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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 11

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こんどはわたしがころしてあげるから

 メリークリスマス!

 クリスマス的な要素は無く普通に本編の再開ですw

 セルスウィン共和国内某所



「面白いわね」

「……はい」


 深々と頭を下げる男に対し妙齢な女性が柔らかく笑う。

 共和国に住まう魔女……マリスアンである。


 彼女は今一度自身の目の前に広がる光景を見た。

 冬期が終わり姿を現した小型のドラゴンが、群れを成して躯となっている。

 それをした者たちは……動きを止めて待機していた。


「数はこれで全員?」

「はいっ」


 緊張から鼻を啜り男は自身の曲がった鼻を擦る。


 相手のことなど特に気にしていない魔女は、自分の手の中にある杖を見た。

 これを振って命じるだけで、ユニバンスが秘密裏に作り出した人間凶器を自由に操れるのだ。


「気に入ったわ。貴方達は全て私が引き取る」

「ですがマリスアン様」

「何かしら?」


 お目付け役として派遣されている武官に目をやり魔女は息を吐いた。


「勝手に亡命などお受けになられては困ります。ここは一度上の判断を仰ぎ」

「面倒臭いのよ」

「……はい?」

「だから面倒臭いのよ」


 軽く頭を振って魔女は手にしている杖を武官へと向けて突き出した。


「上の判断? それは誰の判断?」

「それは……」


 新年が過ぎ……異様と言うか異常なほど元気を取り戻した国家元首が、年甲斐も無く愛妾との行為で血が昇り過ぎ、意識不明となって以来国内の勢力争いは苛烈の一途だ。財務大臣派が勝つことは間違いないのだろうが、勝利を盤石にするために国の中枢は混乱を極めている。理由は買収と暗殺の横行だ。


「権力抗争大いに結構。私の預かり知らない所で好きにやるなら文句は言わないわ。でも私を巻き込んでやらないで欲しいの。分かるかしら?」

「ですが貴女の地位は」

「ああ……それなら返上するわ」

「……」


 本当に軽い感じでそう言い捨てた魔女はクスクスと笑う。


「もう共和国では私を満足させてくれないみたいだから……別の国と繋がることにしたの」

「……裏切ると?」


 話をしていた武官は腰の剣に手を伸ばした。


「人聞きの悪い。契約相手を変更するだけよ。私は今までそうして生きて来た。そしてこれからもね」

「……」


 静かに腰を下ろす武官に対し、魔女はただ一言放つ。


「その男を狩れ」

「なっ!」


 ドラゴンを退治し動きを止めていた兵器が全て動き出し、武官の男を瞬殺した。

 その様子を見せつけられた鼻曲りの男は、腰を抜かしたかのように地面に座り込んだ。


「本当に便利な道具ね。気に入ったわ」


 笑い腰を抜かす男に魔女は顔を向けた。


「貴方は私が雇ってあげる。これらの管理をなさい」

「はっはい」


 魔女は視線を兵器へと向けた。


「これがあればユニバンスの……あの憎き小娘ノイエを殺せるかしら?」

「……」

「誰?」


 カタカタと兵器の1人が動いているのに気付き、魔女は杖を振るってその者を自分の前へと歩かせた。

 やって来たのた桃色の髪をした女性だった。


「何か言いたいことでもあるの?」


 鼻曲りの説明では、彼ら彼女らに思考能力はほとんど無いらしい。その代りに力を得たのだと言う。

 人の形をした武器であり、命じられるままに行動する兵器なのだ。


 だが……桃色の女性は口を開いた。


「ころす……」

「何て?」

「ころす……ノイエは……わたしが……」


 全身を震わせて言葉を紡ぐ相手に魔女は一瞬キョトンとした表情を見せ、そして笑った。


「あはは~。良いわ! 貴女もあれが憎いのね? だったら私がその機会をあげる」


 一歩踏み込み相手の桃色の髪を掴んで、魔女は自分の顔を見るように仕向ける。

 髪を掴まれた女性は、視線の定まらない目が怪しい挙動を見せ続ける。


 だがマリスアンは口を開いてそれを命じた。


「なら貴女に命じるわ。どんな手を使っても良い……あのノイエと言う白い女を殺して来なさい」

「……は、い」


 暗殺指示を出し機嫌良く笑った魔女は、他の兵器と鼻曲りの男を連れてその場を離れる。

 ただ一人残った女性は……ゆっくりと、本当にゆっくりとその顔を歩いて来た道の先へと向けた。


「まっててノイエ……こんどはわたしがころしてあげるから……」


 声を発し、女性は一人歩き出した。


 ユニバンス王国へ向けて。




 ユニバンス王国王都ユニバンス郊外、ドラグナイト家の屋敷



「ん~」


 夫婦の寝室で鏡台の前に腰かけ、前後左右に顔を動かし色々と確認する。

 鏡に映るのは見慣れた自分の顔。でも他人の顔だ。


 この世界に来て約一年……たぶん一年。この世界の一年って何日なんだろう?

 そんなことはどうでも良い。とりあえず季節が一周したから一年だ。

 一度元の世界に戻ったせいか、不意にそのことを思い出した。


 僕って……こんな人間だったっけ?


 たまに自分が自分とは思えないほど強気で立ち向かう時がある。

 馬鹿兄貴と接している時とか、敵対貴族と接している時とか、ノイエの敵とか……そもそも本来の僕だったら、怖い相手を前にしたら尻尾を巻いて逃げているはずなんだよな。


 ノイエが居るから気が大きくなったのか?


 それもあると思うけど、たぶん違う気もする。

 きっとあれだ。えっと……あれだよあれ。心臓移植したら提供者の記憶が移るとかそんな感じだ。


 僕ってば魂をアルグスタさんの体に移しただけなので、ぶっちゃけこの体にはアルグスタ本来の何かが宿っている訳だ。そこに間借りしている僕が本来の彼に侵食されてもおかしくない。

 そう考えればたまに攻撃的になっても変じゃない。本来のアルグスタがしてることですから。


 このままアルグスタと混ざり合って違う人間になって行くかも知れないけど、それはそれで開き直ろう。だって僕には絶対に変わらない気持ちがあるから。


 鏡越しでベッドの方を見ると、無反動でノイエが上半身を起こした。

 自分の隣を確認して、フルフルと揺れるアホ毛がこっちを向く。すると彼女の視線がこっちを見た。

 やはりあのアホ毛は触覚の類では無いのだろうか?


「アルグ様」

「おはよう」

「ん~」


 軽い足取りでベッドを降りたノイエが無表情でやって来て抱き付いて甘える。

 やっぱりノイエだ。一年経っても可愛いままだ。本当に愛らしい。


「ほらノイエ。服を着て」

「はい」

「……だから離れなさい」

「ん~」


 頬を擦り付けてノイエはベッドへと戻る。


 うん。やっぱり僕は幸せなんだな。

 また鏡越しに後ろ姿のノイエを見つめて幸せを再度噛み締める。


《だからまあ……お前も言いたいことがあるだろうけど、今は僕に色々丸投げして一緒にノイエと幸せを噛み締めようよ。こんな人生も悪く無いはずだよ》


「喧嘩したって人生つまらなくなるだけだし」


 自然と出た言葉に、僕は鏡の自分に苦笑した。




(c) 2019 甲斐八雲

 マリスアンのお姉さまが行動を開始しましたとさw

 で、アルグスタ最大の問題を…本人があっさりとスルーしました

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