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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 11

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……知らない

「にいさま? おべんきょうは?」

「今夜はお休みしようね。見たい本があるんだ」

「……はい」


 根が真面目なせいで、『お勉強をお休みします』と言われただけでポーラがしょぼんとするのです。

 ノイエなんて早速ベッドに上がり枕を座布団代わりにして、『早く早く』とアホ毛で訴えかけてるというのに……ポーラよ。どうしてそんな悲しそうな目でこっちを見るの? 何よりこれだって勉強と言えば勉強だよ?


 ノイエに続いてベッドに上がり、僕を真ん中に3人並んで座って一冊の絵本を準備する。

 グローディアの屋敷で発見した三大魔女に関する絵本だ。表紙とかがボロボロだったから直しに出していたのが戻って来て……そのまま存在を忘れていただけのことです。


 そっと開いて中を覗くと、思いの外綺麗だったので驚く。

 腕の良い職人さんを紹介してくれたスィーク叔母様に感謝だ。


「さあ2人とも。これがこの世界に魔法を作った人たちの物語だよ」

「「はい」」


 綺麗にハモって2人して僕の肩に頭を預けて来た。




 最初の女の子は、荒れ果てた地に降り立ちました。

 人も草も木も……弱っていた大地を見て女の子は自分に出来ることを考えました。


『魔法があれば皆を助けられる』


 そう思い、そう願い女の子は魔法を作り出したのです。

 人には希望を、草には栄養を、木には潤いを……魔法の力でそれらを与えた女の子を、人々は『始祖の魔女』と呼んだのでした。



 次の女の子は、争いの続く地に降り立ちました。

 人々は豊かな土地を求め争い、戦いにばかり明け暮れるのです。それを見た女の子は自分に出来ることを考えました。


『魔法を使って戦いを止めさせよう』


 そう思い、そう願い、女の子は戦いを止める戦いを始めたのです。

 長い長い本当に長い時間を費やして、戦いを終えさせていった女の子を、人々は『刻印の魔女』と呼んだのでした。



 最後の女の子は、平和な地に降り立ちました。

 人々は平和に暮らし、豊かな暮らしを満喫していたのです。


『もっとこの暮らしを豊かにしてあげたい』


 そう思い、そう願い、女の子は魔法の力で色々な物を呼び集めたのです。

 沢山の物を呼び集め、人々に豊かな生活を与えて行った女の子を、人々は『召喚の魔女』と呼んだのでした。



 3人の魔女は人々を愛し、大切に想うからこそ大いなる力を与えられて振るえるのです。

 清き心を持って魔法を極めんとすれば……きっとアナタも彼女たちのようになれるでしょう。




 何となく物語と言うより魔法使いの心構えを説く本な気がする。

 子供向けの……入門書の一部だと思うと納得かな。


「ポーラはどの魔女さんが良い?」

「こくいんさんです」

「どうして?」

「はい。たたかいをやめさせたのはすごいです」

「そうだね」


 ポーラの返事に何故かノイエが彼女を猫可愛がりし始めた。

 実はノイエも刻印さん派だったのかな?


 でも刻印の魔女ってあっちこっちでとんでもない魔法を作り出している人なのよね。

 僕の感想だと……『核には核を』を地で行っているような感じがする。


『殴るの? 別に良いよ? ただしこっちも凄いの出しちゃうけどね!』って感じで互いにけん制させて争いを封じて行った気がする。そうじゃ無ければオーバーキルな魔法の存在がどうも納得いかん。


 始祖の魔女は魔法を作り出したというけど、だったらその理論はどこから持って来たんだろう?

 それに召喚の魔女なんて一番の問題児だよね? 各地で大規模召還をしまくった人だ。たぶんモミジさんのご先祖様もそんな召喚に巻き込まれてこっちに来た一族のはずだし。


 絵本自体を気に入ったのか、ポーラが手にすると何度もページを捲って絵を見ている。


「気に入った?」

「はい。とてもきれいです」

「だね」


 流石義母さんがグローディアに送った一品なのです。


「大切にするならポーラに貸しててあげる」

「はい。うれしいです」


 ギュッと本を抱いて目を細めたポーラが柔らかく笑う。

 何この子……本当に可愛いな。


「むっ」

「痛いですノイエさん」


 拗ねたお嫁さんが僕の顔を両手で挟むと、グイッと捻って自分の方に向けさせるのです。

 小さい子がいる場合そっちを優先しちゃうのはある意味人としての仕様だと僕は思うのですが……ポーラばかりと話をしてたらノイエが拗ねるのは当たり前か。


「ノイエは……この話を知ってる?」

「……大丈夫。思い出す」


 多分知らないな。無表情のまま視線が泳ぎだしたぞ?


「本当は?」

「思い出す」

「ノイエさん?」

「……」


 プイッと顔を背けてノイエがゴロンと横になった。

 イジメすぎて完全に拗ねてしまった。


「ごめんごめん。ノイエが可愛かったから」

「知らない」

「ん? ならポーラと」

「ダメっ」


 本気モードで体を起こす彼女を目で追うなんて出来ません。

 寝ていたはずなのに両膝を着いてジッと僕の顔を覗くスタイルへと変化した。


「うん。やっぱりノイエは可愛いな。ウリウリ~」

「……知らない」


 甘えて抱き付いて来るノイエを撫でてやりながら、そっと視線をポーラに向ける。

 こっちの様子を伺っていた彼女を手招きして呼び寄せる。


「ポーラもノイエを撫でてあげよう」

「いいんですか?」

「良いのです。お姉ちゃんは撫でられるのが好きなのです」


 勝手なことを言ってポーラの手を掴んでノイエの頭に触れさせる。

 優しく撫でだすポーラに、ノイエが何とも言えない様子でアホ毛を振り出した。


 ノイエの機嫌も直ったしこれで一安心だな。

 あとの問題は……もう少し詳しい本で三大魔女のことを調べないとな。絵本は所詮絵本か。




(c) 2020 甲斐八雲

 三大魔女のお話をザックリと。

 アルグスタの言う通りこの魔女たちは全員問題児でした。その理由は…語る日が来るのかな?

 ちなみにポーラを猫可愛がりしたのは、ノイエの中の刻印さんでしょうね

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― 新着の感想 ―
3人とも言ってないか変な修飾語がついてそう… 清き…心…?
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