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忘却の英雄  作者: 高原 巡
赤濡れ討伐編
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第四節『魔獣の襲来、その二』


「ロプトさん! 無事ですか?!」

「――――?」


 エイルの叫びに俺は我に返った。

 俺が最後の一匹のアリを倒したと思った時、まだ生きていたアリに捕まり爆発を引き起こした。


 ――はずだった。


「俺は、なんで無傷なんだ?」


 周りを見渡すと、さっきまで動いていたアリが倒れていた。

 まるで、さっきまで動いていたのが嘘のように静かに死んでいる。


「ロプトさん! 怪我はしてませ――んね服の綻びもない……ロプトさんあれをどうやって避けたんですか?」


 重症のエイルは片足を引きずりながら、俺の元に近づいてきた。


「お、おい安静にしてろって、重症だろ?」

「今はそれどころじゃないんですロプトさん。あの距離の爆発を、どうやって避けたんですか?」


 身体の重心が安定しないエイルを支えると、再びエイルは質問を投げかけてきた。


「俺は何もしていない、不発だったんじゃないのか?」

「そんなわけが――」


 そこまで言うと、ちらと倒れているアリに目を向ける。

 その瞬間、エイルは言葉を失った。

 目の前の光景が信じられないのだろう。

 俺も完全にやられたと思っていた。


「不発、ですか? 本当に? ロプトさんは何もしていないんですよね?」

「ああ、何もしていない」


 するとエイルは黙り込み、険しい目で俺を眺め何かを呟いた。


「――が目覚め――でもあいつは――」

「おーいエイルー戻ってこーい」


 自分の思考にどんどんと潜り込んでいくエイルを呼び戻すのに、あと数分はかかった。




「で、これからどうするんだ?」

「そうですねぇ、家も無くなっちゃいましたし……」


 あの後、我に返ったエイルを近くの段差に座らせた。

 あの傷のまま立たせておくのは可哀そうだったからだ。


 彼女の傷の手当てに困っていると、エイルは「回復魔法が使えるので大丈夫です」と言って、自分で傷を治していった。

 魔法、とても便利なものだ。

 さっきエイルが戦っていた時に使っていたものも恐らく魔法なのだろう。

 こうやって、俺が魔法について感心している間に彼女の傷は癒え、落ち着いた表情を浮かべていたので俺は今後について訊いてみた。


「この近くに家はないのか?」

「無い、事はないんですけど、問題無く住めたのはあの一軒だけで他の家は、その、植物にやられてしまって住めないんです」

「それはきついな」


 いきなり住む場所が無くなってしまったらしい。

 今はまだ日が昇っているから大丈夫だが、夜になるとそうも言ってはいられないだろう。


 これ、俺たち大丈夫?


「まぁ、家はここから移動すれば何とかなります! それよりも――」


 横で座っていたエイルが身を乗り出し、ただでさえ近かった距離がもっと近くなる。

 思わず胸が高鳴る。

 そんな俺に構わず、彼女は口を動かした。


「ロプトさん、私に聞きたいことがあるんじゃないんですか? 私の事や自分の事、それにこの世界についても」

「――――」


 彼女の距離に緊張していた身体が、彼女の発言で脱力する。

 その通りだ。

 目覚めてからまともな説明を聞いていない。

 唯一聞いたのは、エイルが俺の部下だったという事だけだ。


「あぁ、その通りだよ。教えてくれ、エイル」

「はい、ロプトさん。私でわかることならなんでも教えます」


 そう言うと、エイルは可愛く微笑んだ。


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