地獄の戦場
────.....不滅の部隊、それは“メランドリック大帝国”の軍部においての最前線の部隊。
戦場を速く駆け、どの部隊よりも早く戦場へ行き、どこの部隊よりも戦果を挙げる部隊である。
しかしその反面、誰よりも早く死に、どこの部隊よりも隊員の入れ替わりが激しい部隊である。
───『誰よりも生き延びたいのなら、自分の思う良い人に導かれることだ。
良い先導者は、人を死なせようとしない。』────
私はその言葉を胸に、今日も生きています。
♢
時は、帝国暦139年。
昔のクラスメイトを集めて、クラス会を開いていた時のことである。
クラスの大体の人に嫌われていた女がいた。
名を、ツインメア・ナナルーシ。
その時の幹事が、その女のことを嫌っていなかったのもあり、不手際でクラス会に誘ってしまった。
その結果、彼女は来てしまった。
踵のある靴の音を鳴らしながら歩き、戸を開けた。
「やぁごきげんよう!」
別人のような容姿となって。
昔。とは言っても約五年前。
彼女は東洋の混血なのだろう特徴的な黒髪。それを耳の下あたりで切りそろえており、目はまるで時間のたった血の色のような葡萄茶。
その黒髪と葡萄茶色の瞳を際立たせるかのような透き通る白い肌。
その容姿から忌み嫌われていた。“呪われる” “祟られる”と。
それが5年前。
現在。基本的な色は変わってないが髪が腰あたりまで伸びた。
流した前髪に瞳と同色のメッシュが入っていた。そして何より変わったのは、無感情・無表情だった彼女が笑っているという事。
「私、ツインメア・ナナルーシです。」
お久しぶりです。と彼女は微笑んだ。
◆
黒い軍服に黒帽子に黒マント、そして黒髪。死神を連想させるような不吉な服装。
「さて、なぜ私が来たのかと申しますと、忠告に参りました。」
黒帽子の下で彼女は妖美に笑った。
「私は今、少佐であります。この歳ではありえないと言われるような出世をしてやっとこの位置につきました。
が、しかし。私はまだ軍部全体を動かすほどの権力を持ち合わせない。故に、.....このまま行けば1年後には国全体での戦争となるでしょう。」
登場早々に重すぎる話。
到底笑ってするような話ではない。
「覚悟をしておいてください。1年後きっと召集令がかかることとなるでしょう。その時は私が男性陣の皆様を戦場へとお連れいたしましょう。」
終始笑顔を絶やさず言い終え、腕につけていた時計を確認した。
「では、私はこれで。あまり暇ではないものでね。」
そう言って、“こげ茶の革のブーツ”を音を鳴らしながら去っていった。
「...私も腕を磨かなくては。」
つぶやきを誰に聞かせることもなく。