幕間『夢』
俺は、夢を見ていた。
暗闇の中を一人でたっている夢。
『――ト』
声がする。
その声はひどく曖昧で、何を言ったかはわからない。
たが、その声は確実に俺に向けられていた。
なぜかはわからない。だが、分かるのだ。
俺はこの声を知っている。俺は声に何度も救われている。
だが、わからない。俺には思い出せない。
『ロプト・タナトス――』
俺を呼ぶ声がはっきりと聞こえた。
暗闇で、ただ立っていることしかできなかった俺は何故か動けるようになる。
「――――」
突然動けるようになったので、思わず転びそうになった。
なんとか踏ん張り、周りを見渡すもそこは何も無い暗闇の空間しかない。
「お前は誰だ!!」
俺は大声で叫んだ。
俺の声が暗闇を反響し辺りに響き渡る。
だが、なんの反応も見受けられない。
気配が感じられないのだ。
そう感じた瞬間、またあの声が俺に投げかけらる。
『ロプト、お前はなぜ先に進まない?』
ぐわんと頭が揺れる。
意識が軽く飛びそうになり、踏ん張りつつも周りに気を配っていると、ふと前方に何かの気配が現れた。
「くそっ」
その気配は少しずつ、俺に近づいてくる。
だが、俺は意識が朦朧としていて、もはや立つことすらままならない。
『お前は、全てを思い出さなければならない。お前のためにも、世界のためにも』
「――――」
一気に意識が飛ぶ。
とうとう俺は地面に膝まづき四つん這いになってしまう。
それと同時にあの気配が目の前まで来たのがわかった。
これ以上は意識を保てない。
諦めて、意識を手放そうとした時あの声が耳元で囁かれた。
「『だから、早く起きてくださいよロプト――』」