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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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馬鹿兄貴にその大役を譲ろう

 ユニバンス王国・北部ドラグナイト家別荘



「良い。兄さま? ここはこのメイド長をぐぅ~の音も出ないほど言い負かせるチャンスなのよ! 具体的に言うと『お前たちの秘密を国中に広められたくなければその体を好きにさせろ。へっへっへっ……』とか男の夢でしょう? 人妻よ? それも他人の妻よ? それをあんなこととかそんなこととか好き放題できるのよ? どう?」


 うむ。


「寝取りとかって興味ないわ~」

「どうしてよっ!」


 何故に君がスパークするのかを問いたい。


「男だったら寝取りって夢でしょう? 夢よね? 姉さま? ちょっとこの中の人に聞いてもらえる? 絶対に私の言葉に全力で頷くはずだから!」

「……」


 ジッとノイエが馬鹿な悪魔の右目を覗き込む。


「うん。『分かる』って」

「でしょう?」


 誰の賛同を得ているのかを問いたい。


「つまり私が正しいのよ! 姫騎士に『くっころ』を言わせるほどに貴重なのよ! さあ兄さまっ! このメイド長の弱みを握って母乳が空になるまで乳房も握るのよっ!」

「ノイエ~」


 届け僕の気持ち。


「はい」


 スッと立ち上がったノイエが瞬間移動チックな動きで部屋を手で戻ってきた。その手には麻袋だ。


 馬鹿の頭の上から麻袋を覆いかぶせると、そのまま口を閉じて悪魔を封印する。


「兄さま? なんか物凄く生臭いんですけど?」

「気のせいだ」


 ノイエが適当に持ってきた麻袋がどこにあったモノかまで僕も保証はできません。


「ノイエ~」

「はい」


 そして彼女は握った麻袋の口を中心に頭上に持ち上げてグルグルと回す。


 その昔拾ってきた猫は袋に入れて振り回さないとどこかに行ってしまうと聞いたことがある。事実かどうかは知らないが……今にして思うとただの動物虐待だよな。怖いわ~。


「ふにゃ~!」


 ただ悪魔が袋の中で大絶叫している。


 まあ今回に関してはお前が悪すぎるわ。


「アルグスタ様?」

「ん?」


 若干警戒した感じでフレアさんがこちらを見ている。


 全く……この馬鹿悪魔は何を考えて面倒なことを?


「ノワールには信用のおける人の母乳をお願いしたいので、このままの関係を維持でお願いします。もしこの悪魔がまた変なことを言い出した場合は、あの袋をそのまま馬糞の山に埋めて封印しますので」

「……そこまでする必要はないと思いますが」

「それはこちらの誠意ということで」


 はい。これで手打ちね。良いですか?


「宜しいのですか? 彼女の言う通りエクレアをネタに私たちを脅せば」

「そんなことをしたらどこかの馬鹿兄貴を愛している人は自ら命を絶つでしょう?」


 分かり切ったことを言うなと言いたい。そして言わせるなと言いたい。


「ノワールのご飯はどうするのよ? ウチのノイエは乳母というか母乳を与える人を選ぶから、ノワールに授乳できるフレアさんの存在はとても貴重なのです。だからウチの家庭に問題を与える馬鹿のあっちを修正した方が早いのです」

「されてるから~! 修正されているから~!」


 頭上でブンブンと麻袋を振り回しているノイエが若干ノリノリだ。


 ただノリノリなのはノイエだけで、実際他の人達は全員引き気味である。つかあれを食らってまだ叫べる君が凄いよ馬鹿悪魔。


「あは~。なんか見える~。暗闇の向こうに何かが見えちゃう~!」


 多分悟りではない別の何かだろうな。


「ノイエ~」

「はい」


 緊急停止からノイエは袋を床に下す。握っていた口を開くと……ドロッとした感じで悪魔が這い出してきた。


 バターにはなっていない。人はどんなに回してもバターにはならないか。


「あはは。あは……新しい何かが見えたわ……あはは」


 ガクガクと全身を振るわせている悪魔はこのまま捨てて……しまうと折角の話し合いの場が無くなってしまう。


 もうこの馬鹿は本当に面倒くさい。


「悪魔~」

「うぴょぴょ」


 どんな返事だ?


「僕は面倒くさい国王になる気は微塵もありません。ノイエの姉の誰かがやりたがっているなら考えもするけど、あの人たちが王位簒奪とかに興味を抱くとも思えないしね。だから現状維持で良いのです」

「……いずれ国王の指示が面倒になるかもしれないとしても?」


 生まれたての小鹿のようにガクガクと震えながら立ち上がろうとしている悪魔が、こっちに対し真面目な顔を向けてきた。


「兄さまと姉さまの力は異質すぎる。それに姉さまの姉たちの力はぶっちゃけ脅威よ? それに不思議と兄さまたちを慕い実力を持つ人たちも集まりつつある。国を統べる者から見て兄さまの存在は脅威でしかない。兄さまがいい加減なお気楽生活を望んでいるとしても周りの人たちはそれを認めない」


 根性で上半身を起こした悪魔は、その膝のガクガクが半端ないな。見てて怖くなるわ。


 ユリア。ちょっとその馬鹿に肩を貸してもらっても良いかな? 触るのも怖い?


 大丈夫。何かあればノイエがどうにかしてくれるから。


 そんなノイエは僕が会話をしている隙に部屋を出て食べ物を抱えて戻ってきた。厳密に言えば食べ物を積んだカートを抱えて戻ってきた感じだ。


 ノイエさん。カートは抱えて運ぶものではありません。押して使うものです。良いですね?


「もぐ」


 僕の隣に腰を据えた彼女はさっそぐモグモグタイムだ。こうなったら何を言っても聞いてくれない。


「頑張れ」

「……」


 僕が抱えているリグが我関せずって感じで軽い応援を寄こした。

 ちょっとだけ悲しくなったから、抱えていない手で僕の腕に乗っているずっしりとした双丘を揉み揉みして精神の安定を図ることにした。


 うむ。やはりこれは良いものだ。


「で、兄さま? どうするの?」

「どうもせんよ」

「はい?」


 ユリアの手を借りてどうにか立っている悪魔が間の抜けた顔を見せる。


「というかお前はあれだな。基本馬鹿だろう?」

「……どういうことよ?」


 分からんのかね? あん?


 片手でモミングをしつつ僕は胸を張る。


 馬鹿な君に今から説明をしてあげよう。


「まあ確かに僕が権力というか力を持てば周りの人たちは危険視します。ですがそれは僕が手の内を隠して裏でコソコソとしていればの話です」


 裏で悪事を働く人が居れば、みんなしてその人を怪しむものです。


「ならある程度オープンにしていけば良い」

「冗談」


 肩を竦めて悪魔が笑う。


「そんなことをしたら周りは兄さまの力を使おうとして群がって来るわよ? それこそアリの巣の前に角砂糖の山を置くかのように!」

「だろうね。でも群がってきてもこちらは全てに応じる義務ってあるの?」


 それってあくまで周りの貴族が騒ぐだけでしょう?


 同格の貴族がどんなに騒ごうが、徒党を組もうが、


「ドラグナイト家の戦力に張り合えるのってハルムント家ぐらいでしょう?」


 ただしそれは物理的な戦力だけだ。


「魔法を使っていいならウチにはノイエと先生が居ます。それに猫とファナッテもか。ちなみにそもそもウチのノイエを敵に回してユニバンスって国営とか成立するの?」

「無理です」


 向けた視線の先に居るフレアさんが首を横に振った。


「ノイエ様のドラゴン退治はこの国の外貨獲得の主な産業です。9割を占めるモノです」

「それを失うことになったらウチは間違いなく弱体化します」


 そうすれば小国ユニバンスはあっという間に消滅するか?


 ただ周りの大国が弱体化しているからしばらくは問題ないはずだ。ただ問題が無いだけで次なる産業が作れないとやっぱり駄目だろうな。


「何よりウチの兄たちは僕の名前を使って貴族の数を減らしているしね。むしろ僕が現状維持で傍若無人に過ごした方が都合がいい感じでしょう?」

「その通りです」


 認めたよメイド長。


 それはそれで僕がますます嫌われ者になるってことだよね? まあ良いけどさ。


「何より陛下はご自身の子に王位を継がせる気がございません」


 正妃が共和国から来たあのチビ姫だからということもある。


 何故か陛下はあのチビを国に戻す気はないらしいし、何よりユニバンスの北東部分を自治しているのは共和国から独立したチビ姫の兄だ。腹違いだけど兄だ。


 まあ色々と国家戦略的に考えられているのだろう。僕は関係していないので知りたくもない。


「陛下はハーフレン様かアルグスタ様のお子様から後継を考えています」

「うむ。馬鹿兄貴にその大役を譲ろう」


 国王の父親なんて面倒だから却下です。


「で、悪魔よ?」

「何よ?」


 パンパンと自分の足を叩いて活を入れている悪魔に視線を向ける。


「そんな面倒な話を振ってきて……何を企んでいる?」




© 2024 甲斐八雲

 フレアさんを寝取るルートはございませんw

 まあ彼女の性格上…うん。無いな。自暴自棄だった頃なら分からんが。


 基本刻印さんは唐突だから困るんだよね。

 もう少し助走を取ってと思うわけです

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