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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 29

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死にたて新鮮

 ユニバンス王国・王都下町診療所



『何度言えばわかるリグ! そっちに手を出すでない!』

『手が遅いのが悪い』

『違う。こっちを片付けてから覗きやすくしようと思って……お前と言う者は~! 掴んで動かすのは卑怯であろう! ちゃんと器具を使え!』

『死体に対しての配慮はいらない』


『違う。これは病に立ち向かうため検体となってくれた人たちに対する敬意だ。その敬意を忘れてはならんと言うことだ。死体だからって好き勝手やって良いならそもそも道具など使わんわ! 全て手作業で良いのだ!』

『面倒くさい』

『そっちか! だからお前という娘は昔から……その肺の裏側はどうだ? 何か塊ができているように見えるが?』


『死んだ時に体を巡っていた血が下に集まっただけ。これもたぶん血管に集まった血だと思う』

『うむ。だが開いて確認する』

『分かった』

『だから迷わず切るな~! その迷いの無さは何処で学んだっ!』

『死体なら生きた物からドロドロの物まで結構な数を扱ってる』


『生きた死体?』

『死にたて新鮮。今にも動き出しそうなほど』

『なんて羨ましい環境だ! 私も……どうやら本当に血が集まっただけのようだな』

『ボクの見立て通り』

『ならさっさと塞いで次を確認する』


『塞ぐの?』

『解凍された血液が溢れ出したら後々面倒だろう?』

『……見習い。これぐらいはやれ』

『血管の結索はまだ、』

『はん。見習いは否定から入る。だからいつまでたっても育たない』


『やります。やれます。それぐらい!』

『ならさっさとして。義父さん。勝手に肝臓で遊びだすのはズルい』

『なら代わりに心臓でも見ろ』

『さっきの死体で見た。肝臓の方が大きいから楽しめ……確認箇所が多いからそっちが良い』

『そんなに確認したいのであれば小腸でも手を出せばよいだろう?』


『それは最後。解凍した中身が出たら検体に対しての敬意が微塵も消え失せる』

『案ずるなリグよ。医学の進歩の前に敬意など時折忘れても良いと思うぞ』

『ん。同意』

『待って! 早いから! 2人して肝臓を動かさないで!』

『結索が遅いからそうなる。どうせ死体なんだから切った場所の上下を縛れば良いだけ』


『だってこれが、』

『察しの悪い見習いだ。だからいつまでたっても見習のまま』

『違います! ちょっと初めてで分からなかっただけでこれぐらい!』

『うん。ならそっちの動脈をバッサリ切っておいたから全部結んでおいて』

『ふにゃ~! こんなにたくさんっ!』


『早くしないと中身が出てくる』

『このっこのっこのっ』

『ふむ。中々に筋が良いな』

『先生。本当ですか?』

『結ぶことの筋が良いなら針子にでもなればいい』


『この~!』

『ならば追加だ』

『むにゃ~! 主要な個所をバッサリと!』

『これで肝臓が……どう見る?』

『ボクとしては微妙。たぶん生前お酒と油料理の食べ過ぎ』


『違う。この個所の変色だ』

『分かってる。これぐらいの冗談を受け流せないと彼の元に居れない』

『あの元王子はお前に何をさせているんだ?』

『色々。でも胸が取れそうなぐらいに痛くなる』

『あとでちょっと裏に呼び出す必要を感じるな』


『ん。頑張れ。これで肝臓が外せる』

『ナーファ。皿を』

『ふにゃにゃ~!』

『手が遅い』

『むぅりぃ~』


『キルイーツ。もう少し姪に優しくなさい』

『済まんなスィーク』

『それでこの肝臓がどう気になると?』

『そうだ。この部分が変色している。普通血の流れを失った肝臓はこのような色に染まらん。つまり生前に色を変えたはずだ』


『ん。膵臓も色が変』

『だから勝手に切るな~!』

『もっと早く結んで。頑張れ針子』

『ちっがぁ~う!』

『リグ。そのまま周辺の臓器を全て』

『早いうちに小腸も?』


『それは……最後に開く可能性はあるがな』

『無理無理無理無理~!』

『頑張れ針子。はい腎臓』

『早すぎるのよ~!』

『違う。そっちが遅いだけ』

『もがぁ~!』




 壮絶だ。壮絶すぎる。とても検体を解剖している感じがしない。


 ただ音声のみの提供なので手術室に入っていない僕は耐えられる。

 興味本位で最初の検体での作業を覗いたのが良くなかった。


 あれです。死体はこの世界に来てからちょいちょいと見ているのです。ですが手術台の上に寝かされた死体にメスが入って……と、順を追って作業が進むのを見ていると一気に吐き気が襲ってきた。


 あれは来る。下手にグチョっとした死体を見るよりも来る。吐き気が上限突破しそうになったので、僕はそっとポーラを抱きしめて現実逃避をすることにした。


 うん。僕はお医者さんにはならない進路を進むことにします。


「兄さま。大丈夫ですか?」

「ん。ポーラが居るから平気」

「はい。ずっと傍に居るのでご安心ください」


 スリスリとポーラが甘えてきてくれる。


 これこれ急に動かないの。いきなり動くからバランスを崩して……うん。相変わらず小さいな。


「兄さま?」

「育ってないな~と思って」


 揉んで確認する。やはり小さい。ささやかである。


「育ちますから! これからボインと育ちますから! そうなるように師匠と契約して、」


 ハッとした様子でポーラが自分の口を押える。


「ポーラさん?」

「……わたち、ぽーら。ごちゃい。むじゅかしいことは」


 脇をこちょこちょして下手な誤魔化しをする妹様に制裁を加える。


「あれは悪い悪魔なんだから契約なんてすると碌なことにならないよ?」

「でも~」


 そこまでして胸を育てたいか?


「見なさい。あそこにいるコロネを」

「ふへ?」


 そっと視線を向けるとモップを持ったコロネが全力で床の清掃をしている。


 バツ掃除なので問題は無いが、君ってば色んな意味でメイドとしての生活に馴染んでない?

 見なさいスズネさんを。僕の言いつけを守って馬車の警護とナガトへの警戒を同時にこなしているよ?


「……あれはただの素振りですよね?」


 そうとも言う。


 コロネの指摘通りにスズネは愛用の大刀を上段に構えて振り下ろすをしている。その様子に誰も馬車の傍に近づく人もいないし、牝馬に近づく様子を見せないナガトも居る。実に理に適った行動だ。


「それに比べてこの全体的に小さなメイドは」

「まだこれからだからっ! これから育つからっ!」


 どうしてこの世界の小さい人たちは『育つ』と信じているのだろうか?


 いいかいコロネ君? 信じて良いのは子供までなのだよ。ある程度育ったら納得するしかないのです。そうしないと世の中はプロ野球選手とパイロットとユーチューバーで溢れかえってしまうのです。

 そう偉い人が言ってました。


「頑張るなとは言わない。でも現実は早く噛み締めた方が良いぞ?」

「育ちますから~!」


『むきぃ~!』と怒りだしたコロネがモップを掲げこちらに向かって、はい重力魔法。


「ひきょうよ! このばかっ!」


 追い打ちの重力魔法で馬鹿が顔面から床に突っ込む。


 うむ。ハードなディープキスだな?


「ポーラも大きくし過ぎることを望まずほどほどを狙いなさい」

「……」


 何故納得しない妹よ? 僕の発言は間違っていないのだぞ?


「だって兄さまは大きな人を」

「語弊です。濡れ衣です。勘違いです」


 何度も声を大にして言ってきたはずです。


「僕ほどの人物になると胸とは大きさではないのです。存在なのです」

「存在?」


 うむ。可愛い妹にとうとうこれを教える日が来るとはな。


「そもそも女性の胸と言うモノは赤ちゃんのためにあるのです。僕ら大人はその赤ちゃんのモノを借りて楽しんでいるだけなのです。そう、つまり胸は借り物。借り物の大小に文句を言うような大人は自分の器の小ささに気づくべきなのです」

「なら兄さまは小さくても良いのですか?」

「うむ。僕としては構わない。だがここで思い出して欲しい。胸は赤ちゃんのモノであると」


 ここ。ここが重要です。


「小さすぎると吸いにくい気がするんだよね。だからもう少しボリュームが欲しいかも?」


 ただアイルローゼとか猫とか小さい人は確かに居ます。


 ですがあの2人が母親になると思いますか? 否。断じて否である!


 つまりあの2人は小さくても問題ないのです。何故なら赤ちゃんが使わないのです。代わりに僕が使うのです。僕があの2人の赤ちゃんなのです。


「兄さま。それはかなり変態染みている発言だと思います。それにその手の発言はまた姉さまが喜ぶので止めてください」


 何故だっ! 何故理解できないっ!


 それは思考の放棄と言うモノだぞポーラ?


 そしてノイエは僕との赤ちゃんプレイを喜んでくれた。きっとノイエは良い母親になるだろう。


「や~い。へんたい。うぶっ!」


 メイド見習い程度が生意気な!


 そんな君は床でも舐めてなさい。




© 2025 甲斐八雲

 嬉々として解剖する親子って?

 まあこの一族はそんな感じですが、慣れてないナーファだけが絶望的だな。


 主人公的の胸に関する価値観は気分によって変わります。

 貧乳好きとか巨乳好きとか言われると反発したい年頃なんですよ。きっとw

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