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忘却の英雄  作者: 高原 巡
赤濡れ討伐編
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第二節『エイルとの再開(?)』


「ロプトさん起きたんですか? でも魔力がない……いや、そもそも今の身体で魔力回廊があるのか……」


 彼女は氷柱を散らした後、手を顎に当て何やらブツブツと悩み始めた。

 難しい顔で少しの間悩んだ後、急に顔を上げ近づいてくる。


「え、ちょっ」


 湖から出てこっちに歩みを進める彼女に俺は目を瞑る。


「――? どうかしたんですか?」


 そんな俺を不思議そうに見つめながらさらに歩みを進める彼女の姿に俺は赤面した。


「いや、その、服、服を着てくれ! 目のやり場に困る!」

「あ……忘れてました」


 さっきまでは幻想的な光景に見とれていたが、さっき殺されかけたせいで正気に帰ってしまった。

 冷静になると、全裸なんて見ていられない。

 ぽかんとした顔でこちらを見ていた彼女は背を後ろに向け、湖の奥にジャブジャブと進んでいった。


「……まだ見たいならもう少し水浴びしましょうか?」

「いいからもう行ってくれ!!」


 頬を赤らめながら振り返る彼女に、俺は思わず叫んでしまった。






「結局、君は誰なんだ?」

「私ですか?」


 あの後、湖の奥から服を着た彼女は俺の手を引きながら、笑顔で俺が目覚めた家に戻ってきた。

 どうやらこの家に俺を運んできたのは彼女らしい。

 俺が最初に目覚めた時にいたのも彼女と自白してきたのだ。

 家に帰ってからお茶を作り、満足気な表情でお茶を飲んでいる彼女に俺は質問をしていた。


「私はエイル、エイル・グランシールです。ロプト・タナトス配属の部下って事に世界的には知られていますけど……」

「ロプト・タナトス?」

「あなたの名前ですけど覚えていませんか?」


 困った顔で心配する彼女、エイルは悲しそうに俺に語りかけてきた。


「ああ、全く思い出せない……俺の事も君の事も……配属の部下って事は、俺は身分が高かったのか?」

「はい。あなたは――」


 エイルが言葉を発しようとした瞬間、突然大きな爆発音が外から聞こえた。


「――くっ。もう魔獣が湧いてきましたか」


 エイルは妬ましそうな顔で椅子から立ち上がると、部屋の隅に立てかけてあった杖を持った。

 エイルの身長ほどありそうな大きい杖。先端には、青い宝石がはめ込まれている。


「ロプトさんは危ないのでここから出ないでください。私が片付けてきます」

 そう言って家を出て行こうとするエイルにたまらず声を掛け返した。

「片付けるって何をだよ!」

「魔獣ですよ」


 俺に振り返り、エイルは言うと今度こそ本当に家を出た。


「……魔獣って、なんだよ」


 ぽつんと置いていかれた俺はそう呟きながらベッドに寝転んだ。


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