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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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ツルツルです~

 ユニバンス王国・北部ドラグナイト家別荘



「けっぷ……ですぅ」

「はくぅ……」


 パンパンに膨れたお腹を抱えたちびっ子が2人、岩の上に伸びている。


 その横では日本人のようにしか見えない幼いサムライガールが同僚の義腕を清掃していた。

 ある意味では仲の良い2人ではある。いつも何かと反発しあってはいるが。


 それは良い。


 軽く両腕を伸ばして小柄な存在……ポーラは夜空を見上げた。


 本当に色々とあって疲れた。こらない肩がこった気がするほどだ。うんやっぱりこってない。やはり小さな胸は良い。重くないから体にダメージを受けない。


 誰が好き好んであんな重りを背負いたがる? 違った。ぶら下げる?


「まほう……まほうって……」


 この場に居る5人目であるユリアという名のメイド見習いは、全裸のままで膝を抱えて蹲っている。

 ちょっと自分の価値観が崩壊したぐらいで情けないとポーラ……の姿をした刻印の魔女は思った。


 価値観なんてモノは結構あっさりと崩壊するものだ。故に常に新しい物へとバージョンアップしていく必要がある。当初この世界に来た時など毎日が価値観の崩壊だった。だからこそ必須なのはスクラップ&ビルドの精神だ。破壊なくして再生は無いのだ。壊して壊して壊しまくった。それは価値観や文化や精神や物理だったりもしたけれど、壊してまくって再生しまくった。


 結果この世界は……悪くなったのは全て始祖の馬鹿が悪い。あの馬鹿が全部悪い。


「知ったことを言わなければ良いのよ」

「……」

「大丈夫」


 虚ろな目を向けてくるユリアに魔女はクスッと笑いパチッと指を鳴らした。


「えっ? なに? 何で?」


 自分の意志とは別に動き出した体にユリアは戸惑いの声をあげる。


 カクカクとしたその動きはまるで操り人形のようで……そんな彼女は満腹で伸びているコロネと現王妃。それとスズネが居る方へと歩いて行く。


「悪いことを考えてないで前向きに考えれば良いのよ」


 言って悪魔は夜空に目を向ける。


 深い紺色の空にはキラキラとした満天の星が存在している。


 本当に奇麗だ。奇麗すぎる。いま月のような天体の横を過ぎたのは……どれだろう? 昔調子に乗って色々と打ち上げた中の一つだとは思う。

 問題はどれがあの場所にあるのかは謎だ。うん。忘れた。


「ちょっと何が? いっいやぁ~!」


 ユリアの悲鳴が木霊し、思考の海の中に居た魔女は現実世界に戻った。


 魔法は成功だ。流石私だと自画自賛しておく。


 視線を向けて確認すれば、3人に見せつけるようにM字開脚をしている元貴族令嬢が居た。


「ん~。です~」

「これは」

「……」


 3人の視線が突如やって来て股を広げて見せつけるように屈んだ人物に向けられる。


「ツルツルです~」

「いやぁ~!」


 王妃の言葉にユリアはまた悲鳴を上げた。




 その気配に頭を動かす。

 視線は向けるだけ意味がない。けれど一応目は向ける。何も写さない自分の目をだ。


「……ぷー」


 感じからして姿を現した人物はクタッとした感じでその場に蹲った。

 立って歩けないと言った感じだ。


「お帰りなさい。ファナッテ」

「ぷー」


 子供っぽい不満気な声が聞こえてくる。


 その声に盲目の存在……セシリーンは優しく笑うと自分の両腕を静かに広げた。『おいで』といった感じで相手に思いを向ける。


 何度か転がるような音がして……最後は横になって転がってきたファナッテが足に触れて停止した。


「彼にいっぱい愛されたの?」

「ぷぅ~」


 膨れた感じの声が聞こえてくる。

 怒っていますと言いたげな相手の音にクスクスとセシリーンは声をたてて笑ってしまう。


「はい。お母さんが寂しいから甘えてくれるかしら?」

「ぷぅ」


 脚に触れていた存在がゆっくりとくっ付いてくる。胸に顔を預け埋めるように固定し、腕が腰に回り曲げたのであろう相手の足が自分の足に絡みついてきた。


 全力で抱き付いてきたファナッテは……たぶん異性同性から見ても魅力的な体をしていると感じられた。胸は大きくて柔らかだし、何よりお尻も大きい。


 若干色々と物足らなさを感じる自分の体とは違い、本当にいやらしい体をしていると思う。


「たくさん彼に愛されたの?」

「ぷぅ」

「嫌だったの?」

「ぷぅうぅ」

「なら何が不満なの?」

「……」


 きゅっと抱きしめてくる相手が愛らしい。


「へへへ」

「……」


 ただ突如として抱きしめている“娘”から不吉な笑い声が聞こえてきた。


 何故か可愛い娘が先ほどから抱き付く力を強くしている気がする。どうしてその手はお尻に伸びているのか? まるで逃がさないと言いたげな足の絡みは何を意味しているのか?


「ファナッテ?」

「うへへ」


 分かった。分かった気がする。


 故にセシリーンは閉じている瞼をよりきつく閉じた。


「そっちに落ちちゃダメよ? そっちはホリーとかが居る領域よ? お願い。母さんのためにもそっちに落ちないでこっちにいらっしゃい」


 まだだ。まだ間に合うはずだとセシリーンは信じた。

 信じて自分の胸に手を伸ばしてくる娘に抵抗しつつ切に願った。

『正気に戻れ』と。




 ドラグナイト家別荘の一室



 与えられた部屋のベッドに倒れ込んでフレアは自分の顔にかかる前髪を払う。


 今日は疲れた。とにかく疲れた。赤子に乳を与えてやり切った。体もそうだが心が限界だ。


 天井に向けた視線を、瞼を閉じることで暗闇にする。


 自分はずっと友達に守られていた。

 ずっと……愚かな選択ばかりしていた自分を見捨てずに彼女は傍に居て守ってくれていたのだ。


 その事実を知り、噛み締めると、溢れてくる感情が止まらなくなる。


「ありがとう……」


 震える口から、その唇から紡がれる言葉も震えていた。


「ありがとう……ソフィーア……」


 あとは言葉にならない声が溢れる。涙が溢れる。


 溢れる涙は止めず、ただ両手で口を塞いでフレアは感情のままに泣き続けた。


 ただただ亡き友に感謝をしながら。




「むにゅ~」

「……」


 ようやく落ち着いて眠った相手にセシリーンは肘の辺りまで落ちている服を持ち上げた。


 大丈夫。色々と危なかったが、ギリギリのラインで何かを守った。何を守ったのかは謎だが守った。


 それに猫に胸を吸われることもあったから、吸って舐められる程度は平気だ。母親の義務だ。

 子守をしていればお尻を揉まれることもあろう。相手が子供という体型ではないのだから仕方ない。

 股間は死守した。今は自分の体が色々と複雑な感じだが、それでもやはり守りたかった。


 否、広げておいた方が良いのか? 産道は出産が近づけば自然と開くとリグは言っていた。なら無理やり広げておく必要はないか?


「あら?」


 疲れた体に鞭を打って服を着直していたセシリーンは、その気配に顔を動かした。


「……んぐっ」


 何かに耐えるような声を発した人物はそのまま崩れ落ちたようだ。

 ただ何があったのかなど聞くまでもない。そう判断しセシリーンは薄っすらと笑った。


「彼にいっぱい愛されたみたいね?」

「……あれは愛じゃない。ただの暴力だ」


 拗ねた声が響いてくる。リグの物だ。よく聞く声だ。


「そうなの? 『もうダメ! 飛んじゃう!』って声が聞こえてきたけれど?」

「……」


 返事は無い。自覚があるから反論ができないのだろう。

 ただセシリーンとしては余り確証の無い言葉だった。普段ならよく聞こえる外の声が昨日からずっと聞こえが悪い。雑音が混じっていて声が届かない感じだ。


 犯人は分かっている。可愛い弟子のノイエだ。

 あの子が何かしたから外の声が聞こえてこないのだろう。


「あとは何だったかしら? 『取れちゃう取れちゃう』って声も良く聞こえたけど?」

「……」


 返事は無い。ただ床を転がるような音がして、


「ぷ~」


 どうやらファナッテに衝突して止まったらしい。振動だけはしっかりと伝わって来たから間違いない。


「彼にいっぱい愛されたのかしら?」

「……あれは暴力」

「ん?」


 ペシペシと何かを叩く音がする。

 きっとリグがファナッテを叩いているのだろう。


 叩きたくなるような恨みがあるのか? 外の様子が分からないから仕方ない。


「止めてって言ったのに前後に激しくされて、本当に胸が取れるかと思った」

「そうなの」


 その気持ちというか痛みがセシリーンには分からない。

 何故なら自分の胸は普通ぐらいだ。


「大きいのなんて邪魔なだけなのに」

「ぷぅう」

「貴女たちね……」


 不満気な2人にセシリーンは無い者代表として、深くため息を吐いた。




© 2024 甲斐八雲

 主人公が出ないけど閑話にはしてません。ある意味で本編の続きですからね。


 アカン。年内に終わる気がしない

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