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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Side Story 03 追憶③ 『ユニバンス魔法学院~アイルローゼ記~』

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仲の良い幼馴染

「あん?」

「ん~」


 珍しい組み合わせが睨み合っている状況を目撃し、ソフィーアは辺りを見渡して駆けだした。

 向かう先は自身が魔法などを学ぶために通っている研究室だ。


「先生っ!」

「なに?」


 羽ペンを咥えた師であるアイルローゼが頬杖をついていた。

 その様子から完全に飽きて色々な感情を持て余していることが伺える。


「大変です」

「だから何よ?」

「ミャンとシュシュが喧嘩をしています」

「……」


 咥えていた羽ペンをペン置きに突き刺し、アイルローゼは急ぎ椅子から立ち上がるのだった。




「誰に喧嘩を売ったのか教えてあげるわよ!」

「ん~。ミャンは~気が~短い~のだ~」


 このっこのっこのっと拳を振るう青髪のミャンに対して、フワフワと回避する黄色髪のシュシュ。

 随分と長い時間いがみ合っていたのか、アイルローゼとソフィーアが辿り着いた頃には野次馬たちが列を作っていた。


「退きなさい」

「? ……どうぞ」


 突然の言葉で振り返った学院生がアイルローゼたちに場所を譲る。

"魔女"に喧嘩を売るような剛の者などこの場の野次馬には居なかった。


 弟子と共に最前列に来たアイルローゼは、そこで改めて2人を見る。


「昔っからシュシュのそういった態度が嫌いだったのよ!」

「ミャンは~自分で~起きれる~ように~なると~良いぞ~」

「だからそうやって世話している感じを出すのが腹立たしいのよ!」

「なら~洗濯は~自分で~すると~良いぞ~」

「畳むのは私がしてるでしょ! 貴女の分までちゃんと!」


 口喧嘩の内容が所帯染みていて面白くも無い。

 そもそも家事など自分でするべきことであって……ふとアイルローゼは自分の横に来た褐色の肌を持つ少女を見た。

 クリリとした目で少女が見上げて口を開く。


「アイルローゼも」

「リグ」

「はい?」

「対価としてお菓子を与えているわ」

「……うん」


 あっさりと降伏し、リグと呼ばれた少女はアイルローゼの腕に抱き付いた。


「ベッドの~シーツは~自分で~洗うと~良いぞ~」

「あんな大きいのは洗いたくないのよ!」

「色々な~使用済みを~洗う~わたしの~身に~なれ~」


 色々とは何か?


 立ち並ぶ野次馬たちは軽く首を捻って知恵を絞り理解した。

 結果としてシュシュに対する同情票が一気に集まった。


「アイル~?」

「きっとベッドでお菓子でも食べているのよ」

「そっか」


 まだその手の教育は速そうなので、アイルローゼは咄嗟に回避した。


「ミャンは~部屋の~掃除も~した方が~良いぞ~」

「あれはあれで完成しているの! それを『汚い』と決めつけて片付けるから大変なのよ。あの部屋に在る紙の1つでも結構重要なのよ!」

「へ~」


 冷めたシュシュの声にミャンが怯んだ。だがそれも一瞬で、直ぐに立ち直ったミャンは口を開いた。


「あったまに来た! 勝負よシュシュ!」

「え~。面倒~くさい~」

「良いからするの!」


 口喧嘩では勝てないと悟ったミャンが強引に話をすり替える。

 結果として2人は魔法で対決することとなった。


 喧嘩の理由は今だ解明されていないが、幼馴染同士が喧嘩をするのだから何かしらあるに違いない。

 そう思いながら……アイルローゼは何故か審判役を押し付けられたのだった。




「勝負方法はアイルの合図でお互いに魔法を使って、相手を拘束したら勝ちよ」

「ほ~い」

「ならアイル。後はお任せよ」

「……」


 どうしてこうなったと内心嘆きつつも、アイルローゼは両者を引き剥がし対峙させる。


「合図はコインを指で弾くから、地面に落ちたら開始ね」

「おうっ」

「ん~」

「なら……」


 懐から金貨を取り出しアイルローゼはそれを指で真上に弾いた。


 クルクルと回転し、宙に浮かんだコインがゆっくりと降下を開始する。

 キラッと日の光を反射させて、金貨は地面に落ちた。


「拘束!」

「封印!」


 2人の方が同時に放たれる。


「……それで?」


 同時に放たれた魔法を盾で回避したアイルローゼは、身構えている2人に目を向けた。

 ちなみに盾にされたソフィーアとリグが地面の上に転がっていた。


「どうして気づけるのよ!」


 慌てたミャンが距離を取る。


「シュシュは我慢していたけど、ミャンが事あるごとに私を見ているのが気になってね……警戒って必要でしょ?」


 アイルローゼの周りに居た野次馬たちが、蜘蛛の子を散らしたかのように駆けて行く。

 あの魔女に喧嘩を売ったのだ……どうなるかなど明らかだ。


「覚悟は出来てるんでしょうね?」

「え~い! シュシュ! こうなったらアイルローゼを迎え撃つわよ!」

「無理~だ~ね~」

「逃げるなっ!」


 ミャンに首根っこを掴まれシュシュの逃走は失敗に終わる。

 自身が盾になりそうだと気付いたシュシュも腹を括った。


「アイルローゼの~魔法~なんて~全部~防ぐ~」

「言ったわね? ミャンにシュシュ」


 クスッと笑ったアイルローゼが自身の両手に魔力を集めた。


「さあ来なさい。貴方達の拘束と封印なんてこのアイルローゼが打ち破ってくれるわ!」

「……うお~!」


 突貫して来たミャンの攻撃を回避している隙にシュシュが魔法を紡ぐ。

 反射的にシュシュの邪魔をし、アイルローゼはミャンから視線を逸らす。

 と、今度はミャンが冷静に魔法語を綴りだす。

 アイルローゼはそれを妨害し、魔法を完成させない。



 それから夕方になり日が沈むまだ3人の争いは、玄人好みいぶし銀な感じとなり……結局引き分けで終わった。




「喧嘩の~理由~?」

「そうよ」


 翌日フワフワしていたシュシュを捕らえ、アイルローゼは彼女を研究室に連れて来た。


「昨日の2人は確かに喧嘩をしていたはずよ。途中でミャンが私に対して欲情したからあんな展開になったのでしょう?」

「あはは~。流石は~アイルローゼだ~」


 事実だと認めシュシュは正直に喧嘩の理由を口にした。


「わたしが~アイルローゼの~ことを~綺麗だ~と言ったら~ミャンが~拗ねた~だけ~」

「そう」


 呆れて魔女は息を吐いた。


「結局貴女たちは仲の良い幼馴染なのね」

「ん~。かな~」


 これ以上の追及が嫌になってアイルローゼはシュシュを解放した。

 2人の幼馴染の本当の関係がどうなっているのか……知る人物は誰も居なかった。




(c) 2019 甲斐八雲

 何だかんだで仲の良い2人なのです。

 ミャンとしてはシュシュと言い争いになった時点で解決策を求めていた所でアイルローゼを発見したから彼女に対しての攻撃に切り替えたのでしょう。

 付き合わされるアイルローゼとしたらたまったものじゃないでしょうけどw

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