大賢者様は転生者です。召喚陣はなかったので、たまたまどこかの生物に宿ったのだと思いますが、私も詳しくは分かりません。私が最後にお見かけしたのは100年ほど前ですが、それ以降生きているのかも不明です』
そんな昔から行方不明なのか。ゲーム知識があるってことは自分と同じ時代から来たはずだが……
まあ、異世界だしな。時の流れが違うんだろう。
そんな話をしているうちに隠し扉の庇に出た。
ここから先は敵がいるはずだ。慎重に行こう。