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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Side Story 03 追憶③ 『ユニバンス魔法学院~アイルローゼ記~』

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さっさとやるぞっ!

「何なのだ! あのガキはっ!」

「確かに天才だと言われてちやほやされているからと言って、大人に対しての敬意を全く感じませんね」

「ですが……あれの実力は本物だぞ?」

「ただの子供じゃ無いですかっ! 少し痛い目を見せてやればっ!」

「それでヘソを曲げて術式を刻まないことにでもなったら?」

「その時は国に対する反逆だ。正式な手続きを踏んであれを罰する」

「何を言うか! そんなことになったら、あれを国に取り上げられてしまうのだぞ?」

「それは……本当に厄介な小娘だなっ!」


 学院内に存在する教員棟の一室で、聞くに堪えない幼稚な会話を交わす大人たちを……冷めた表情で聞き入る少女が居た。


 アイルローゼだ。


 学院長の指示通りに人員を確保し早速出向けば、馬鹿共が会議室の1つで馬鹿な会話をしていた。

 唯一の問題は一番の標的が居ないことぐらいだ。それは後で対処するしかない。


「シュシュ……準備は?」

「魔力が~問題~だね~」

「それはシューグリットが死に物狂いで絞り出してくれるわ」

「っだよ! 俺たちは魔力係かよっ!」

「そうよ」


 悪ガキを大きくしたような彼が吠える。

 魔力量なら学院でもアイルローゼに次ぐと言われるシューグリットと呼ばれる青年だ。


 煩わしそうに半分を染めている青と黄色の髪を掻き上げて……彼はつまらなそうに唾棄した。


「ったく! さっさと済ませて帰るからなっ!」

「ええ。私ものんびりしたくないからそれで良いわ」

「分かったよ!」


 同じように呼ばれている学院生たちに声をかけ、彼は術式の準備を進める。

 魔法の媒体となる魔力に関しての研究を進めている彼は、魔力の供給や増幅に関しても学院でも指折りの魔法使いだ。言葉遣いの荒さなどで女子たちから避けられているが、意外と面倒見の良い人物であることをアイルローゼは知っていた。


 自分の前で各々準備を進めている学院生を眺め、アイルローゼは軽く笑う。


 誰もが優れた実力を持つ魔法使いたちであり、何処に出しても恥ずかしくない実力を持っている。

 まだ年端も行かないからと言う理由で徴兵されていないが、戦場に出ればそれ相応の仕事をするのは間違いない。


「……アナタたちが全員サボらず真面目に授業を受けていれば、そもそもこんなことをしなくても良かった気がするんだけど?」

「さあ~準備~出来た~よ~」

「さっさとやるぞっ!」


 サボりの常習犯であるシュシュとシューグリットを軽く睨み……アイルローゼは息を吐いた。




「とりあえず……何だ?」


 会議室内で話し合っていた男たちは、一瞬部屋が歪んだような錯覚を覚えた。

 別に違和感があっただけで変化は無い。そう思ったのだが、1人の男が声を上げた。


「馬鹿なっ!」

「どうした?」


 声を上げ椅子を蹴飛ばし窓へと駆け寄った男が、それを開けようとして失敗する。

『何事か?』と見守る他の男たちは、彼が必死に窓を開けようとして失敗している事実にようやく気付く。


 慌てて別の男が入り口の扉に駆け寄るがこれも開かない。

 ここに来て彼らは気付いた。自分たちがこの部屋に監禁された事実を。


「窓を破れっ!」


 男が椅子を抱えて投げるが、窓に弾かれ椅子の方が床に転がる。

 普通ではない事態に別の男が魔法語を綴り火炎球を窓に向け放つ。しかし焦げ目を作ることなく火の方が消えた。


「嘘だろ……これは魔法による障壁だ!」

「そんな馬鹿な! これほどの規模の障壁など誰が作れる? この国にはそんな人物は居ないぞっ!」


 怒号にも似た様子で言葉を交わす男たちを無視して……最初に窓に駆け寄った男は改めて部屋に張られている障壁を調べて絶望した。


「これは障壁じゃない」

「なに?」

「封印魔法だ。我々はこの部屋の中に封じられた」


 呆れたように引き攣った笑みを浮かべ、魔法の正体を見破った男はその場に蹲った。


「これはあのシュシュの封印魔法だ。術者が解かない限りこの魔法は破れない」

「馬鹿かっ! あの女の魔法はこんな大規模なことは出来ないっ!」


 蹲った彼は笑って気の抜けた表情を激高する人物に向けた。


「……なら誰かが手を貸したのだろう?」

「なに?」

「アイルローゼとその他の学院生が手を貸せば出来るさ」

「……」


 その可能性に納得させられ男たちは黙った。確かに出来るのだ。


「我々を封じて何をする?」

「……そんなの決まっているだろう?」


 事の顛末に気づいた別の男が椅子に腰かけた。

 この男も諦めたような、何かを悟ったような表情を浮かべている。


「我々の机を捜索するのだよ。机以外も当然するだろうな」

「「……」」


 静かな言葉が発する衝撃は凄まじかった。


「この中で自分が首を斬られない為にと、何かあった時に相手を道連れに出来るように証拠となる物を確保し残している者はどれほどいる? あの化け物はそれを全て漁って然るべき場所に提出する気なのだろう」

「そんなことっ! 許されるとっ!」

「許すも許さないも仕方ない。相手が先手を打って動いたのだからな。我々はこんな場所で話し合いをする前にまず動くことが必要だったのだよ」


 何人かが部屋を出ようと必死に壁や扉、窓などを攻撃するが破れない。

 自分らが預かり教育を施しているはずの子供らは……自分たちが教えるべき必要の無いほどの実力を持った者たちばかりなのだから。




(c) 2019 甲斐八雲

 シューグリッドがちゃんと登場したのってこれが初めてかな?

 アイルローゼに告白して玉砕した過去とかは語られているのにねw

 で、動き出した学院生たちの行動は迅速なのです

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